月間利用者数500万人超え! 症状検索エンジン「ユビー」の誰もが使いやすい、見やすいフォントへのこだわりとは
いまや、暮らしのツールとして欠かせないスマホアプリ。その中で使われているフォントは、以前であれば個々の端末標準搭載のデバイスフォントを用いるのが主流でしたが、Webベースのアプリが増えてきた近年、Webフォントでアプリを開発するケースが増えています。
コロナ禍で関心が高まるヘルステックの領域でサービスを展開するUbie(ユビー)株式会社もその1社。症状検索エンジン「ユビー」は、2020年4月のリリースから約2年で月あたりの利用者数が500万人を突破した人気の無料アプリです。
ユーザーと症状を対話形式でコミュニケーションするためのフォントはモリサワのUD新ゴがWebフォント形式で採用されています。UDフォントを選んだ理由やWebフォントでの利用に至った経緯を含めて、ユーザビリティへのこだわりを担当デザイナーの方にお聞きしました。
■お話を聞いた人
Ubie(ユビー)株式会社
Designer
三橋 正典さん
1. 多くの方へ読み間違いを防ぐようなフォントでサービスを提供したい
― 夜間に急におなかが痛くなった際、症状検索エンジン 「ユビー」で可能性の高い疾患を調べられて、迅速に専門のお医者さんへ受診でき助かったことがあります。
三橋 ありがとうございます。このアプリはいつでもどこでも気になる症状から、関連する病名と適切な受診先を調べることができるサービスです。症状が悪化した際に利用されることを想定しているので、普段と異なる状況でもできるだけわかりやすく回答しやすいつくりにこだわっています。
― たとえば、どんな点に気を遣われたのですか。
三橋 医療情報はどうしても専門的な表現になりがちです。このアプリは一問一答を繰り返しながら、症状に関連する病名を絞っていく仕組みになっているのですが、質問文の文字数はなるべく短くし、漢字と平仮名のバランスを取った文章になるようにデザインしています。
痛みのある部位を身体のイラストから選んでもらうようにしたり、意図的に一定の段階で切り上げることも可能です。不安を和らげながら対話的に利用できるのは、普通の検索エンジンで情報を取捨選択するプロセスと大きく異なります。
―アプリでは、デバイスフォントではなくWebフォントを選択されました。
三橋 Webフォントの場合、特に日本語フォントは情報量が多く、通信環境によって表示速度が遅くなることがネックだと言われてきました。ただ、5Gが広がりつつある今の日本の通信環境では、パフォーマンスに問題はないというのが私たちの評価です。実際、リリース時には2週間程度チューニングをしていた時期があり、組込み型のデバイスフォントとの比較検証もしましたが、許容範囲だと判断しました。
―なるほど。Webフォントを通じて、どのような表現を目指されたかったのですか。
三橋 以前からタイポグラフィ、文字の造形でプロダクトのインターフェイスを向上させたいという希望がありました。それには症状検索エンジン「ユビー」の開発に至る経緯があります。
ユビーには以前より存在するプロダクトとして、医療機関での利用を想定した「ユビーAI問診」があります。これは初診の方が診察前に手書きで書き込む問診を、タブレットで回答いただくもので、より広く深い事前問診ができるので、医師にとっても診察時間を有効に使えるサービスです。
ただ、こちらはネットワークが制限された病院内の利用が前提です。そのため、組込みフォントを利用するにはコストの面でのハードルがありました。その後、幅広い世代の個人を対象としたスマホアプリをリリースすることとなり、より多くの世代の方が、さまざまな状況下で使用する事が想定されました。その際、読み間違いを防ぐようなフォントを用い、インターフェイスの向上、読みやすさの改善をしていきたいと考えました。
2. リブランディングでフォントをUD新ゴに統一
―アプリではWebフォントとしてモリサワのUD新ゴを採用いただきました。どういった経緯で選ばれたのでしょうか。
三橋 もともとモリサワのフォントは、ユビー社内の様々なところで使われていたのですが、大きな転機となったのが2年程前です。リブランディングの一環としてロゴを改めた際、社名の表記をアルファベットの「Ubie」から「ユビー」に変更しました。また、Webや社内外のドキュメントでのフォント表記をUD新ゴにし、VIの統一を図りました。
そもそもユビーは、医師とエンジニアが2017年5月に創業したスタートアップで、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」ことがミッションです。このテクノロジー部分をデザイン上のアプローチでも何かできないかと考えた際に、会社のエモーショナルな部分と寄り添って伝えるという意思に、UD新ゴの造形がしっくりときたのです。
―つまり、ユビーらしさを表すフォントとしてUD新ゴが定着していった感じでしょうか。
三橋 そうですね。社内での浸透があったために、Webアプリにも違和感なく組み入れられたと思います。もちろん、アプリとして導入する上では、文字としての判読性やアクセシビリティについて検証を重ねました。
3. WebフォントとしてUDフォントの効果を計数化したい
―UD新ゴを実装するプロセスで、とくに問題はなかったですか。
三橋 冒頭でも少しふれたように、日本語のWebフォントはパフォーマンス上で支障が出るといった話も聞きましたが技術も格段に進んでいるようです。モリサワ担当者からのご提案で、必要な文字情報を取り出すようサブセット化された形式で導入したこともあり実装もスムーズで、4カ月程度でローンチできました。
―アプリの使い勝手に対する、利用者からの声はありますか。
三橋 定期的にユーザーインタビューを行っていますが、「近くの適切な医療機関を受診できた」「自分で検索エンジンで調べるよりも、意思決定がしやすかった」といった評価をいただき、プロダクトを提供する意義を感じています。
―これからやってみたい取り組みがあれば、聞かせていただけますか。
三橋 同じような事例がまだ少ないこともあってか、UD新ゴをWebフォントとして用いる取り組みに他社のデザイナーから「よく導入できたね」といった見方からヒヤリングを受けることもあります。Webフォントを利用したアプリ開発により、フォントの選択肢が増えるということが世の中に広がっていけば、もっとユーザビリティを高める方法も見えてくるかもしれません。個人的にもnoteを通じてこうした知見を発信し、多くの方と情報を共有できればと思っています。まずは、利用者へのアンケートなどを通じて、UDフォントの効果を計数化できればいいですね。
おわりに
時に命に係わるヘルスケアの領域で、サービスを提供しているUbie(ユビー)株式会社。医療×テクノロジーで生活者に向けても価値を創出していきたいという姿勢が強く伝わりました。大事な情報を届けるのに、フォントの果たす役割の大きさを再認識させられた気もします。アプリ開発にUDフォントをWebフォントで実装するという先駆的なケースとして、これからも注目したい取り組みです。
Webフォントの基本を知りたい方は、こちらをご覧ください。
Ubie(ユビー)株式会社のご紹介はこちら
症状検索エンジン「ユビー」