多言語の組版ルール【欧文編】第4回 欧文約物・併記組版の考え方
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多言語の組版ルール【欧文編】第4回 欧文約物・併記組版の考え方

多言語の組版に必要な、基礎知識やテクニックを紹介する本連載。欧文編の第4回では、和文組版とは異なる多様な「約物」を紹介します。そして実際に、多言語組版を読みやすく併記する時に気をつけておきたい点もお伝えします。

これまでの多言語の組版ルール【欧文編】はこちら。

1.欧文約物(Punctuation)

    1-1.句読点

欧文の句読点は、疑問符と感嘆符を除いて、「ピリオド」「カンマ」「コロン」「セミコロン」「エリプシス」の5種類があります。

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・ピリオド 
文章の終わりや語句の省略を表します。

・カンマ 
文章の区切りに使われます。

*ピリオド、カンマとも数字の桁区切りに使われます。国や言語によって利用方法に違いがありますので、注意が必要です。

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・コロン
その後に続く文章に対して「以下のように」という意味合いがあります。

・セミコロン
それぞれ独立した文章(節)を接続詞を使わずに結びつける役割をします。

*コロンまたはセミコロンの後ろには1スペースを入れます。ただし、フランス語の場合は、コロン/セミコロンの前にも1スペースが入ります。

・エリプシス
いわゆる「3点リーダー」の役目をします。
文章の最後にピリオドと一緒に4点で使う場合はありますが、和文のように2つ続けて6点にする使い方はしません。
また、点の高さはピリオドと同じ欧文ベースライン上になります。

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    1-2.アポストロフィ

アポストロフィの役目は、単語の省略を表わすことです。アポストロフィは一重引用符の閉じ側と同じグリフを使うため、左右ともあると誤解されがちですが、閉じ側のみの1種類しかありません。

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ネイティブが組版したものでも、逆向きに組版されているものを見かけます。注意を怠りやすいところですので、必ず正しい向きにするように心がけましょう。

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「I will」→「I’ll」、「I have」→「I’ve」など「主語+助動詞」の省略形以外での省略アポストロフィは数少なく、スラングを除くと英語では、下記に示す語句のみです。この機会に覚えておきましょう。

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    1-3.引用符

欧文組版において、和文組版の「 」『 』の役割をする記号は引用符(クウォーテーションマーク)といいます。
英語では、アメリカ英語の場合、二重引用符、一重引用符の順で使いますが、イギリス英語ではその逆になります。

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フランス語とイタリア語では「ギュメ(guillemets)」、ドイツ語では逆向きのギュメまたは「あひるの足(duckfeet)」と呼ばれる「ダブルロークウォーテーションマーク」が使われます。
スペイン語では、ギュメを使う場合とEmダッシュ(下記『1-6.Enダッシュ/Emダッシュ』を参照)を使う場合、両方を混合して使う場合の3種類があります。

ドイツ語やスペイン語のように引用符のタイプが2種類以上ある場合は、組版をする前に必ず編集ルールを確認するようにしましょう。

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欧文組版で使用する引用符の形は、慣れていないと区別が難しいものです。
日頃からいろいろな欧文書体で、引用符の形をカンマ、ピリオド、コロン、セミコロンと一緒に確認しておきましょう。

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下記のような、通称「まぬけ引用符」と呼ばれる「正しくない」欧文引用符が使われていることがあります。

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この左右の違いがない真っ直ぐな引用符は、タイプライターに搭載するために考案された代用記号でした。最近では、「半角引用符(ストレートクォーテーションマーク)」と呼ばれ、Webサイトや英語ニュースのテロップなどに使われています。
しかし、新聞、一般書籍、パンフレット、その他の印刷物においては、読み手の信頼を得るためにも、正しい「英文引用符(タイポグラフィクォーテーションマーク)」を必ず使うように心がけましょう。

    1-4.疑問符/感嘆符

疑問符、感嘆符は、和文と同じように下記の記号が使われます。
ただし、スペイン語においては、文頭に上下逆の記号を使い、文を挟んで表示します。

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    1-5.括弧類

欧文組版で使用する括弧類は、和文のように豊富ではありません。
おもに使用するのは以下の種類です。

( ) パーレン・丸括弧
[ ] ブラケット・角括弧

{ } ブレース・波括弧

ブレースは文章中に使用されることはありませんが、見出し的な要素で、数行分をまとめて囲むデザイン要素として使用することはあります。

    1-6.Enダッシュ/Emダッシュ

和文組版では「何時から何時」のような場合「から」に相当する記号は「~」を使いますが、欧文組版ではEnダッシュを使います。

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また、和文組版の全角ダーシに相当するものはEmダッシュです。
よくハイフン2つ(- -)を使用している組版をみかけますが、これはかなりひどい組版とみなされますので、必ずEmダッシュを使用します。Enダッシュで前後にスペースを入れて使用する場合もあります。

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    1-7.分散禁止スペース

欧文組版では、下記のように行末で泣き別れになってしまったり、必要以上にワードスペースがあくと読みづらくなる場合があります。
その場合、「分散禁止スペース(No Break Space)」を使うと防ぐことができます。

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ただし、数字が「3」ではなく「three」のようにスペルアウトされている場合は、泣き別れになっても問題ありません。

    1-8.脚注マーク

欧文組版で脚注を入れる場合、本文中に脚注があることを示す記号としては、アスタリスク(*)、ダガー(†)、ダブルダガー(‡)を使います。

脚注がたくさん入る場合は、3つのうちのどれか1つに印を決め、その印の後ろに番号をつける、または脚注マークは使わず番号だけで表記することもできます。

脚注の内容は、巻末にまとめる場合とページの下部に入れる場合があります。
どちらの場合も本文よりやや小さめの文字サイズになりますが、このときの組幅には注意が必要です。本文と同じ組幅では、1行の単語数が多くなり読みづらくなりますので、1行15~20ワードくらいの範囲で設定をする必要があります。

2.併記組版の考え方

    2-1. 〈和文・欧文〉の配置

和欧併記で組版する場合、「和文と欧文の行間は揃えるか」などを先に考えてしまい、「正しいルールはなんだろう」と迷ってしまうことがあると思います。
そんなとき、「この組版は誰のためのものか」を先に考えれば必然的に答えが見えてきます。
「和文の読み手は日本語が母国語の人、欧文の読み手はその言語が母国語または第2外国語の人」と考えれば、一番大切なポイントは「左右を均等/行間統一」よりも、それぞれの母国語が読みやすく成立していることです。
もちろんひとつの紙面上での2つの言語の配置バランスはデザインとして大切ですが、配置バランスを優先して、結果読みにくくなってしまうのであれば、本末転倒ですね。

左右配置で考える場合、左側に読み手が多いと思われる言語を配置します。また、特別な狙いがない限りは、和文は横組みにします。

和文が箱組みの場合、欧文は箱組みでもラグ組みでも、読みやすいのであれば、問題はありません。本文組みで、欧文に合わせて、日本語を無理にラグ組みにする必要もありません。前述したように、各言語の読み手への読みやすさを優先して決めましょう。

次に、原稿量の差があります。一般的に和文よりも欧文のほうが長くなる傾向にあります。原稿量が違うのであれば、必然的に紙面を占める割合も変わってきます。この割合を同じにしようとすると、欧文が小さくツメて組版され、読み手がおろそかにされた組版という印象になってしまいます。和文も欧文も同じように読み手に負担をかけないように組版しましょう。

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    2-2. 〈欧文・欧文〉の配置

異なる欧文言語を並べて併記組版をする場合もあります。
フランスやドイツの機内誌では、それぞれ英語と併記しているものがよくあります。欧文同士で併記する場合も、原稿量の違いの問題があり、たとえば、英語よりもドイツ語のほうが長くなる傾向にあります。欧文同士の併記でも、和文・欧文併記と同様、各言語の読み手に配慮した組版を心がけます。
いくつかの配置の手法を紹介します。

1. 書体を変えて配置
一方をセリフ書体、もう一方をサンセリフ書体に、または、同じ書体でウエイトを変えて、読み手に言語の区別がつくようにします。この場合、上揃え・左右パラレル併記でも読み手には言語の区別がつきます。

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2. ページを変えて配置
あるセクションについて、たとえば、先にドイツ語で数ページ分そのセクションの本文を、続いて英語で同じく数ページ分そのセクションの本文を配置します。
写真や図版は繰り返し掲載するのではなく、それぞれ1回ずつ、ドイツ語のページ、英語のページにほどよく配置し、キャプションは上下に併記にする、という組版方法があります。この場合、本文書体は統一し、キャプションのみ変化をつける工夫が必要です。

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3. 下揃えに配置
下揃えにして、高さの違いを出すことで、読み手に言語の区別がつくようにします。

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これまで、欧文組版の基礎知識をお届けしてきました。
次の第5回では、組版者として知っておきたい、出来上がった実際のデータの取り扱いや、意外と難しいアプリケーションの設定方法をお伝えします。

〈参考〉記事内で使用した欧文書体はこちら。
Lutes UD PE
Clarimo UD PE
Role Serif Text
ClearTone SG


*この記事は『MORISAWA PASSPORT 英中韓組版ルールブック』の内容を抜粋・加筆したものです。
掲載画像は、同書 p.18〜23の図をモリサワにて改訂しています。










書体:くれたけ銘石
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