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〜理念を可視化するブランドロゴのつくりかた〜 大切なのに意外と知らない開発プロセスとデザインのポイント

毎回さまざまな分野のエキスパートをお招きするFont College Open Campus(以下「FCOC」)。フォントの魅力を再発見するとともに、ブランディングにおけるデザインの力に目を向けていきます。今回はブランディングに欠かせないロゴデザインがテーマです。「〜理念を可視化するブランドロゴのつくりかた〜 大切なのに意外と知らない開発プロセスとデザインのポイント」と題し、たきコーポレーション IGIのアートディレクター 木野村 繁則氏より、ブランドロゴ運用においてついつい見落とされがちなポイントを教えていただきました。


木野村氏は、広告代理店勤務を経て、2000年よりたき工房(現・たきコーポレーション)にて広告の企画からデザインまで幅広い分野のクリエイティブディレクションを行ってきました。現在は、たきコーポレーションの中でもブランディングに特化したカンパニー「IGI」のVIチームにて、チームリーダーとして多くのVI(ビジュアルアイデンティティー)開発に携わっています。

株式会社たきコーポレーションは、1960年の創業以来、60年以上にわたり3000社以上の企業のクリエイティブを支えてきた老舗のデザイン会社です。約370名のクリエイターが所属しており、ブランドデザイン、UXデザイン、映像制作など、各分野に特化した6つのカンパニーに分類されています。IGIはその中でもブランディングが専門。「今より明るい未来を 人と企業とともにデザインする」をパーパスとして掲げ、街中でもよく目にするような有名企業のブランディングも多く手掛けてきました。IGIの専門領域は、企業やブランドの存在意義を見出し、可能性を最大限発揮させる「パーパスブランディング」と、理念やメッセージから、ロゴなどの視覚的表現を行う「ビジュアルアイデンティティー」の二つ。インナーブランディングからアウターブランディングまで、一貫したクリエイティブを行なっています。

ところで、ブランディングとは何なのでしょうか。インターネット上で検索すると「ブランドの価値を高める施策のこと」「顧客や取引先と社会全体にその商品やサービスを“独自のもの”として認識してもらうこと」「他社と差別化を図る取組」など、色々なキーワードを目にします。
しかし、実際に何をどこまですることがブランディングなのかという基準は、クライアントによって様々です。FCOCでも、これまでさまざまな切り口で語られてきたこのキーワードですが、木野村氏は“ブランドを擬人化するとわかりやすい”といいます。

擬人化するとわかりやすいブランディングの全体像と概要

― ロゴは「顔」
ロゴとは、いわば企業の「顔」です。人間同士で顔で個人を判別するように、企業はロゴによって判別され、認知されていきます。企業「らしさ」をしっかりと表現しつつ、視認性や機能性に優れたものを製作する必要があります。

― フォントは「声」
声によって人のイメージが変わるのと同じように、どのフォントを選ぶのかによってその企業に対するイメージは大きく変わります。例えば伝統を重んじれば明朝系のフォント、先進性を意識すればゴシック系などといったように、企業が発信するメッセージをその企業らしいフォントで発信することもブランドの一つといえます。モリサワが提唱している考え方とも通じていますね。

― 技術は「手」
製品を作るための技術は、まさに「手」といえるでしょう。企業独自の技術から生まれるものは、立派なブランドの一つです。

― 手から生まれる「商品」
手から生み出された商品はそのブランドを認知させる最も大切なものの一つ。「あの商品といえばあの企業!」商品の認知が広まるにつれ、そう感じていただけることでしょう。

―パーパスは「心」
パーパスは、企業がなんのために存在するのか、事業をおこなう理由は何か、といった企業の志や存在意義を表す言葉です。企業の原点や経営理念とも深い関係があるパーパスは、まさにブランドにとっての「心」といえるのではないでしょうか。

以上がブランディングにおける重要な構成要素です。

「人は、顔や声だけでその人の全てを認識することは難しく、いろいろな要素全体を通して初めて、その人の人格がわかってくるものですよね。ブランドもこれと同様です。ロゴ、フォントからパーパスに至るまで、全てが揃って初めてちゃんとしたブランディングが行えます」

イメージだけで制作しないロゴ制作のフロー

「ブランドロゴは、ただカッコいい、ただキレイ、といったイメージだけで制作するものではありません」と木野村氏。ブランドロゴは、企業の思いが反映されている顔であるべきであり、かつ運用に耐えうるものでなくては意味がありません。
今回は、実際のロゴ制作の流れを追ってみるために、架空の企業を設定し、シミュレーションしてみました。

― Phase 0 キックオフ

VI開発に際した最初のミーティングです。何がゴールなのか、どういうタスクがあるのか、どのようなスケジュールで進めていくのかなど、クライアントからのオリエンテーションの中で概要を確認していきます。ここでヒアリングした、ご依頼の経緯、ロゴ開発における目的、新事業やサービスの概要などから、イメージを膨らませていきます。

今回は、“地元に根付いた不動産業を営んできた「河木不動産」”という架空の企業を設定しました。「2代目社長に代替わりするタイミングで、新たに古民家や空き家のリノベーション事業も展開したい」という思いと、ロゴ開発にあたっては「若年層にも注目されるようなブランドイメージに改革したい」という狙いから、チラシ、Webサイトに使用できるようなグラフィックやモーションロゴを求めていることなど、ひとつひとつ細かく情報を整理していきます。
そして、このリブランディングでの最も大きなポイントは、企業名を変更するということ。新名称「bever株式会社」を広くアピールするためのプロジェクトがスタートしたという設定にしています。

― Phase 1 リサーチ

クライアントからオリエンをいただいてからすぐに制作に取り掛かるわけではありません。まずはクライアントのことを十分に理解する必要があります。このフェーズでは、現状のVIの使われ方、競合調査、理念や強み、お客様のニーズなど、様々な視点でクライアントに対する理解を深めていきます。

例えば現地調査・視覚監査では、現状のロゴがどのようなシーンで使われているのかを調査します。会社の外装や看板、Webサイトなどはもちろん、内部資料や封筒、名刺など、実物を手配してもらって確認することもあります。

競合他社のリサーチでは、同じ分野の企業を俯瞰的に見てみます。今回は不動産企業なので、全国さまざまな不動産企業のブランドロゴを色のチャートごとに分類して見比べました。色の意味合いは、ブランドロゴにとって「どういう印象を与えるか」を左右する大事な要素。こうして実際に並べてみることで、企業特性の分布が見えてきます。

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トップインタビューも、このタイミングで行う必要があります。クライアントやプロジェクト内容によって質問項目を設定し、経営層の方の意見を事前にヒアリングしていきます。より広く、深く企業の考え方を知ることができるという点も重要ですが、制作が進んでから意見がひっくり返るといった事態を防ぐためにも欠かせない項目です。

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また、IGIでは、より深い理解のために“ブランドパーソナリティ”を導いて開発を進めることもあります。ざっくりいうと、「ブランドを人に例える」ということ。与えたい個性や印象、トーン&マナーを明確にし、イメージを一貫性あるものにしていくためのプロセスです。長期的なブランディング戦略に向けた基礎を築くためのステップとなります。

こうしたステップを経て、ようやくロゴ開発のためのキーワードが浮かび上がってきます。リサーチのひとつひとつが、ブランドロゴに個性と意味をもたらす重要な要素となっていきます。ブランドパーソナリティのお話はこの後にさらに続きます。

―Phase 2 VI開発

Phase1のリサーチで得たキーワード等をもとに、ふさわしいビジュアルとは何かを考えながら、VI開発に取り掛かります。今回は特にロゴ開発に特化してみていきましょう。

Phase1の最後に浮かび上がってきたキーワードに、カラーを当てはめてみるステップがあります。「あたたかさ」だったら赤、「信頼」「先進」には青、というように、カラーをマッチさせていくことによって、キーワードをビジュアライズしていきます。

次に、フォントをセレクトしていきます。

今回は「bever」という言葉を、サンセリフ、ローマンといったフォントのデザインごと、そしてそれぞれのウエイトのバリエーションごとに並べて散布図を作っています。最初からひとつの方向性に決めつけず、それぞれのフォントによって伝わるイメージを言葉出ししていきました。

こうしたプロセスを踏んで、ようやくラフデザインが出来上がりました。これが、クライアントに向けての最初のご提案となります。文字だけで組んだ「ロゴタイプ型」が8つと、シンボルマークをプラスした「シンボル+ロゴタイプ型」が4案です。いずれもデザインによってイメージの異なる、幅広いご提案内容となっています。この中からクライアントによって選ばれた3案を、フィードバックの内容を踏まえて調整していきます。

2回目に提案する時は、絞り込んだ3案からさらに展開イメージが想起できるように、パンフレット、封筒、ノベルティ、Webやアプリケーションなど、様々な仮デザインを用意していきます。こうすることで、クライアントにとっても実際の使用シーンがイメージしやすくなり、より方向性を定めやすくなります。

ここから先はクライアントが最終案へと絞っていくフェーズです。見た目の好き嫌いだけではなく、どういうポイントを見くらべて判断すべきか。本来の目的である“目指すべき姿”や“ブランドパーソナリティ”がきちんと表現できているか。そうした指標を作ってクライアントと一緒になって吟味していくことが、VI開発にとって最も重要だと木野村氏は語ります。

「図式化すると、それぞれの強みや、表現しているキーワードが客観的に見えて、そのデザインをよりわかりやすく伝えることができます。イメージだけで選ぶということを回避できるので、効果的な絞り方になるのではないでしょうか」

―Phase 3 図形商標調査

3案に絞られた時点で、図形商標の調査にかけます。これは、いわば「世の中に類似したものがすでに存在していないか」を調べるということ。ロゴが決定してからの本調査と商標の申請は1年ほどかかるため、このタイミングで行えるものは簡易的なものにはなりますが、「これは意外と忘れがちなんです」と木野村氏。簡易的なものといっても1〜2週間はかかってしまうため、忘れずにスケジュールに組み込んでおくことが大切です。

「先ほどのPhase2の段階で、なぜ、絞る数を3つにしたと思いますか?これは、万が一調査に引っかかってしまった場合、もう一度一からやり直すということを防ぐためでもあるのです」

こうして、最終的にデザインがFIXとなりました。ただし、ロゴデザインの作業はここで終わりではありません。

―Phase 4 精緻化

デザインが決まったらすぐに納品、と思われるかもしれませんが、実際には納品に向けた最終調整が待っています。実際にロゴが使用されていく上で、あらゆる状況でも正しく認識されることを意識し、ロゴの形などを改めて微調整していくプロセスとなります。

「リサーチ、インタビュー、ブランドパーソナリティといった工程を経て、裏付けされたカラーやフォント。これらを規定していくことで、イメージだけではない、企業の思いが詰まったロゴを制作できるのではないでしょうか」


ブランドパーソナリティの話

ブランドパーソナリティをもう少し紐解いていきましょう。改めて、ブランドパーソナリティとは、ブランドを人に例えることによって与えたい個性や印象、トーン&マナーを明確にし、イメージを一貫性のあるものにしていくためのプロセスです。ブランディングにおいて、長期的な成功に向けた基盤を築くために有効となり、こうした情報を反映したVIの方が、より一層ブランドのメッセージを的確に表現し、人々の記憶に強く残るものになります。

ブランドパーソナリティには3つの開発手順があります。

・アーキタイプを設定する
・イメージワードを設定する
・イメージカラーを設定する

これら3つの手順は、もちろんIGIのみで行うこともできますが、できるだけクライアントと一緒に考えていった方がより表現が深まるものになっていくもの。それぞれ詳しくみていきましょう。

まず、アーキタイプとは「人柄」です。

IGIでは、思考や感情、行動パターンや願望について、誰しもが共通で持っている代表的な12の型を表したカードを用意。類型化されたタイプの中からクライアント自らが選択していくことによって、そのブランドがどのような性格を持っているのか、具体的で掴みやすいブランドイメージを決めることができるといいます。

次にイメージワードとは、そのブランドが発信する、視覚・言語表現などの指針となるものです。強みや思いを端的に表すワードを、クライアントと一緒に選んでいくことが望ましいです。

「企業内でブランドに対する共通の認識が持てていれば、みなさん同じワードを選ぶことが多いんです。反対に、新しくスタートさせるブランドは一人ひとりの認識がバラバラなりなることも。そんな時に足並みを揃える、といった意味でも大切なプロセスです」

最後はイメージカラーです。イメージカラーは、ブランドイメージワードを端的に視覚でわかりやすく伝えるものと言えます。イメージワードを表現するにはどんなカラーがふさわしいか、という目線でカラーを選んでいきます。

これら三つをまとめたものが、最終的なブランドパーソナリティとなります。

ざっと流れだけを追っていくと簡単なワークのようにも見えますが、こういった流れを踏まえて導き出されたパーソナリティは意外とこれまでと違った見え方になるかもしれません。
また、こうしてブランドパーソナリティをきちんと定めておくと、デザイン会社や外注先にイメージをブレることなく共有でき、一貫性をもったクリエイティブが生まれていくのです。

細部に宿るロゴ制作のポイント

① 手間のかかる色設定の話

ロゴ制作のプロセスを辿ってみたところで、さらに細かなポイントを紹介していきます。まずはロゴの色に関して。ロゴの色を決めることも非常に大切な作業になります。色も、もちろん好き嫌いだけで決めていいわけではなく、創業者の思いや、企業理念などを踏まえた上で適切に導き出さないといけません。カラー決定までのプロセスも地道なステップがあります。こちらも一つずつみていきましょう。

― カラー検証1:他社比較・分析
先ほどの「bever」ロゴを制作する過程でも出てきた検証方法です。一般の企業や競合他社などで使用されている色を検証し、最もふさわしいカラーを導き出します。図のようにざっと並べてみてみると、それぞれの企業がどんな思いでロゴカラーを設定しているのか、そのロゴにどんなイメージが込められているのかがなんとなく見えてくるものです。

― カラー検証2:カラーの持つイメージワード続いて、ブランドパーソナリティで導き出したイメージワードを、カラーに当てはめてみます。今回で言うと「柔軟」や「先進的・クール」というキーワードがあがりましたよね。それらのイメージワードにふさわしいカラーをマッピングしていきます。

― カラー検証3:カラーの持つイメージワードから導き出したカラー
続いては、検証2で出てきたイメージワードを、カラーに置き換えていきます。今回は「平和・柔軟」といったイメージと「先進的・クール」といったイメージの2つをブレンドさせて、大まかなカラーのバランスを探ります。

― カラー検証4、5:導き出したカラーの検証1〜2
カラーの方向性が見えてきたら、さらに細かく、カラーの幅の割り出しを行っていきます。そして最終的には数%刻みで色の数値を調整しながら、色検証を続けていきます。今回はキーワードも2系統選ばれていたので、グリーン系とブルー系の2パターンで提案内容をまとめていきました。

こうした細かな検証を踏まえて、ようやく1つのカラーに絞られます。ブランドパーソナリティワークで選ばれたカラーはあくまでイメージなので、カラーの検証とは、そのイメージをよりしっかりと定着していくためのワークとなります。

「インタビューで“想い”を伺い、ブランドパーソナリティでブランドイメージを導き出し、他社分析・イメージワードの抽出を経て“方向性”を決め、最終的に数%刻みのカラー検証を行いカラー決定に至ります。感覚的なイメージだけで決めるよりもなかなか手間がかかる作業ですが、こうした工程を踏まえて導き出すことで適正なブランドカラーを決めることができるのだと思っています。
また、お客様から“なんでこの色なの?”と聞かれることもあるのですが、その際にこうしたプロセスを踏んでいると適切に答えることができます。そうすると意外とお客様は納得してくれることも多く、営業トークとしても有効なんです」

② 誰も教えてくれない精緻化の話

ここからは、ロゴ作りの裏側のお話です。先ほど説明した「精緻化」という作業は意外と認識されていないのが実情で、デザイナーの方でもあまり知られていない内容になります。今回のnoteでは具体的な内容まで全てお伝えすることはできませんが、どんな作業を行うのか少しだけお伝えしましょう。

精緻化とは、ロゴマークのデザインが決定した後の作業工程になります。プレゼンテーション時点でのデザインでは形状やバランスは完全とはいえず、決定したロゴデザインが長期使用に耐えるために、造形的・システム的に精度を高めていく作業です。品質を高めるために、ツメる部分や内容も通常のデザイン業務とは異なってくるため、専門の知識と経験があるメンバーが作業を行います。

例えば、こちらをご覧ください。精緻化の前と後で、何が違うかわかりますか?

実は、誰にも気が付かれないレベルで細かな修正を行っていくのが“精緻化”なのです。細かなラウンドの調整や、文字同士のボトムラインを揃える、空間を広げる、などといったかなり緻密な作業になります。

精緻化の目的の一つは、視認性を高めることにあります。たとえばこの「ube」という文字の並びも、精緻化する前では、少しぼやけると文字と文字の間が近づきすぎていたり文字が識別しづらかったりして、少し読みづらくなってしまいます。ブランドロゴの認知という目的において、読みづらさやわかりづらさは絶対に回避しなくてはなりません。

他にも、フォント本来のグリフが持つ様々な特徴、文字の形状のクセを一つずつ検証していきます。人間の目の錯覚を念頭に置きながら、より見やすく、ロゴとしての機能を果たすことが目的です。また、納品前の校正も、見過ごしてはならないポイントがたくさんあります。本当にたくさんの時間をかけて作られたものだからこそ、ちょっとしたミスや細かいエラーがデータ上に残っている場合があるもの。IGIでは、独自の校正チェックリストを設けて、最終納品まで何度も目を光らせながら、データの精度を高めていきます。

ちょっと小休止

実は、こうした細かな目の付け所は、モリサワのフォントづくりとも密接な関係があるのです。ここで、モリサワがどのような手順でフォントを作っているのか、ぜひこちらの動画でチェックしてみてください!フォント開発という一連の流れの中でも、どこに重きをおいているのか。モリサワがこれまで培ってきた独自のメソッドを感じていただけると思います。

モリサワ公式YouTube「モリサワフォントができるまで」

このように、納品前の徹底したデータ管理は、クライアントの信頼や満足へとつながっていきます。納品後、いろいろなツールに展開されてからミスが発覚しては目も当てられませんので、ぜひ、手間を惜しまずに、丁寧に取り組んでみてください。

「よく、パーパスや理念を作るだけで終わり、という企業が多く見受けられます。それだけだと効果がなく、浸透施策を行っていかないと意味がないんです。ロゴも同じで、ロゴを作って終わりではなく、その後の適正な運用がとても大切になってきます。媒体が多様化している昨今において、特にこのロゴ運用についてをきちっと定義しないと、ブランドそのものがグラつく原因にもなってしまいます」


意外と知らないマニュアルの話

ブランドロゴがいかに優れたものであっても、一貫した見せ方ができていなければブランドイメージが伝わりにくく、さらなる浸透へと繋げられません。
このように、デザインの展開を「視覚的に統一」するために必要なのが、VIマニュアルです。

VIマニュアルを大枠で捉えると、主に二つに分けることができます。まずは、ロゴやカラーなど、デザイン要素の基本的な使用規定をまとめた「基本デザインシステム」。そして、デザイン要素を具体的に展開するための「展開デザインシステム」。具体的には、名刺や封筒などのステーショナリー、各種広告、屋内外へのサインなどへの展開をイメージしています。これら2つの運用について、明確に定義されたものにする必要があります。

上記2つを明示するといっても、どこまで細かくレギュレーションしていくかについては、企業やプロジェクトの規模によって大きく異なります。中身は主に、アイソレーション、最小使用サイズ、カラー、禁止例など、ブランドロゴを使用するにあたっての基本的な情報、から、背景色との関係や、ロゴタイプとの組み合わせ規定、推奨書体などが記載される場合もあります。

その制作期間は、規模の大きい企業さまに関しては1年を越すケースも。適正な内容を見極めながらを制作しています。

「マニュアルは一度作って終わりということではなく、ブランドの変化や時代の流れに合わせて見直していく必要があると考えています。いわば、生き物のようなものと捉えてもいいかもしれません」

さいごに

“なんとなく”ではなく、明確なエビデンスと言葉出しによって、意味のあるVI開発を手掛けている木野村氏。最後に、VI開発の目線からみたブランドロゴ制作について、以下のように語ってくれました。

「VIは、専門的に解説された資料なども少なく、ブランディングにおいても独立した立ち位置になることも多いことから、理解が浸透しきっていない領域といえます。そのため、勝手がわからずその扱いに苦戦している企業さまも多いのではないでしょうか。
IGIでは、デザインを始める前の段階から、お客様の抱える課題ややるべきことを明確にしていくプロセスを踏むため、かかる時間や労力は決して少ないものではありません。ですが、ブランドイメージの確立という大きな目標達成のため、本日の話が少しでもみなさんのお役に立てば幸いです」

数多くの制作事例に裏付けられた、実践的なノウハウを教えていただきました。

木野村さん、ありがとうございました!

本イベントを含む過去のFont College Open Campusの動画アーカイブはこちら(視聴には登録が必要です。)


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