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書体に真心をのせる。『45R』らしさを表現する「A1」書体を使ったサイトリニューアルの話

素材や縫製にこだわった丁寧なものづくりで長年愛されているブランド『45R』。

『45R』を擁するフォーティファイブアールピーエムスタジオ株式会社(以下「45」)は、2022年に創業45周年を迎えたのを機にWebサイトをリニューアルし、新たに「ブランドECサイト」と「コーポレートサイト」を設けました。『45R』の服と同様、遊び心とこだわりがたっぷり詰まった両サイトには、モリサワのWebフォントサービスTypeSquareから「A1ゴシック」と「A1明朝」が採用されています。

今回は、サイトリニューアルを担当されたお二人に、同社のものづくりへのこだわりや、文字に対する想いなどを伺いました。最後までどうぞお楽しみください。


 ■お話を聞いた人
フォーティファイブアールピーエムスタジオ株式会社
オンラインストア 店長
石橋 勝成さん

あっぱれ部
角田 佳奈映さん
※角田さんは取材時のみ参加

1. “原点”は「気持ち良い服」と感じられる服を作り続けること

―2022年は45周年プロジェクトを展開されていたとか。どんな企画を実現されたのですか?
 
石橋さん ブランド名でもある「45」という数字には特別な思いがあり、その記念の年に、葉山(神奈川県三浦郡)に海の旗艦店をつくりました。45の長年のテーマのひとつに海がありますが、海に近いところに店舗を持ったことがなくて。45年間を振り返るというよりは、第2章(次の45年)の始まりといった、自分たちがやりたかったさまざまな新しい取り組みを形にできた1年でした。

―相模湾を一望できるロケーションと、木の温もりが感じられる店内が素敵です!ところで『45R』といえば、デニムをはじめ糸作りから仕上げまでこだわったアイテムで知られています。ものづくりへの思いや大切にしていることを伺えますか。
 
石橋さん 45には「原点」という、全スタッフが大切にしている理念があって、その中に「華美に走らない」という一節があります。これは「スタンダードだけれど上質で、お客様が “気持ち良い” と感じられる服を、これまでもこれからもまっすぐ作り続ける」ということじゃないかなと。
例えば、服の表側はきれいに仕上がっていても、裏側の縫い方や生地・糸の始末の仕方によっては、袖を通したときの感触が全く違うものになってしまう。だからこそ、見えないところまでとてもこだわった服をお届けしています。
そんな45の原点となるキーワードを落とし込んだのが、この『根っこ手帳』です。カバーは藍染めの馬革で作りました。

石橋さんの『根っこ手帳』。45のみなさんが持つ、門外不出のアイテムです。

―根本の考えだから「根っこ」なんですね。手がけられているアイテムの隅々にまで、みなさんのこだわりが感じられます。 

2. ブランドECサイト、コーポレートサイト共に「A1」書体シリーズを採用 

―45周年プロジェクトのひとつとして取り組まれたのがWebサイトのリニューアルで、このたびECサイトとブランドサイトを「ブランドECサイト」に一本化して、新たに「コーポレートサイト」を立ち上げられました。この経緯を教えてください。 

角田さん 以前はECサイトとブランドサイトを設けていて、ブランドサイトの中に会社概要などコーポレートサイトに必要な要素を入れていました。ですが、検索するとECサイトが上位に表示されるので、ブランドサイトで何か告知してもほとんど見られていませんでした。よって、ECサイトとブランドサイトを1つにして導線の悪さを解消することが、今回のリニューアルにおける大きな目的のひとつでした。

石橋さん コーポレートサイトにおいてはスタッフ採用を念頭に置き、45が取り組んでいることをちゃんと伝えようというところから作り込んでいきましたね。
 
―以前のWebサイトはどんな雰囲気でしたか?
 
角田さん ECサイトもブランドサイトも、当時発行していた紙のカタログに近いテイストで作っていました。特に、ブランドサイトはカタログと同じ縦書きのテキストレイアウトで、文字は毎回画像に書き出して作っていました。

―となると、更新作業に手間がかかりますよね。

角田さん すごく大変でした!画像文字は検索でも引っかからないですし、苦労した記憶しか残っていないくらい(笑)。 

―新しいブランドECサイトではTypeSquareを導入し、A1ゴシックをメインで使われています。 

角田さん A1ゴシックは前のブランドサイトでも使っていました。今回、フォントの選定は制作パートナーのシフトブレインさんにお任せしたのですが、やはりA1ゴシックを選ばれました。ヴィンテージの味わいがあって、なおかつ骨格のしっかりした、時代のはやりすたりに影響されないところが決め手だったと聞いています。

 ―ブランドECサイトは、商品に加えてものづくりのお話やコーディネートなどのコンテンツが楽しく、思わず見入ってしまいました。
 
角田さん お客様にとっても見やすくなったのではないかと思います。画面をスクロールすれば『Yasuminate』(『45R』デザイナー・井上保美さんによるコーディネート集)があって、カタログのコレクションもある。一つのサイトでコーディネートを見て、商品が気に入ったらそのまま購入できる、という自然な流れができました。

―一方でコーポレートサイトは、メッセージや見出しなどにA1明朝が使われています。

角田さん こちらはちょっと毛色を変えて、明朝体を選びました。トップページに「気持ちの良い服を、喜んで着ていただきたい。」というメッセージを表示しようということになり、さまざまな書体で組んで検証した結果、一番「真心をのせられる」のがA1明朝でした。

―どちらもA1書体がぴったりだったということですね。コーポレートサイトは、スタッフの皆さんの声が聞こえてきそうなほど、仕事の様子をわかりやすく紹介されているのが印象的です。
 
角田さん アパレル企業への就職を検討している学生さんの他にも、同業他社の方に見ていただいているという声をちらほら聞きますね。コーポレートサイトの文章は私を含め、社内のスタッフが書いたのですが、かなり苦労しました。
 
石橋さん 自分たちでやりたいんですよね、たぶん。写真もプロカメラマンに頼めばよりクオリティの高いものになるのは十分わかっているのですが。
 
―ええっ、文章だけでなく撮影も……!
 
角田さん ブランドECサイトの写真は彼(石橋さん)やオンラインストアのスタッフが撮影しています。物流倉庫に併設したスタジオで、自分たちで全部セッティングして。
 
―そこまでされるとは驚きです! でも納得しました。Webサイトに登場されているスタッフの皆さんが、リラックスしたとても素敵な表情をされていたので。

石橋さん ふふふ。ありがとうございます。ブランドECサイトに関しては、リニューアルを行ったおかげで運用がしやすくなりました。以前はブランドサイトを角田さんが、ECサイトを僕が担当していて、それぞれ別に動いていたのですが、ひとつになったことでスタッフの連携意識が強くなった気がします。
加えてTypeSquareを導入したことで、更新時に画像文字を都度作らなくても『45R』らしい「A1」書体が使えるようになりました。

3. 文字にも手仕事のこだわり

―45さんには素材や手仕事など語るべき「物語」が多いだけに、それを伝える文字にもこだわりがあるのではと思ったのですが、いかがですか。

石橋さん ブランドECサイトのトップページは、日めくりカレンダーのように毎日商品画像を更新しているのですが、商品名には手書き風の文字を使っているんですね。これは、既存のフォントをマーカーペンでなぞったものをデータ化して、いくつか組み合わせて作っています。

角田さん こういった手書き風フォントもですが、以前使っていた『45R』のロゴは、親方(代表取締役の髙橋慎志氏のこと)による書でした。冒頭でご紹介した45の「原点」にも、「手による作業」を大切にしようというくだりがあります。もちろん服作りが基本ですが、Webサイトなどあらゆるタッチポイントで手仕事の雰囲気を残しています。

―「A1」書体も、活字にインクを乗せたときの「角の部分がにじんでできる墨だまり」を表現した、アナログ味を追求した書体です。だからこそ相性がいいのでしょうね。

4. 昔は尖っていた!? 45rpmのこれまでとこれから

―45さんは、あまり対外的な発信をされない印象がありました。しかし、新しくなったコーポレートサイトからは働いているスタッフの姿や想いが伝わってきて、皆さんを知る間口が広がったような気がします。

石橋さん 僕たち的にはずっとオープンでいるつもりでしたが、伝えることがあまり得意ではなかったのかもしれません。紙のカタログでも多くのメッセージを紹介しているのに、45を知っている方だけが読むものになっていて、深く知ってくれる方が増える一方で、まったく知らない層も存在する。だから、今回リニューアルしたWebサイトが認知を広げるきっかけになれば理想的ですね。
 
角田さん 45は40年くらいずっと、広告費に一切費用をかけてきませんでした。他と同じことはしたくない、口コミで広まってくれたらいいという想いもあって。これほど外へ向けて発信をしたのも、45周年をきっかけに立ち上がったコーポレートサイトが初めてではないでしょうか。
 
―昨今の風潮と真逆をいくようなブランディングですね!
 
角田さん そう言われるのがまた、うれしいんですよね(笑)。
 
石橋さん 自分が働いているところを「知らない」って言われたくないじゃないですか。だから僕はみんなに知らせたいです。

角田さん 最近は、『45R』デザイナーのやすみさん(井上保美さん)が雑誌の連載を持ったり、自分の本を作ったりといった変化があり、会社として発信に抵抗がなくなってきたところがあります。要は、かつては少し尖っていたのかもしれませんね。

―では最後に、今後の展開を教えてください。 

石橋さん 45周年をきっかけにして、『藍職人いろいろ45』というコレクションを立ち上げました。はるか昔から受け継がれている藍染めを45らしく広められればと、日本中の藍職人の方に協力していただいています。これまでは期間限定イベントとして各地で開催したのですが、2024年3月に大阪の阪急百貨店うめだ本店に全国初の「藍職人いろいろ45」の店舗をオープンする予定です。

角田さん 45でも藍染め商品は長年扱っていましたが、改めて腰をじっくり据えて取り組んでいるコレクションです。これまでのイベントでもご好評いただきまして、藍染め商品だけの店舗をオープンすることになりました。藍職人さんが現場で作業されている様子の動画も作成中で、ゆくゆくはWebサイトでも公開しようと考えています。

―楽しみにしています!本日はさまざまなお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


取材時にウールのアウターを見せていただく機会があったのですが、温かい空気だけをまとうような素材の軽さと上質さ、仕立ての丁寧さに驚きました。
使っているフォントや文字に関しても、培ってきた審美眼ときめ細かい手仕事の片鱗が感じられるエピソードが多く、『45R』のこれからの展開がますます楽しみになりました。

石橋さん、角田さん、貴重なお話をありがとうございました!


45R 公式サイト・オンラインストア

フォーティファイブアールピーエムスタジオ株式会社 コーポレートサイト

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