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組版の要は禁則処理にあり!? 禁則文字・追い込み・追い出しを解説

「絶対に押してはいけないボタン」、「絶対に開けてはいけない箱」など、禁止されると逆に興味が湧いてしまうのは古今東西さまざまな場面で耳にされる話ですよね。

では組版の世界において禁止されていることは一体何か、ご存じでしょうか?
組版の世界で避けるべきことは多々あり、さまざまな組版ルールが存在します。

「句読点を⾏頭に配置してはダメ」など、学校で作⽂を書く時も習いましたよね︕

組版における禁則を処理できているかどうかは、文章の読みやすさに大きく影響します。
InDesignなどアプリケーション側が自動で処理してくれるケースがほとんどですが、さまざまな考えに基づいたルールの配慮や例外処理も考慮しつつ、読みやすい文書の作成ができるように処理の意味や方法を知っておいて損はありません!

ということで、今回は禁則に関する内容として禁則処理の方法やInDesignの設定についてお届けします。


禁則処理

組版における禁則処理とは、文字の並べ方としてやってはいけないこと(禁止事項)を回避する処理を指しています。
そして禁則対象となる文字(禁則文字)の大半は約物が占めています。

約物の種類とアキのルールについてはこちらの記事でご紹介しています。

禁則を回避するための対応=禁則処理は、多くの場合「追い込み」または「追い出し」の2パターンです。順番に見ていきましょう!

禁則処理①追い込み

文中のアキを詰めるなどで、文字を前の行に追い込むことで調整する処理が「追い込み」です。

上図では行頭に句点が配置されるのを避けるために、1行目の読点の後のアキを詰めて句点を追い込むことで調整している「追い込み」を表しています。

禁則処理②追い出し

禁則文字とその前の文字をまとめて次の行に追い出して調整する処理が「追い出し」です。

また、そもそもの前提として日本語の本文組版は、最終行以外の行頭行末を揃えた均等配置(ジャスティフィケーション)が基本です。
前の文字とまとめて次の行に追い出す処理によって、追い出された側の行では文字数が不足します。そのため、不足する文字分は字間を広げることでジャスティフィケーションになるよう調整します。

句点と前の⽂字列「す」を2⾏⽬に追い出したことで、1⾏⽬は字間が広がっている様⼦。

追い込みは基本的に行の中で追い込むためのアキがないと処理できないため、追い出し処理の方が行いやすいケースがあります。
イレギュラーな方法として、行全体の字間を詰めることで追い込み処理をすることも考えられますが、字間の詰め具合によっては可読性に影響する場合もあるので注意が必要です。

禁則位置ごとの種類と処理方法

ここからは行頭・行末それぞれのケースで禁則文字の詳細や、禁則処理を実際に適用したときの状態を見比べていきます。

行頭禁則

行頭禁則文字は、句読点や受け括弧類などが該当します。場合によっては中黒・拗促音・音引きなどは禁則対象文字から除外することもあります。

行頭禁則文字を「追い込み」で処理すると……

括弧類のアキを詰めて、句点を追い込んでいる様⼦。


行頭禁則文字を「追い出し」で処理すると……

「た。」は2行目に、「す。」は3行目に追い出されて、追い出された側の行(1行目と2行目)は字間が広がっている様⼦。

行頭禁則文字に対するその他の処理:ぶら下げ

行頭禁則文字の処理方法としては「ぶら下げ」と呼ばれるものもあります。原則句読点に対して設定し、その名の通りテキストフレームの外側に配置します。

テキストフレームの外側に読点がぶら下がっている様子。

InDesignでは段落パネルのメニューより、ぶら下がり方法を「なし/標準/強制」から選択可能です。また禁則処理セットの画面で、ぶら下げ処理の対象文字を確認することが可能です。

InDesign2023の設定画面例

行末禁則

行末禁則文字は始め括弧類などが該当します。追い込み・追い出しそれぞれで処理すると……

追い込み︓読点のアキを詰めて、始め括弧と「お」を追い込んでいる様⼦。
追い出し︓始め括弧を2⾏⽬に追い出し、1⾏⽬は字間が広がっている様⼦。

分離・分割禁止

分離禁止文字は、連続して並べる場合にアキを入れてはいけない文字です。例えば追い出し処理で字間が広がってしまった場合も、アキを入れません。また、分離禁止文字を行末・行頭にかけて割ってはいけないことを「分割禁止」と呼びます。

分離・分割禁止の例について、それぞれ右側が正しい配置です。
左側のように離れた配置になることは避けましょう︕

リーダーやダーシは、本来2つ重ねて使⽤する⽂字列です。2文字を対とした表現で用いるものとされているため、続けて配置するのが基本です。欧文や連数字も離れて配置すると意味が分かりにくくなってしまうこともあり得るため、禁則文字として定められているんですね。

※スペースの都合など、場合によってはリーダーやダーシなど一部の文字は2行に分割することも許容されています。

InDesignの設定

ここまで禁則処理について色々とお話してきましたが、冒頭に記載しました通り、多くの場合はアプリケーション側が設定などに基づき自動で処理してくれます。そのため、手作業で都度何かの調整をする必要はあまりありません!
ここからは、組版ソフトの代表的な例としてInDesignにおける設定方法をご紹介します。

段落パネル - 禁則調整方式

InDesignでは段落パネルのメニューより、禁則処理の方法を「追い込み優先/追い出し優先/追い出しのみ/調整量を優先」から選択可能です。

InDesign2023の設定画面例

段落パネル - 禁則処理セット

InDesignでは段落パネルにてあらかじめ禁則処理を適用する文字セットとして「弱い禁則/強い禁則/禁則を使用しない」などの選択肢が用意されています。
それぞれ禁則文字が異なるため目的に合わせて選択肢の中から選ぶか、あるいは「設定」より新規のセットを作成し、禁則として処理する対象となる文字の追加や削除も可能です。

InDesign 2023の設定画面例

「禁則対象の文字を削除しても良いの?」と、疑問が浮かんだ方もいるかもしれません。ですが、1行の長さが短い文章や漫画の吹き出しなどを作成するときに禁則文字が多く設定されていると、追い出した時に字間が広がりすぎて読みにくさに繋がることがあります……!
そのためどこまでを禁則対象の文字とするか、個別のルール(ハウスルールなど)を設けているケースは珍しくありません。

ダーシを禁則対象文字にしていないため、ダーシの途中で改行が入っている例

デザインやスペースの都合などでバランスが気になる場合は、禁則文字の見直し以外にも、行長や文字サイズの調整をお試しください。

段落パネル - 文字組みアキ量設定

禁則処理としてアキを詰める際に「数値としてどれだけ詰めることを許容するか」、「詰める箇所の優先順位はどうするか」などの考え方は多数あります。
InDesignでは段落パネル「文字組み」内の「文字組みアキ量設定」で、約物の配置ごとに処理の優先順位を決めることができます。文字組みアキ量設定自体はデフォルトで14種類あり、「基本設定/詳細設定」からカスタマイズも可能です。

ここでは次のような文章を例に「文字組み:行末受け約物全角/半角」を設定している場合のアキ量調整の優先順位をご紹介します。

「行末受け約物全角/半角」の設定では、ひらがなに続く各種文字のアキ量調整は優先度が高い順に「中点類>読点類>終わり括弧類」となっています。

InDesign2023の「⽂字組みアキ量設定︓⾏末受け約物全⾓/半⾓」の内容から抜粋

そのため、文字(今回は半角数字「1」)が増えていくと、優先度が高い順にアキの調整が行われます。


文字組みアキ量設定における優先順位の考え方は例えば……

  • まず中黒類の前後や括弧類で調整した上で句読点を均等に詰める

  • 読点(テンやカンマ)のみを調整対象として句点(マルやピリオド)は常に全角(後の二分アキはそのままにする)などです。

InDesign2023の設定画面例

組版について詳しく学びたい方へ

禁則は組版の要と言われるだけあって、マスターするのは中々手強そうですね……。そしてここまで読んだうえで「禁則や行調整のことがもっと知りたい!」、「InDesignの各設定にどのような違いが?」と思った読者の方へお知らせです!

モリサワでは文字組版の基礎を学びたい方向けに、年2回(春・秋)オンライン講座「文字組版の教室」を開講しています。またInDesignの実演を交えながら行う座学形式の講座「文字組版の教室 InDesign編」も同じく年2回(春・秋)オンライン形式で開講予定です。

講座の概要やメールマガジンのご登録は下記リンクよりご確認ください。開催のお知らせはSNSやメールマガジンなどを予定しています。

引き続き組版にまつわる情報をお届けしていきますので、次回の更新もお楽しみに。

※参考:Requirements for Japanese Text Layout 日本語組版処理の要件(日本語版)