モリサワ新書体2020のご紹介〜見本帳の中身、見せちゃいます〜
2020年11月12日(木)に2020年度の新書体をリリースいたしました。
各書体の特徴について、新書体見本帳に掲載されているビジュアルを交えつつご紹介していきますので最後までお見逃しなく!
1.ラインナップ紹介
本年度リリースするのは、こちらの4書体です。
左上から、フェルトペンのメモ書きのような親しみやすい印象のペン字体「ぺんぱる」、 中国晋代の碑文と日本の近代活字を復刻した柔らかなゴシック体「くれたけ銘石」、 漫画の吹き出しや辞書の見出しなどで使用されるアンチック体にインクのにじみ加工を施した 「秀英にじみアンチック」、ローコントラストでありながらもクリアですっきりとした印象のセリフ書体 「Lutes UD PE」です。
また、今回の新書体追加に合わせて「黎ミン」「新ゴ」「新丸ゴ」のAP版のほか、 かな書体「秀英アンチック」と「秀英角ゴシック」の漢字を組み合わせた「秀英アンチック+」も追加されます。
...概要をご説明しましたが、文字で文字の説明をするのは難しいですね。
百聞は一見にしかず!ということで、ここからは新書体見本帳2020のビジュアルをお見せしながら、各書体の特徴と関連情報をご紹介します。
2.ぺんぱる
「ぺんぱる」は、フェルトペンでラフに手書きしたような、親しみやすい雰囲気を持つデザイン書体です。
ひらがなの“ま”や漢字の“東”の横線がつながっているなど、フリーハンドならではのユニークな筆の運びやスピード感が特徴です。
手書き風ではありますが、ただ書いた文字をスキャンするだけではなく、一文字ずつアウトラインを確認しながら作成しています。字面や文字位置の丁寧な調整・部首統一も行っているので、統一感と読みやすさを兼ね備えた書体になっています。
ご覧のようなメニュー表や食品パッケージ、見出しやキャプションなどで柔らかい印象を与えます。(おいしそう…)
・書体名の由来
「ぺんぱる」は、文通仲間を意味する"ペンパル"に、手紙のような優しい思いを込めた雰囲気で使ってもらいたい、という意味を込めて名づけました。
実はこの書体のデザインは、子どもの連絡帳にお母さんが書くような文字をイメージして作られました。そのため、ペンと紙のような物質感を連想させるような名前にしたいと考え、候補を絞っていきました。
また、“は”や“ほ”などの、書体の中で特徴的なデザインのかなを名前にも使いたいと考えていました。
これらを総合的にみて生まれたのが「ぺんぱる」という名前です。
手書きの風合いが持つ優しさや親しみやすさを感じていただけたなら嬉しいです。
手書き風の書体といえば、2017年に「黒曜」、2019年に「小琴京かな」「小琴遊かな」「剣閃」をリリースするなど、実はモリサワでは手書きのニュアンスを持つ書体のバリエーションが少しずつ増えています。
今後のラインナップの拡充にもご注目ください!
小琴はnoteでも取り上げているので、是非ご一読いただけると嬉しいです。
3.くれたけ銘石
「くれたけ銘石」は、中国南京市郊外で出土した晋代の墓誌銘『王興之墓誌』より復刻した漢字書体「銘石(めいせき)」と、 森川龍文堂の活字見本帖『活版総覧』から復刻した和字書体「くれたけ」を組み合わせた オールドスタイルのゴシック体です。
和字書体:ひらがなとカタカナのみの書体
漢字書体:漢字のみの書体
見本帳では、俳句で組んでみました。隷書体をベースに彫刻の味わいが加わった書風から、 どこか懐かしい素朴な魅力を感じますよね。
実はこの「くれたけ銘石」 、今までにモリサワから出されているフォントの中に仲間がいます。 それがこちら。
これらは全て、同じタイプファウンダリーから提供いただいている書体です。「きざはし金陵」「かもめ龍爪」「さくらぎ蛍雪」が既にリリースされており、 今回「くれたけ銘石」が加わります。
モリサワからリリースするにあたっては、文字セットの拡張やペアカーニングの追加などの細かな品質調整を行っており、個性的な書体を最新の仕様でご利用いただけます。
ちなみに、これらの書体名にはルールがありまして、和字書体と漢字書体の名前の組み合わせでできているんです!「くれたけ銘石」であれば、「くれたけ」という和字書体と「銘石」という漢字書体が組み合わせてある、ということになります。
“和字(かな)”と“漢字”、別々にフォーカスしてみるのも、書体の楽しみ方のひとつですね。
4.秀英にじみアンチック
「秀英にじみアンチック」は、漫画の吹き出しや辞書の見出しなどで使用される書体「秀英アンチック」をベースに、活版印刷による紙面上でのインクのにじみを再現した書体です。
元になっている「秀英アンチック」はもともとかなと一部の記号類のみが搭載された“かな書体”として提供されており、「秀英角ゴシック」の漢字を組み合わせることが推奨されていました。こういった、書体を組み合わせて使うことを“混植”といいますが、アンチック体のかなとゴシック体漢字の混植は、通称“アンチゴチ”とよばれています。
いままで混植をするには組版をするアプリケーション上での設定をしなければなりませんでした。しかし「秀英にじみアンチック」と、今回合わせてリリースする「秀英アンチック+」は、最初から「秀英にじみ角ゴシック」「秀英角ゴシック」の漢字が組み合わせてあるので、かなと漢字をそのまま打ち出すことができます。
どちらの書体も自分で設定をする必要がなく、より快適にご利用いただけるようになりましたので、ぜひ使ってみてくださいね。
にじみのある「秀英にじみアンチック」を、にじみのない「秀英アンチック+」と比べてみると、こんな感じです。大振りで重厚な明朝デザインのかななので、にじみがなくても存在感がありますが、線の揺らぎや交差部分のにじみ加工が加わることで、より深みのある雰囲気になっていると思いませんか?
秀英体にじみシリーズも年々数が増えてきました。
既存の書体と合わせて、幅広いシーンで使っていただければと思います。
5.Lutes UD PE
「Lutes UD PE」はデジタルデバイス上での視認性に配慮するため、ローコントラストでありながらもクリアですっきりとした印象のデザインに仕上げています。 ローコントラストというのは“線の太さの差が少ない”という意味です。
豊富な言語サポートを展開していますので、近年需要が高まりつつある既存コンテンツの多言語化、デジタル化などのご利用に最適です。
書体名についている“PE”が気になった方!さすがです。
“PE”(汎ヨーロッパ)というのは、モリサワが定めた欧文書体の独自セットの名称です。ラテンアルファベットに加えて、キリル文字、ギリシャ文字、およびベトナム語用文字をカバーしていて、151言語に対応しています。
既存の和文書体などと組み合わせていただくことで、より広い言語をサポートした表記に対応が可能です。
また、2018年にリリースされたClarimo UDと同様、主要言語への展開も予定していますので、続報をお待ちください。
6.おわりに
いかがでしたか?
今年度は、字游工房書体もモリサワパスポートに追加されます。
こちらについてもご紹介する予定なので、お楽しみに。
今回ご紹介した新書体は、2020年11月12日からダウンロードを開始しています。
この記事を読んで少しでも気になったそこのあなた!!
いますぐPCを開いてダウンロードしていただけるととても嬉しいです。
また、新書体のリリースを記念して、記事でご紹介した書体をまとめた『新書体見本帳2020』をご希望の皆様にもれなくプレゼントします。
お申込みの締切は2021年1月末で、お一人様1冊までとさせていただきます。詳細はお申込みページをご確認ください。
※キャンペーンは終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。
特設サイトも随時アップデートしておりますので要チェックです。
それではまた後編でお会いしましょう〜(担当:M)