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ゲームのローカライズから読み解く、グローバル志向のブランディング

2022年7月から始まった「Font College Open Campus(フォントカレッジ オープンキャンパス)」。より多くの方にフォントのことを知っていただけるよう、初心者にも分かりやすい内容を盛り込みながら、テーマをデザインやブランディングに広げてお話しするオンラインイベントです。

10月7日(金)に開催された今回の講師は、ゲーム作品のローカライズやパブリッシングを手がける、株式会社クラウディッドレパードエンタテインメント代表取締役の陳 云云(ちん うんうん)氏。「ゲームのローカライズから読み解く、グローバル思考のブランディング」をテーマに、プロダクトやブランドを世界へ向けて発信する取り組みのヒントについてご講演いただきました。

第1部「文字は声に似ている」

第1部では、モリサワ担当者より「文字は声に似ている」と題し、書体デザインの基礎知識について解説しました。使う用途によってどのようなデザインを選んでいけばいいのか、どんな文字がどのような印象を与えるのか。文字を構成するさまざまなパーツをヒントに、文字の雰囲気に関わるポイントをおさらいしました。

さらに今回は、第二部のテーマに合わせて欧文フォントの字形にも着目してみました。
下の図は同じ「A」というアルファベットですが、上についている記号が異なります。これらは「グレイヴ」、「アキュート」、「ウムラウト」などといった名称がついており、各言語のアクセントを表す記号となります。こうした記号は、それぞれの言語がわからないと、そこまで大きな違いはないように感じてしまうかもしれません。


では、日本語を例に挙げてみるとどうでしょう。

これはある店頭で見かけたポップです。日本語を話す人にとっては、句読点の位置がとても気になると思います。これは、日本語フォントではなく繁体字フォント使われていることが原因なのですが、日本語がわからない人はこの違和感を感じないかもしれません。つまり、同じ字形だからといって、その言語に即していない文字が代わりになるかというと、決してそうではないのです。

日本語の引用符である「 」(カギ括弧)は、アメリカ英語では “ ”(ダブルクォーテーション)で代用されることが多いですが、イギリス英語では ‘ ’(シングルクォーテーション)が使われます。さらに他の国では« »(ギュメ)と呼ばれる記号を使う場合も多いですが、高さや向きは国によって異なります。このように、各国で文字の表記にルールがあること、そしてその使われ方が異なるということを理解していないと、違和感のある表現につながってしまうことがあります。

この例文は、日本語で書かれた一文を英語に直訳した例です。「やりがい」「楽しい」のように、この場合のカギ括弧は言葉を強調するために用いられており、日本語を話す人にとっては自然な表現ですよね。しかし英語に翻訳する際には注意が必要です。日本語と同じようにそのまま引用符を付けてしまうと、英語圏の人たちにとっては、変に強調されすぎているような、皮肉めいた表現と捉えられてしまうことがあるそうです。こうした例からわかるように、ローカライズをしていく際には、表現の受け取り方に違いがあるということを認識していく必要があります。

ローカライズをする際に、適切なフォントを用いて、適切な表現ができているかどうかを意識することはとても大切です。すべての記号を把握していなかったとしても、こうした意識が念頭にあるだけで心構えが違ってくるはずです。ぜひお役立てください。


第2部「ゲームのローカライズから読み解く、グローバル志向のブランディング」

第2部は、陳氏による講演です。陳氏は1998年にソニー・コンピュータエンタテインメント(現・ソニー・インタラクティブエンタテインメント)に入社以降、数々のゲームのローカライズ事業を手がけてきました。その経験を活かして2019年に株式会社クラウディッドレパードエンタテインメントを設立。日本で誰もが知っている国民的ロールプレイングゲーム(RPG)をはじめ、200作品以上の製品を自身の出身国である台湾や多くの国に広めてきました。

ゲーム製品のローカライズには、作品の世界観やコンテキスト(文脈)を踏まえ、ローカライズ先の言語や文化に即した最適な形で表現することが求められます。
さらにビジネス上の課題解決や、現地の販売に繋げるプロモーション活動まで、幅広い領域の対応に関するさまざまなヒントを、自身の経験から語っていただきました。

幼少期から尽きることのない、ゲームへの情熱

幼少期に熱中したのはファミコンゲーム。『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』『スーパーマリオブラザーズ』など、日本でも人気のあったゲームにどんどんのめり込んでいったそうです。
一方で、台湾をはじめとする当時のアジア圏に入ってきた日本のゲームは99.9%がいわゆる海賊版と呼ばれる違法ソフトばかり。陳氏がどれほど感銘を受けたゲームであっても、友達は皆日本語がわからず、どれだけ勧めても受け入れてもらえなったのだとか。

「自分が好きなゲームの良さが友達に伝わらないことが本当に悔しかったです。その時から私は、絶対に中国語版のゲームソフトを作ってやる!と思っていたんです」

ソニーに入社すると早速、「中国語版のソフトを作らせてほしい」と部長に直談判。当時、ソフトコンテンツのアジアマーケットは重要視されていなかったため、周囲からもかなり”異端児”扱いされたそうです。予算も人員もないアジアマーケットへの展開は、まさに試練の連続でしたが、翻訳から発売まですべて一人で手掛けることで、ゲームをローカライズするノウハウを一通り学ぶことができ、結果的に陳氏の強みとなっていきました。

ローカライズがいかに重要か

「みなさんはローカライズをどのように考えていますか?今手がけている製品を海外に広めたいと思った時、まず重要になってくるのが、現地語への翻訳だと思います。現地の人々は、その製品についての情報を、その国の言葉で書かれた販促物を見て判断することになりますが、そこに書かれた翻訳が適切で、製品の魅力をわかりやすく表現できていると、好印象を与えることができます。一方で、翻訳が悪ければ、すべて台無しになってしまうでしょう」

実際に、アジア圏から日本に入ってきたお菓子の販促物を見てみましょう。「果肉が餅から吹き出します!」と書かれていますが、実際には、果肉が溢れ出るようなジューシーさを表現しているテキストのはずなのに、せっかくのセールスポイントが正しく伝わっていません。

もはや事故です

また、こちらはあるお店の看板ですが「再度参照してください」とは、何を意味しているのかわかりません。こうした看板は今でも時々見かけますよね。

何を…?

続いては「統合されたフルーツ」「タイ甘酸っぱい豚」と書かれたこちらのメニュー。言いたいことはなんとなくわかるけれど、頼むのに勇気がいるような気がします。
これらは翻訳が適切ではないため商品の良さが正しく伝わっていない例です。細かなニュアンスが消されてしまっていて、とてももったいないですよね。ゲームにおいても、同じような例はたくさんあります。

きっと「フルーツミックス」と「酢豚」なんでしょう。
このように誤訳だと商品の良さや真意が理解されません。

ゲームのローカライズにおける様々な課題

ゲームのローカライズに必要な工程は、翻訳だけではありません。品質管理、UIデザイン、ロゴデザイン、プログラミング、プロモーションのためのWebサイトの制作、そして現地のプロモーターに売り込むための販促資料制作などといった内容すべてを含んでいます。そして、そこには様々な課題があります。

1:翻訳

まず取り掛かるのは翻訳ですが、翻訳家にテキストを渡すだけで済むかというともちろんそうではありません。そのセリフにはどのような意図が込められているのか、一つずつ解釈しながら適切な言葉に訳していく必要があります。
例えば「ここはどこですか?」という一つのセリフにおいても、男性なのか、女性なのか、話し手あるいは聞き手がどれくらいの年齢なのか、どういった文脈で発せられているのかなど、考える要素はたくさんあるのです。
アニメや漫画など、ビジュアルが先に決まっているものはまだ分かりやすいですが、ゲームの翻訳はほとんど想像力の世界。アクションゲームで言うと10万から20万文字、RPGでは200万文字を超えるものもありますが、いずれもオリジナル言語の文脈が損なわれないように、適切な表現にしていく必要があります。

2:QA(品質管理)

ゲーム開発におけるQAとは、実際にゲームをプレイして、バグがないか、仕様書通りに動いているか検査する工程を指すことが多いです。たとえプレイ中に読み飛ばされてしまうような通行人の短いセリフや小さな動きであったとしても、もれなくすべてチェックしていきます。そのゲームが最後まで正しく動作するかを、一つのゲームを何周もプレイすることで確認し、その品質を保証するために膨大な時間を費やします。

「過去に、400問のクイズが実装されているゲームを担当しました。ランダムに表示されるというプログラムだったため、どうしても表示されないクイズもあって、すべて確認し終えるまで何度もプレイを繰り返しました。このように、何度も同じことを繰り返すのがQAです」

3:UIデザイン/プログラミング

日本語を翻訳するときに、たとえば英訳する場合には語数が増えることがほとんどです。1つの技の名前を表示したときに、語数に合わせてフレームのサイズを調整したり、デザインを違和感のないものに調整していく必要があります。
また、日本語のゲームはJIS規格でプログラミングされていることが多いですが、海外ではUnicodeに変換しないといけません。これは、新たに1からゲームを作り直すようなもので、規格を変換したことによってまた新たなバグが発生することもあります。プログラミング作業もなかなか終わりが見えません。

4:素材制作/プロモーション

日本で採用されたUIデザインやプログラミングした素材、プロモーション用のWebサイトなどがきちんと残されていれば、後から修正をかけ、編集し直すことができます。しかし、ローカライズされる過程ではそうした素材が残っていないことがあり、その時々で必要な素材を一から作らなくてはなりません。その際に重要なのは、日本で伝えられてきた格好よさをそのまま伝えられているか、そしてゲームの内容と異なった印象を与えないかということです。

「ゲームのよさを一番知っているのはゲームを作った人です。翻訳家、UIデザイナー、プログラマーなど、それまでにゲームに携わってきた人たちの意見を、マーケティングの参考にすることも重要なことだと考えています」

5:フォント実装

どのフォントを選ぶかも、ゲームの世界観を伝えるために大切なことです。しかし、制作を進めていく中でもしそのフォントにない文字があったら、もう一度フォントを選び直して一からやり直さなくてはいけません。あるいは、プログラマー自らフォントを作らなければならない場合もあります。

このように、品質を損なわないために多くの時間を費やさざるを得ないということが、ゲームのローカライズにおける最も大きな課題といえます。

よいローカライズが世界への扉を開く

もっと時間を省略し効率よく作業を進めることができれば、空いた時間を、ゲームの更なる品質向上のために費やすことができます。そのために、どんな工夫ができるでしょうか。

まず翻訳の段階では、テキストには直接翻訳されないような設定やメッセージを読み取るために、参考資料をできるだけ多く用意すること。これは翻訳作業をスタートする前に行うことが重要で、参考資料が多ければ多いほど、翻訳家はクリエーターの思いを読み取りながら表現を選ぶことができるようになります。

次にQAの段階では、どのようなエラーが出たか、できるだけ具体的に言語化するということ。それぞれの工程で「これはどういうことだろう?」と悩む時間を少しでも減らし、よりスムーズに作業に取り掛かれるようになります。

UIデザインやプログラミング、素材制作においては、日本での制作段階から世界を意識することが重要。日本語のためだけではなく、「すべての言語のためのデザイン」であること。何十カ国でも同じビルを建てるようなイメージで、編集データや素材を管理し、残していくこと。これは、日本で作られた仕様が日本だけでしか使われないというような“もったいない”を無くせるという側面もあります。

そして、製品の良さを伝えるのがプロモーションの役目ですが、良いプロモーションのヒントは、翻訳やQAといったローカライズの過程に隠されています。各担当者はプロダクトの良さを理解しており、彼らとコミュニケーションを取ることで、どうすればお客様に好印象を与えられるのかが見えてきます。
かつて、あるゲームのプロモーションとして行われた朗読劇では、声優が日本語を読み、スクリーンには台湾語が表示されるという演出を行いました。これはプロモーション担当だけでなくローカライズのチームみんなで考えたもので、観客は生の日本語を体感しながら言葉の意味を理解することができました。

最後に、フォントに関してですが、プロジェクトの目的に目を向けて、値段に縛られずに選定する必要があります。無料のフォントを使ってはいけないというわけではありませんが、実装されていない文字があるとそこで一気に手間が増えてしまいます。良いフォントを選ぶことは、結果的に制作時間の削減にも繋がるのです。

このように、ローカライズにまつわる多くの課題は、実は小さな心構えや下準備、ちょっとした工夫で解決できることがほとんど。

「まず、プロジェクトのスタート時からグローバル展開を見据えること。そして制作が進んでいく中では、チーム間での連携を意識して、コミュニケーションがとりやすい雰囲気を作ること。
そして、プロダクトにまつわる知識や情報を他パートとも共有できるように環境を整えていくこと。これは、ゲームに関わらずすべての商品のローカライズに共通するプロセスとなります。ぜひ、良いローカライズで海外へ羽ばたくチャンスを掴んでください」

Q&A

Q1 過去に日本の方言を反映してほしいという依頼を受けたとお聞きしました。その辺りのことを詳しく教えてください。

ー 広島・尾道の方言を翻訳してほしいと言われた時のことですね。そのゲームは、前作では新宿・歌舞伎町が舞台だったのですが、次シリーズでは舞台が尾道になると。そこで、キャラクターたちが話す尾道弁を取り入れて翻訳してほしいと言われました。
初めはどうしようかと悩んだのですが、結果的に「尾道弁のニュアンスが伝わるような方言っぽい言葉」を作ることにしました。中国や韓国、アメリカなど、各地域にそれぞれの方言はたくさんありますが、どれか一つをそのまま当てはめてしまうと、どうしても失われてしまうニュアンスや、違和感が出てしまう可能性があります。日本語で言うと、本来は大阪弁を話すキャラクターが秋田弁を話しているような感覚ですね。キャラクターのイメージをどうにか壊さないように、固有の方言を採用することは避けました。

Q2 特にローカライズが難しい言語というのはありますか?

ー 色々ありますが、例えばロシア語は難しいです。なぜかというと、英語やフランス語などに比べて、翻訳者が少ないからです。また、アラビア語など右から左に読む言語は、プログラムを全部書き換えなければならないという難しさもあります。
他にも、韓国語の「パッチム[1]」やタイ語の声調符号[2]などのように、表示する文字にルールがある場合、日本語よりも語数が増えてしまうのでUIデザイン上で表示するスペースの調整も必要になってきます。言語によってそれぞれの難しさがあるという感じですね。

[1] 韓国語において、子音+母音+子音など特定の構成される音節で最後の音をあらわす子音または子音字母。文字の組み合わせの下に表示されるというルールがある。
[2]意味の区別に用いる音の高低のパターン(声調)を表す記号のこと。タイ語にはこの声調は全部で5つあり、子音とその字類によって使い分けられる。

Q3 文化的な背景によって感じる難しさはありますか?

ー イスラムの禁忌に関してや、ナチスに関する表現など、気をつけなくてはならないことは確かにありますが、そうしたもののノウハウはここ20年程でずいぶんと浸透してきました。さらに最近では、ジェンダー的な目線やLGBTQへの配慮などが重要視される傾向にあります。
キャラクターの言葉遣いや、過度な露出に関してはもちろん、国によっては、女性が顔を見せてはいけない、小学生以下は登場させてはいけない、などOKとNGの線引きもさまざま。映画や漫画など他の業界にも言えますが、ローカライズではこういった国ごとの文化背景を理解しなくてはいけません。

Q4  これまで手がけた200本以上のプロジェクトの中で、「ローカライズがうまくいった」といえるものはありますか?

ー ローカライズがうまくいくプロジェクトの共通点は、資料をいかに多く提供してもらったかという点が大きいです。登場人物の細かな設定やテイストから、担当者がどんな思いで制作してきたか、といったできるだけ細かな情報を提供してもらえると、ローカライズチームは取り掛かりやすいです。
よく日本の皆さんは「こんなに色々送ってしまってすみません」と謙遜されますが、そんなこと考えずにいくらでも提供してください(笑)そうすれば、ローカライズチームもいいものを作りたいという気持ちが高まります。依頼していただく方とローカライズチームが協力し合う関係性が一番だと思っています。

Q5 日本固有の表現の中で、ローカライズをする時に必ず変更が必要になるものはありますか?

ー そうですね、例えば日本語の駄洒落は直訳するだけでは絶対に伝わりません。そういう時は、その駄洒落で伝えたい“音あそび”の部分を伝えられるように、言葉が似ている現地の言葉同士を組み合わせて、駄洒落のようなものを作ることがあります。また、ビジュアル面で言うと、看板などの修正は多いです。
日本での中華街の看板などは、そもそも中国語としておかしい言葉が使われていたりします。そうした場合は正しい言葉に修正するか、逆に日本語に変換する場合もあります。ローカライズする人は「表現者」ではなく、細かなニュアンスを汲み取って置き換える「代弁者」であるべきだと考えています。

Q6 一つのゲーム作品をローカライズするにはどれくらいの時間がかかりますか?

ー テキストの量やQAの所要時間にもよりますが、最低でも5ヶ月から6ヶ月はかかります。そして「日本のコンテンツを売り込むにはまずどこの国をターゲットにしたらいいか」ということもよく聞かれますが、まず中国語から取り掛かるといいでしょう。というのも、中国は日本のコンテンツを最も受け入れやすい国だからです。その次に英語、欧米でいうとイタリア語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、といった流れですね。スペイン語と関連してポルトガル語が使われる南米は、近年では新興市場として注目されています。その後、フィンランドなどの北欧に進んでいくとして……ここまでで大体一年から一年半くらいのペースでしょうか。ちなみに、これまで手がけた中で最も時間がかかったRPGは、3年半かかりました。この時は何度も修正を重ねて、実際に実装された言語の2倍以上の数を翻訳した記憶があります。

Q7 日本語のニュアンスを伝えることと、時間内に伝えることのバランスを取ることも重要かと思います。言語によって、一度に読み切れる文字量は異なってくるのでしょうか?

ー それは確かにありますね。日本語の場合は、ひらがな、カタカナ、漢字の3つを組み合わせることで、表示も比較的短く、文字の意味も区切ってわかりやすく表示させることができますが、他の言語はそうではありません。韓国語や英語は、漢字のような表語文字がないため、日本語に比べて文字数が多くなってしまいます。
そこで、一度に読み切れる量を想定して範囲でテキストを省略することもありますが、あくまでニュアンスが損なわれない程度を保つことが大前提。オリジナルが表現したいニュアンスをしっかり理解していないとこうした作業はできません。

Q8 海外言語のフォントを選定するときに気をつけていることはありますか?

ー 私は今では経営の立場なので、ほとんどの作業は社員に任せていますが、フォントだけは今でも自分で選定しています。選ぶ基準としては、デザインももちろんですが、どれくらいの文字を実装しているのかということですね。プログラマーの手間を最小限にとどめるために、収録文字数やウエイトのバリエーションを重要視しています。その点モリサワフォントは実装されている文字数がとても多いので、ローカライズする時もとても使いやすいです。

Q9 過去の失敗談を教えてください。

開発終了目処の1ヶ月前に、テキストの抜けが発覚したことがありました。それまで60万字の制作が完了していたので、このタイミングであれば大した量ではないだろうと思っていましたが、実際に抜けていた文字数はなんと80万字。さすがに頭が真っ白になって、チームメンバーには年末休暇を返上して作業をしてもらいました。それ以降、各工程において作業の進捗やアセットの管理は適宜共有することを徹底するようになりました。

Q10 これまでの経験で、地域ごとのローカライズの傾向はありますか?

ー プロダクトにもよりますが、アニメチックなキャラクターはアジアの方が受けが良く、リアルな表現のものは欧米の方が反応はいいと言えるかもしれません。とはいえ日本のコンテンツは世界中で認められていますので、どのようなテイストであってもそれぞれの国に根強いファンが多いのが特徴です。大事なのは、いかに狙ったターゲット層に届くプロモーションをするかということだと思います。


ローカライズとは、ただ言葉を置き換えることだけでなく、そのコンテンツが本当に伝えたい世界観を細かなニュアンスまでしっかり伝えること。ローカルユーザーの目線に立ってその地域を理解し、どうしたら伝わるか考え、工夫し続けることで、オリジナルの「格好よさ」が多くの国の人々の心に響いていくのですね。


FONT COLLEGEはこれからも不定期に開催し、noteでレポートを掲載していきます。今後の掲載も、どうぞお楽しみに!



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