モリサワ note編集部
多言語の組版ルール【簡体字編】第1回 簡体字の基本
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多言語の組版ルール【簡体字編】第1回 簡体字の基本

モリサワ note編集部

和文だけではなく、世界各国の言語に対応した文字をご提供しているモリサワ。多言語の組版について基本ルールをお伝えする本企画では、過去に欧文編をご紹介しました。

今回からお届けするのは、中国語の表記に用いる簡体字かんたいじです。
日本語の漢字と共通点がありつつも、異なる形を持っている簡体字。中文組版を知ることは、和文組版の理解にもつながります。ぜひ基本的な知識を身につけましょう。

1. 簡体字の成り立ち

「簡体字」とは、画数が多く複雑な漢字繁体字はんたいじを簡略化した俗字として、従来から用いられてきた文字でした。
中華人民共和国の文字改革によって、国の正式な字体(規範漢字)として漢字の簡略化が推進されるようになり、1956年に「漢字簡化法案」が定められました。その方針に従い、中国文字改革委員会が1964年に交付した「簡化字総表」に正式な簡体字がまとめられました。この簡体字は「簡化字」と呼ばれ、現在の中国の学校教育に使用されているほか、新聞や出版物等に広く用いられています。
「簡化字」には、楷書化した草書の要素や、画数が少ない部品への置換え、偏やつくりを省略するといった工夫が施されています。

日本では、簡化字を含め、旧字体や繁体字から略字化された文字を総称して「簡体字」と呼んでいます。

簡体字はそれ以前に使われていた漢字から簡略化しているため、基本的に日本語の漢字とは異なる字形を持っています。
また、見た目は似ている漢字でも偏や旁の位置、点・はらいの角度など微細な字形は異なるため、中国語を組む際には中国語フォントを使うことが必須です。

ちなみに、日本語で現在使われる「新字体」も、元は戦前まで使われていた「旧字体(旧漢字)」を簡略化した漢字です。
簡略化の方法も簡体字の成り立ちと似ており、行書体や草書体を楷書化し、さらに手書きで使われた略字などから正式な文字に昇華させています。

2. 簡体字を使用する国と地域語

簡体字は中国大陸、シンガポール、マレーシアなどで使われます。

簡体字が使われている地域

一方、繁体字で学習する台湾や香港、マカオ、簡体字教育を受ける以前に海外に移住した華僑などでは、簡体字が読めない人もいます。
同じ中華圏であっても、書籍や映画、テレビドラマなどの作品を発売する際は、使用言語に合わせて簡体字・繁体字の字幕が併記される例が少なくありません。
日本で中国語を使った制作物を作る場合も、簡体字と繁体字をきちんと使い分けることで、伝えたい相手に合わせた、正確な情報伝達が可能になります。

なお、面積が広く、多民族国家でもある中華人民共和国では、ひと口に「中国語」と言っても、地域や民族によってさまざまな違いがあります。
私たちが中国語として認識しているのは、「北京話」をベースに作られた「普通話」と呼ばれているものです(テレビ放送や教育ではこちらが使われます)。
中国国内には、このほか、広東省で使われる「広東語」、上海で使われる「上海語」など、地域によって方言も多く存在します。
発音や語彙だけでなく、語順や文法などにも違いがあり、相互理解が難しいケースもあります。

3. 中国語と日本語

簡体字は膨大にある漢字の一部を略字化したものです。そのため、中国語を扱う上で日本語と共通で使える漢字は数多くあります。
しかし、中国語全体で見ると、日本語と同じ漢字でもフォントの字形に若干の違いが現れる文字が少なくありません。
たとえば、「なべぶた」や「まだれ」の点の付き方が垂直に入るか斜めに入るかなど、一見すると微細なデザインの違いですが、中国語を話すネイティブの人が見たら、日本語フォントでは違和感を覚えるケースもあります。
日本語の文章の一部に中国語が入ったときに日本語フォントで代用できる場合も、部分的に中国語フォントを使うようにすることで全体的な見栄えが向上します。

「うかんむり」にある上の棒は、日本語では真っ直ぐ入りますが、中国語では左上から斜めに入ります。

4. 組版で使用する文字

中国語簡体字では、文字コードに通称「GBコード」と呼ばれるものを使います。
一方、日本で使われているのはJIS X 0208をベースにしたものです。
それら各国の文字コードを等しく扱えるようにしたのがUnicodeなのですが、日本語フォントでも対応する文字セットが違うように、簡体字フォントでも対応する文字セットの違いによって、扱える文字に違いが出てきます。

Unicode順に「①(Unicode: 2460)」から配列。左の簡体字と右の日本語では、収録されている文字が大きく異なっていることがわかります。

日本語→簡体字に変更する場合には、フォントによって文字セットが違うこと、それによって変換できない文字があることを認識しておくとよいでしょう。

また、約物の種類や使われ方も日本語とは異なるものがあります。
日本語では会話文などに多用する「 」(カギ括弧)や『 』(二重カギ括弧)はほとんど使われません。
米印(※)も簡体字ではアスタリスク(*)を使うことが普通なので、間違えないようにしたいものです。

白抜きの隅付き括弧など、日本語では滅多に使わない約物もあります。

5. 使われる書体の種類と特徴

中国語用フォントのバリエーションは日本語フォントに似ています。中心になるのは、宋朝体、宋体(明朝体)、黒体(ゴシック体)、楷体(楷書体)の4種類です。

宋朝体は、中国の宋代において木版印刷で用いられた楷書をベースにした書体です。それとは別に、近代の金属活字の字形をベースにした「仿宋体ほうそうたい」も似た字形として取り上げられます。
宋朝体や仿宋体は、縦書きの時代に使われていた書体なので、現代的な黒体に比べて少し字幅が狭くなっていることが特徴です。

一方、現在の中国語では横組みで組み上げることも多いため、現代的な「宋体」(明朝体)は正方形の字面にデザインされています。

「HYZhongSongTi」はオールドタイプの宋体に近く、少し字幅が狭くデザインされていてクラシックな印象です。

「黒体」(ゴシック体)は現代的な印象を与え、見出しに多く使われます。
直線的なゴシックや、懐や傍線などに曲線を多用した柔らかな手書きの印象を残した黒体、丸黒体も人気があります。

他にも、看板などに使われるディスプレイ書体も人気があり、総芸体や琥珀体も有名です。
書体の選定時は、和文組版と同様に、どのような種類を使うと相応しいのか、各書体の特徴をよく調べてみましょう。


ここまで、簡体字の基本的な情報をお伝えしました。次の第2回では、さらに詳しく簡体字の組版をご紹介します。

*この記事は『MORISAWA PASSPORT 英中韓組版ルールブック』の内容を抜粋・加筆したものです。


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書体:赤のアリス
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