筆順フォントリリース記念!UDデジタル教科書体 関連情報まとめ
2021年秋にMORSAWA PASSPORTから「UDデジタル教科書体 筆順フォント」がリリースされます。(※MORISAWA BIZ+で2021年5月に先行リリース済み)
そこで今回は、筆順フォントを含めたUDデジタル教科書体のラインナップについて、これまでの様々なインタビューへのリンクを交えてご紹介したいと思います。
1. UDデジタル教科書体 筆順フォント
「UDデジタル教科書体 筆順フォント」はその名の通り、“UDデジタル教科書体” の “筆順フォント” です。
UDデジタル教科書体 筆順フォントでは、小学生用と中学生用でそれぞれ以下の2タイプを用意しており、児童や生徒の学年に合わせて使い分けていただくことが可能です。
2020年4月1日に施行された小学校学習指導要領の変更にも対応していて、漢字の組み立てや部首の学習、デジタル教材の作成など、国語の授業の教材作成に役立つ書体です。(使い方の詳細は、サポートページをご覧ください)
UDデジタル教科書体の筆順フォントと言われても、そもそも「UDデジタル教科書体」を知らなかった...という方もいらっしゃると思います。
ということで、ここから先はUDデジタル教科書体のラインナップについてご紹介します!
2. UDフォントとは?
UDデジタル教科書体のご紹介の前に、まずは “UD(ユニバーサルデザイン)” フォントについて簡単にご説明します。
ユニバーサルデザインとは、「できるだけ多くの人が利用できること」を基本コンセプトにしたデザインのことで、“UDフォント” はその考えを文字のデザインに落としこんだものです。
私たちは普段、視覚からの多くの文字情報を得ていますが、さまざまな事情から読むことに困難さを抱えている方がいらっしゃいます。
例えば高齢者などの場合、視力が衰えて視界がぼやけてしまい、文字が区別しにくいことがあります。UDフォントは、このような課題を解決するため、英数字のシルエットや文字の切り口を誤認がないようにデザインしたり、漢字やかなを明るくわかりやすくするなどの工夫がなされた書体なんです。
近年世界的に話題になっているSDGsでは、世界の “誰一人も取り残さない” ことを誓い、誰もが幸せに暮らせる社会をつくるための17の目標を掲げています。
モリサワでも文字を通じてこのSDGsの活動に取り組んでおり、“より多くの人に読みやすい” ということをコンセプトにしたUDフォントは、この目標に貢献できるのではないかと考えています。
「自分は普段問題なく読めているのでUDフォントは関係ない!」と思われていた方もいるかもしれません。しかし、これを機会にUDフォントの概念を知っていただき、多様な人たちに向けた公共のサインや配布物などには、年齢や障害の有無を問わない読みやすさを考慮したUDフォントを使っていただけると嬉しいです。
3. UDデジタル教科書体 ラインナップ
UDデジタル教科書体は、デジタル教科書をはじめとした ICT教育の現場に効果的な書体です。2017年10月に発表された「Windows 10 Fall Creators Update」でRとBのウエイトの2書体が標準搭載されるなど、徐々に認知を広げています。
・開発ストーリー
開発が始まったのは、2008年頃。担当デザイナーがUDフォントについて模索する中で “教育現場での課題” を知ったことがきっかけでした。
一般的に教科書体というと、筆文字風のデザインが多く採用されています。「はらい」や「とめ」、力の入れ加減による線の太さの強弱などが分かりやすいので、文字を学び始めた子どもたちに “教えやすい” ためです。
しかし、ロービジョン(弱視)の子にとっては、線の太さの強弱や『心』や『水』にあるはねの先の細さなどが読みにくく、ゴシック体や丸ゴシック体のような線の太さや流れのトーンが均一な書体のほうが、一部の子どもたちにとっては “読みやすい” ということが、現場レベルではわかっていました。
この “教えやすい” と “読みやすい” の両方を兼ね備えた書体がない、という課題を解決するために開発されたのが「UDデジタル教科書体」なんです。
UDデジタル教科書体では、こちらの画像のように学習指導要領に準拠した書き方の方向や点・ハライの形状を保ちながらも(教科書体のよさ・教えやすい)、太さの強弱を抑える(ゴシック体のよさ・読みやすい)ことで、 “教えやすさ” と “読みやすさ” の両立を実現しました。
また、開発中の書体を利用して現場で調査する中で、ロービジョン(弱視)の子だけではなく、ディスレクシア(読み書き障害)の子にとっても読みやすい書体であることがわかっています。
※読みやすさについてのエビデンスはこちら
・英語教育のための欧文シリーズ
2020年度から実施されている学習指導要領では、外国語活動が小学3・4年生からになり、小学5・6年生では英語が正式な教科になりました。
この動きに合わせて、UDデジタル教科書体では “欧文シリーズ” をリリースしています。文部科学省から新たに出された英語教材の字形にも準拠しているのもポイントです。
正体欧文の「UDDigiKyoLatin」、イタリック体の「UDDigiKyoItalic」、書き学習用の「UDDigiKyoWriting」の3ファミリーあり、こちらも “教えやすく、読みやすい” 工夫をしています。
詳しく説明した動画がありますので、こちらも是非ご覧ください!
4. メディアインタビュー
UDデジタル教科書体のラインナップは、リリース後に多くの反響をいただきました。ここでは、書体開発担当者の高田さんのメディアインタビューをご紹介します。
・日経WOMAN ARIA「ひと・ヒト・人」
UDデジタル教科書体の開発にあたって現場を知るまで、知ってからの開発への思いを語った記事。書体ができあがるまでには、こんな苦労が...!
・ねとらぼ
「モリサワに聞く「フォントのユニバーサルデザイン」」と称した連載記事。教育現場で困っている子どもたちの様子と現場の声を聞いて開発された「UDフォント」の関係性がわかります。
・DIAMOND online
これからの教育に求められる書体デザインについても触れた記事。Windows10への標準搭載による意外な場所での好評価とは!
5. 現場の声と採用事例
UDデジタル教科書体をはじめとしたUDフォントをお使いいただいている現場の皆さまへのインタビューや使用事例についてまとめました。
実際どんな風に、どんな思いで使われているのか…こちらもぜひご覧ください。
・デジタル教科書の制作現場へのインタビュー(モリサワ公式note)
社会科の教科書・地図帳をつくる株式会社帝国書院の二宮さんと、デジタル教科書開発に携わった株式会社Mediowlの岡田さん、茂見さんに、教科書デジタル化の現状やTypeSquare、リフロー表示に採用いただいたUDデジタル教科書体への想いについてお聞きしました。
・UDデジタル教科書体の書き学習用欧文の有用性(モリサワ公式Youtube)
上智大学短期大学部 英語科 教授 狩野 晶子先生へのインタビュー。
UDデジタル教科書体の書き学習用欧文のポイントをご紹介しています。
・教育市場での採用事例(モリサワ公式サイト)
自治体や教育現場、学習教材での使用事例をまとめています。
奈良県教育委員会の小﨑 誠二さんや、茨城県行方市の鈴木 周也市長へのインタビューも掲載しています。
・教材配信と先生方へのインタビュー(FONT SWITCH PROJECT)
モリサワでは、かなや英語の学習に役立つ教材を無料で配信しています。
現場の先生方へのインタビューの他、教材の使い方についてもお聞きしました。
6. 伝えたいこと
UDデジタル教科書体のラインナップは、多様な子どもたちの読み書きに配慮した書体です。また、第二言語としての日本語学習者や高齢者からの評価も高い書体です。しかし、この書体を使えば万能!というわけではなく、この書体が読みにくいと思われる方もいらっしゃると思います。
書体は、情報を届ける相手や内容によって変えるべきです。
ただ、UDフォントの項目でも少し書きましたが、読むことが困難な方がいるという事実と、それを助けられる(かつ多数派の読みも損ねない)書体があるということは、覚えていていただけると嬉しいです。
筆順書体が増えてさらに充実したUDデジタル教科書体のラインナップを、今後ともどうぞよろしくお願いします!(担当:M)
※本記事でご紹介しているリンクは、2021年7月30日時点の情報です。
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