段落の字下げを行う理由を知ろう
みなさんは日本語の文章を書くとき、段落の始まりはどのようにしていますか?
大抵の方は「先頭を1字下げにする」と答えるのではないかと思います。
では、なぜこの1字下げを行うのでしょうか?
段落の字下げは執筆者・出版社などの⽅針によってさまざまなルールがあり、表示する媒体(紙・Webなど)によっても変わります。
今回はこの段落の字下げについてご紹介します。
段落とは?
段落の字下げについて語る前に「段落」について整理しておきます。
日本語の文章の構成要素は大きい順に「文章・段落・文・文節・単語」の5種類の区切りがあります。
それぞれが意味を持ち、内容を理解できるようになっており、それらをより理解しやすくし、受け⼿に伝えるのが組版の重要な役割でもあります。
この5種類の区切りは下図のような範囲・意味があります。
①単語 文法上の意味・機能をもった最小の言葉の単位。
②文節 文の構成要素の一つで、文を意味が分かる範囲で区切った最小のまとまり。
③文 1語またはそれ以上の語からなり、句点で終わる一続きの語のまとまり。
④段落 文章にある複数の文を分けた区切り。
⑤文章 複数の文を集め、まとまった内容を表す。1文だけのこともあるが、通常は複数の文から構成される。
この中の1つである「段落」は、上記のように文章にある複数の文を分けた区切りを指します。例えば⽂が新たな内容に移る場合など、段落として分けると読み⼿側は読みやすい⽂章になります。
段落1字下げ
それでは、なぜ段落を1字下げするのでしょうか?
基本的なことですが、段落を分ける場合は行末で改行をします。もし段落先頭の1字下げが無かった場合、段落と段落の間にある行末の余白で「段落が変わった」と読み手側は認識します。しかし、行末ちょうどで文が終わった場合、余白がないことになります。
行末に余白が生まれない場合、書き手は段落を変えたつもりでも、読み手にとっては文章が続いているように見えてしまいます。
そこで、区分をはっきりさせるため段落の先頭を1字下げにします。
1字下げをすることによって行頭に余白が生まれるので、視覚的に段落と段落の区別がしやすくなります。
しかし、現在は紙以外にもさまざまな媒体があります。特にWebの場合は印刷物のように行数やページなどの制限がないので、段落を区別するために空行をいれるなど、いくらでも自由に設定することができます。そのため、Webサイトでは段落の先頭を字下げしないケースが多く見られます。本記事もその一例です。
ちなみに昔の書物では段落先頭の1字下げは行われていなかったようです。日本で活版印刷が普及し始めた明治時代以降に取り入れられ、徐々に広まったのかもしれません。
余談ですが、はるか昔の平安時代では1字下げどころか、改行や句点などもなかったようです。
段落の字下げルール
一般的な日本語組版では、段落先頭の字下げは全角1字下げとします。ただし、段落先頭が括弧類で始まる場合では、全角1字分下げるとその後の文字の並びに影響が生じます。
括弧類は半角分しか幅を取らないため、そのあとに続く文字列の中で半角分の余りを回収するように、文字の並びを調整する必要があります。
(下図の「全角下げ」を見ると、グリッドからズレた状態で文字が並んでいるのがわかります)
その理由から、1字下げではなく半角下げにして、半角分の余りやズレを出さないようにする方法もあります。
また、段落の区切りを強調するなどの理由から、全角+半角分を字下げしている場合もあります。
段落先頭以外の行頭(天付き)
ここで段落先頭以外の、通常の行頭についても少し見てみましょう。
かなや漢字が行頭に来た場合は特に考えることはないのですが、行頭に括弧が配置された場合は「天付き」という処理を行うことがあります。 行頭に配置された括弧のアキを取って、下記(図のオレンジ部分)のように半角扱いにします。
天付きは段落先頭との区別をするだけでなく、アキを詰めることで前行との連続性を保持させるために利用されている方法です。(JIS X 4051:2004より)
ただし、これはあくまで一つのルールで、段落行頭のアキを考慮して活字時代の全角扱いのままにしているケースも多く存在しています。
多言語の字下げ
ちなみに段落先頭の字下げは日本語に限定したものではありません。他の国の言語でも日本語と同じように段落の先頭に字下げを取り入れています。
英語では2段落目以降の段落先頭を字下げ(インデント)することが多いです。他にも段落の区切りをはっきりさせるために、段落との間を空けたりする手法もあります。
中国語の表記に用いる簡体字・繁体字では段落先頭を2字下げにするのがルールです。
字下げに関して今回はここまで。
段落や行頭の字下げは、Webや紙などの各媒体、さらに執筆者・出版社などの方針によってさまざまなルールがあります。しかし、文章全体で統一感を持たせ、読み手の立場に立った表現をすることが、組版にとっては重要です。
ぜひ普段のお仕事でも、文章が読み手にとって読みやすく区切られているかを考え、段落の字下げや段落間の余白を意識してみてください。
それでは次回もお楽しみに。
モリサワでは文字組版の基礎を学びたい方向けに、年2回(春・秋)オンライン講座「文字組版の教室」を開講しています。
詳しい内容や開催日程については上記リンクよりご確認ください。