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もっと知りたい!ヒラギノフォント 中の人に訊く、公式noteの舞台裏。

皆さんが、毎日何気なく目にしていると言って過言ではない「ヒラギノフォント」の文字。どこで使われているかを意識したことはありますか?

スマートフォン・タブレット端末、テレビCM・テロップ、道路標識・サイン、雑誌・書籍・ポスターなど…。

国内のありとあらゆるところで利用されている「ヒラギノフォント」は、株式会社SCREENグラフィックソリューションズ(以下、SCREEN GA)が開発・提供している書体です。
シーンを問わず使いやすい定番書体をはじめ、2022年にはニュアンスのある新書体がお目見え。もはや現代のグラフィック制作には欠かせない存在ですよね。モリサワでは2010年からライセンス提供をしており、「Morisawa Fonts」では32ファミリー114書体をご提供中のほか、Webフォントサービス「TypeSquare」からも豊富なウエイトやスタイルのフォントをお使いいただけます。(2023年4月現在)

そんなヒラギノフォントのこと、もっと知りたい!と思っていた矢先、公式noteがスタートしていることに気がついた私たち編集部。

さすがヒラギノフォントの公式note。書体のイメージと同様に、丁寧で洗練されたビジュアル、かつ親しみを感じる導入で楽しく読めちゃいます。
ヒラギノフォントのPRをしている方は、どんなお方なのでしょうか…。ぜひ直接、ヒラギノフォントの魅力を訊いてみたい!

この度フォントの日(4月10日)記念企画として、夢のコラボが実現しました。

■お話を聞いた人
正木 洋介(まさき ようすけ)
株式会社SCREENグラフィックソリューションズ ビジネス統轄部 営業推進部
Webコンサルティングの会社を経て、2016年にSCREEN GAへ入社。ヒラギノフォントの広報・プロモーションを担当。

ヒラギノフォントの広報担当者に訊いてみた!

正木さんと書体、ヒラギノフォント

ー 今回はご登場いただき、ありがとうございます!正木さんは、普段どんなお仕事をされているのでしょうか?

正木
 MCチーム(マーケティングコミュニケーションの略)に所属しているのですが、広報活動や展示会の実行やカタログ制作といった販促活動が含まれます。フォントとしては、ヒラギノフォント公式noteとTwitter(@screen_hiragino)の主担当者として運用しています。

2021年まではフォントの専任だったのですが、現在は印刷関連製品のMC活動と、フォント製品のMC活動を半々くらいで担当しています。

ー それは意外でした。フォントのお仕事だけではないのですね。

正木 はい、当社は主に印刷装置やワークフローのシステムが主⼒製品なんです。

印刷機材展(IGAS2022)出展の様子

片やデータしかないフォントと、片や運ぶには10トントラックが何台も必要な印刷装置…。
スケールの違いに頭の切り替えが追いつかないことも多いですが、経験豊富な先輩方に助けてもらいながら業務に取り組んでいます。

ー 幅広いお仕事に関わってらっしゃるのですね。そもそも、正木さんがフォントの業界に入ったきっかけは何だったのでしょうか?

正木 大学生の頃からぼんやりとフォントに興味が出てきて、独学でフォント制作を始めていました。卒業論文もフォントをテーマに執筆しました。
卒業後は、フォントとは関わりの薄いWebコンサルティング会社に就職したのですが、アナリストとして働く傍らで、ある勉強会に参加したことが転機になり…。

それが「和文と欧文 和文分科会 その2:自分の書きたい字を書く(以下、和文と欧文分科会)」という、1年間に渡って自分のフォントを制作する勉強会です。講師は、ヒラギノフォント含む数多くのフォントのデザインを手掛けてきた字游工房の鳥海修さんでした。

ー 鳥海さんが手がけていたとは、かなり本格的な内容ですね。どんな勉強会だったのですか?

正木 月1回の分科会でフィードバックをもらい、翌月までに修正する、というサイクルを1年間繰り返してフォントを完成させます。
1年の後半のほとんどは、試しに文字を打ってみて遠くや近く、角度を変えて見ては1-2ピクセル修正する、という作業をひたすら繰り返していたのですが、不思議と辛くはなく、少しずつ確実に整っていくことを楽しんでいました。

1年間かけて制作した「レイヨン」の制作過程をまとめたファイル。鳥海さんからのフィードバックが書き込まれています。

たった1年だけでは、フォント制作の入り口に立ったに過ぎないのですが、「書体を見る目」が確かに変わった1年でした。ここで得た経験と繋がりは代え難く、和文と欧文分科会に参加していなかったら今の仕事には就いていないと思います。

「和文と欧文分科会」終了後もプライベートでフォントの制作を続けたり、フォントのイベントを見かけては参加していたり…。フォントが好きすぎたため、心のどこかで仕事としてフォントに関わりたいという気持ちは常にありました。

ー 「フォントが好きすぎた」!そして、その想いがさらに強くなったのですね。

正木 そんな中でヒラギノの開発メンバーの求人をSNSで見かけた私は、鳥海さんがデザインしたヒラギノフォントの仕事ということもあり、飛びつくように応募したんです。縁あって2016年にヒラギノフォントの開発メンバーとして入社しました。

再調整した「レイヨン」と、プライベートで制作した「みたらし」を、2019年に開催された文字にまつわるフリーマーケットイベント「文ッ字フリマ」で販売。

ー 念願のフォントのお仕事だったのですね。正木さんから見て、ヒラギノはどのような存在ですか?

正木 ヒラギノフォントのことはもちろん、入社前から存在を知っていました。鳥海さんたち字游工房がデザインした書体で、iPhoneやMacで採用されていて、綺麗で使いやすいフォントだな、という印象でした。

しかし、その後入社してヒラギノフォントのことを知れば知るほど、じっくり見れば見るほど、ヒラギノフォント、特にヒラギノ角ゴ/明朝/丸ゴの完成度の高さには驚かされました。

何がその高い完成度をもたらしているか、まだ全ては理解しきれてはいません。
クールでスマート、明るくクセのないベーシック書体というコンセプトや、文字同士の空間の広さが同じになるよう調整されていること、広過ぎず狭過ぎないフトコロ、高過ぎず低過ぎない重心という設計。そのコンセプトと設計を体現するために1文字1文字調整されたアウトライン…。

それらが合わさり、デザインのトレンドに左右されない普遍性、特定の印象を感じさせないフラットさをもたらしているものと思っています。

個人的な好みで言えば、ヒラギノ角ゴ オールド/ヒラギノ丸ゴ オールドがお気に入りですね。

正木さん推しのヒラギノフォント

ひと癖があるけど、根っこはとても人懐っこい。そんな印象のフォントです。友達になってみたい。

ー ヒラギノが友達でいてくれるなんて、憧れます!(笑)
リスペクトでありつつ、正木さんにとって非常に大切な書体でもあるんですね。

正木 ありがたいことに、ヒラギノフォントは街のあらゆるところで見かけます。街中でヒラギノフォントが視界に入ると、すぐにカメラを取り出して写真を撮ることがライフワークになっています。

正木さんが街中で見つけたヒラギノフォント。ヒラギノ角ゴとこぶりなゴシックを特によく見かけます。

ヒラギノフォントは心の底からいいフォントだと確信しているので、このフォントたちがいつまでも使われ続けてもらえるために、出来る限りのことを日頃から考えていますね。ヒラギノフォント公式noteもその1つです。

ヒラギノをPRする日々

ー 正木さんが「ヒラギノフォント公式note」をどのようにスタートさせたのか、教えていただけますか?

正木 ヒラギノフォント公式noteは、“フォントの基本からヒラギノフォントのディープな世界まで、楽しく分かりやすいフォント情報をお届けする”メディアとして運用しています。

ヒラギノフォントは、以前から情報発信をあまりできていないことが課題だったこともあり、2021年の春頃にオウンドメディア立ち上げのプロジェクトがスタートしました。

SCREENグループ全体で見ても、これまでにオウンドメディアを運用している部門はありませんでした。ノウハウが足りていないこともあり、企画の段階から外部のパートナーとタッグを組み、打ち合わせやワークショップを何度も実施しながら少しずつ形を作りました。

note立ち上げのため、企画時に作った資料

企画と並行して、いろんな部署への根回しや、オウンドメディアとは?という説明を社内で繰り返しました。
思うようにプロジェクトを進められていなかった時期に、デザイナーの今市さん(@ ima_collection)から素晴らしいデザイン案を受け取って、モチベーションが急回復したことも記憶に残っています。

今市さんからのデザインバリエーション案

そして2021年の11月に初めての記事を公開し、運用が開始。現在まで1年半近くが経過し、ようやくオウンドメディアとSNSを運用するスケジュール感覚が体に馴染んできました。
記事の企画は、大体3ヶ月に1度で企画会議を実施しています。
まずいい企画が思いつくまで一人で考えてみて、その後編集メンバーや筆者の方と打ち合わせを行い、記事の企画を深めていきます。

一方で、今でも何をKPIにすべきなのか、どの程度リソースをかけるのか。度々議論を繰り返しています。
今後もあらゆるバランスをとりながら、ヒラギノフォント公式noteを大きくしていきたいです。

マインドマップツールを使ってアイデア出しとディスカッションを行っています。細かいネタの宝庫…!

ー note記事を制作する上で、大切にしていることを教えてください。

正木 いつも意識しているのは、一般企業に勤めているフォントやデザインに関わる方・興味がある方にも読んでいただきたいということです。
デザイナーの方じゃなくても楽しめるよう、テクニカルになりすぎない読み物となるように企画を考えています。

正木さんセレクト!これまでのおすすめnote記事3選

(1)その中国語の案内文、フォントがツギハギになっているかも?〈エリックの多言語文字散歩〉
観光客向けの看板、よく見たらフォントがばらばら…?多言語の案内を作るときに気をつけたいポイントについて解説されています。

(2)デザインコンサルファームMIMIGURIと考えるブランディングとコーポレートフォント、フォントの未来
MIMIGURI さんに「コーポレートフォント」というキーワードを中心に、企業とデザインの関係を紐解いていく、CI/VIに関わる方は必見のインタビューです。全3回と大ボリュームなので、お時間があるときにじっくり読むのがおすすめです。

(3)表情豊かで、どこか懐かしい新書体「ヒラギノ丸ゴ オールド」を詳しくご紹介
2022年のMorisawa Fonts・MORISAWA PASSPORT新書体としてもリリースされた「ヒラギノ丸ゴ オールド」が、制作の経緯やデザイナーインタビューを交えて紹介されています。当初はレタリングで書き下ろされたというエピソードや、その後の開発で施された細やかな工夫の数々が読めちゃいます!

 正木 様々な事情で、立ち上げ以降スローな更新頻度になってしまっていたのですが、これからはもう少し頻度を上げて記事をお届けする予定です。今も、執筆済みあるいは執筆予定の記事で、楽しんでもらえる自信がある記事や企画がいくつも待機しています。

今後もヒラギノフォント公式noteと、Twitterもフォローしつつご期待いただけたら幸いです。

ー まだまだ新記事が控えているのですね、楽しみです!今回はコラボレーションが実現できて光栄でした。今後ともどうぞよろしくお願いします。



広報のご担当者として、優しく対応くださった正木さん。普段のご様子がわかる写真が欲しい、という無茶振りにも応えてくださいました…。

癒されるおまけ。休日はご家族と過ごす時間を大切にされているそうです。

「普遍性やフラットさ」と同時に、「友達になってみたい」個性も合わせ持つヒラギノフォント。この唯一無二な書体の魅力を、少しでも多くの人に届けようと発信していく正木さんご自身も、書体イメージと同様に真摯で温かいお方でした。
そんな正木さんの書体愛に溢れている公式noteを読ませていただくと、毎日目にしているはずのヒラギノフォントの奥深さに、より近づけた気がします。
そして今回のコラボを通じて、正木さんのように、書体のことを支えながら大切に伝えていく人の存在は、フォントの世界には絶対に不可欠ということも再認識できました。

読者の皆さま、今後のヒラギノフォント公式noteもどうぞお楽しみに!

コラボを記念して、Twitterによるプレゼントキャンペーンを実施します!(期間 2023/4/23まで)

ヒラギノフォントとモリサワのコラボ記念として、応募期間中、モリサワ公式Twitterヒラギノフォント公式Twitterを両方フォローし、対象のキャンペーンツイートをリツイートしていただいた方の中から抽選で20名様に、ヒラギノフォントのステッカー、モリサワの2022年新書体のポストカード・「Font Map」をセットにしてプレゼントします。

※本キャンペーンは終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。


さて、4月10日の「フォントの日」。
これまでも、さまざまな出会いがフォント沼を深めてくれました。過去の「フォントの日」コラボレーション記事もぜひお楽しみください。


※「ヒラギノ」、「こぶりな」は、株式会社SCREENホールディングスの登録商標です。

みんなにも読んでほしいですか?

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