モリサワ新書体2021のご紹介〜見本帳先見せしちゃいます〜
秋にリリースを控えるモリサワ2021年度新書体。今年はリリース前に各書体の特徴紹介と、毎年ユーザー様に向けて配布している新書体見本帳のビジュアル先見せをしていきたいと思います!
ラインナップ紹介
今年新たにリリースされるのは、12ファミリー。
クリーンな骨格に小さめの字面を持つゴシック体「あおとゴシック」や、流れるように文字がつながる筆書体「澄月(ちょうげつ)」、中国の元王朝時代の注釈書と日本の元禄時代の浮世草子から復刻した筆脈を強く意識させる書体「げんろく志安(しあん)」、活版印刷のインクのにじみを再現したオールドスタイルの明朝体「秀英にじみ四号かな」、漢字の学習や教材作成に便利な「UDデジタル教科書体 筆順フォント」(タイプバンク)。
欧文書体には、本格的な本文組版でも利用可能なヒューマニストサンセリフ「Sharoa Pro」や、軽快で遊び心のあるディスプレイ書体「Backflip Pro」が加わります。
字游工房からは、文学文藝作品を組むことを目的に制作された「文游明朝体」をはじめ、同書体と共通の漢字デザインをもつ別かなシリーズ「文麗かな」「蒼穹かな」「勇壮かな」「垂水かな」といった本文組版の可能性を広げるラインナップをリリース。
また、新書体の追加に合わせて「じゅん」「フォーク」「丸フォーク」「解ミン 宙」「解ミン 月」「タカハンド」「毎日新聞明朝」「毎日新聞ゴシック」のAP版、かな書体「秀英四号かな」と「秀英明朝 M」の漢字を組み合わせた「秀英四号かな+」も追加されます。
とはいえ、いっぺんにたくさん書体名を並べられても困ってしまいますよね...。
ここからは、2021年の新書体見本帳のビジュアルとともに各書体の特徴をご紹介していきたいと思います。
1. あおとゴシック
「あおとゴシック」は、シンプルかつクリーンな骨格をもつ、ややモダンなスタイルのゴシック体です。
“ややモダン” の通り、打ち込みや抑揚のないシンプルなストロークを持ちながらも、かなは筆脈を残したデザインをしています。
オンスクリーンでの本文利用を想定して作られた書体で、従来のモダンゴシック体と比べて小さめな字面が、組版に今までとは違う表情を与えます。
欧文はSharoa Proがベースになっており、さらにイタリック体も搭載されています。
EL〜EBの幅広い7ウエイト展開で、様々なシーンで使っていただける仕様を備えたモリサワの新しいゴシック体です。
2. Sharoa Pro
「Sharoa Pro」は、明るくすっきりとしたヒューマニストサンセリフです。
カウンターと呼ばれる文字の中の空間を広めに取っており、字幅とスペーシングもやや広めなので、視認性と判読性に優れた書体です。
イタリックにはカリグラフィックな要素を取り入れるなど、手書きの風合いも感じられます。
10ウエイト、20スタイルの豊富なバリエーション展開で、スモールキャップをはじめOpenType機能で選択できる多くのオルタネイトを搭載しています。本格的な欧文組版や、100言語に対応できる実力派フォント。同じ新書体の「あおとゴシック」との併記も相性抜群です。
3. 澄月
「澄月」は、繊細かつスピード感のある筆遣いの行書風デザイン書体です。
上品なデザインもさることながら、特徴的なのはその機能。文字を入力するだけで、美しい連綿体(つづけ字)の文章に変化します。流れるような自然な手書きのニュアンスを表現できるフォントです。
連綿合字だけではなく、文末のみで入力されるデザインをはじめ、予め用意された豊富な異体字の中から最適なデザインが文脈に応じて自動で入力されるのがすごいところ。また、現代では和食料亭などで見かける「変体仮名」等も搭載しています。
モリサワの技術がギュッと詰まったフォントになっていますので、リリースが開始されましたらぜひお手元で動かしてみてくださいね!
4. げんろく志安
「げんろく志安」は、中国・元王朝の時代に福建地方で出版された注釈書『分類補註李太白詩』より復刻した漢字書体「志安(しあん)」と、元禄時代に出版された浮世草子『世間胸算用』から復刻した和字(かな)書体「げんろく」を組み合わせた、筆の流れを強く意識させる書体です。
長体ぎみで引き締まったふところを持ち、独特なうねる筆脈を感じるデザインは、見出し等に大きく使うとダイナミックに目を引き、文章組に使うと縦組みで美しい流れを生む効果を発揮します。
他にはない躍動感と威厳を演出できる書体です。
5. 秀英にじみ四号かな
「秀英にじみ四号かな」は、大日本印刷の金属活字を復刻したかな書体「秀英四号かな」をベースに、活版印刷による誌面上でのインクのにじみを再現したオールドスタイルの明朝体です。
年々増えている秀英にじみシリーズの新しい仲間として、待ち望んでいた方もいるのでは?
落ち着きのある端正さと、筆の流れや手の動きのニュアンスを兼ね備えた「秀英四号かな」ににじみを加工をして、「秀英にじみ明朝 L」の漢字と欧文を合わせた総合書体です。
にじみ書体ならではの温かみはもちろんのこと、よりクラシックな印象を与えることができる書体です。本文組から見出しまで幅広くお使いいただけます!
6. Backflip Pro
「Backflip Pro」は、骨格の持つ緩やかな曲線と、独特のフレアを持ったエレメントが特徴の軽快で遊び心のあるディスプレイ書体です。
サンセリフ体でありながら、「m」や「N」など一部の文字にセリフ(飾り)がついているのも特徴です。
細いウエイトはオーガニックで優しい雰囲気、太いウエイトではフレアや、一般的な書体とは反対のコントラスト(抑揚)が強調されることで、ユニークで独創的な表情を演出します。
お菓子のパッケージや広告ロゴなど目を引きたい用途に効果的です!
7. UD デジタル教科書体 筆順フォント
学習指導要領に沿った字形「UDデジタル教科書体」を、書き順に沿ったストロークごとに一文字として、文字を書いていく過程を収録した書体です。
書き順に沿って一画ずつバラバラに表示できる「TypeA」と、一画ずつ増やして表示できる「TypeB」の2タイプがあります。書体名に、小学生用は “E” 、中学生用は “J” が付いています。
書き順はもちろん、漢字の組み立てや部首などの学習にも活用できます。
筆順フォントを含めたUDデジタル教科書体関連の情報はこちらの記事にまとまっていますので、ぜひご覧ください。
8. 文游明朝体
「文游明朝体」は、「時代をこえる普遍性を具えた造形美と可読性を標榜する日本の明朝体をつくる」をキーワードに開発された明朝体です。
日本の文字の起源や歴史的背景をもとに、漢字・平仮名・片仮名それぞれが持つ固有の骨格を尊重した伝統的な字形が特徴です。単行本や文庫などの文学文藝作品で、美しく可読性の高い組版を実現します。
ここからは文游明朝体別かなシリーズ4書体を続けてご紹介します!
9. 文游明朝体 文麗かな
「文游明朝体 文麗かな」は、「文游明朝体」の漢字に近代文学を組むことを想定して制作された「文麗かな」を組み合わせた総合書体です。かなの線幅を太くすることで視認性を高めています。やや扁平なデザインは本文組版で純文学の香り漂うクラシカルな雰囲気を演出します。
10. 文游明朝体 蒼穹かな
「文游明朝体 蒼穹かな」は、「文游明朝体」の漢字に海外文学を組むことを目的として開発された「蒼穹かな」を組み合わせた総合書体です。簡潔なエレメントで構成されたデザインは澄み渡る青空をイメージしており、海外文学に多く出現する片仮名がやや大きく設計されていることが特徴です。本文組版で使用することで、文章を読みやすくクリアな印象に仕上げます。
11. 文游明朝体 勇壮かな
「文游明朝体 勇壮かな」は、「文游明朝体」の漢字にプロレタリア文学をイメージして制作された「勇壮かな」を組み合わせた総合書体です。骨っぽく緊張感のある書風に加え、線幅がやや太く設計されていることで視認性の高い書体になっています。本文組版で使用することで、クラシカルかつ力強い印象を与えることができます。
12. 文游明朝体S 垂水かな
「文游明朝体S 垂水かな」は、「文游明朝体」の字面を小さくした「文游明朝体S」の漢字に、縦方向への流れを意識して制作された「垂水かな」を組み合わせた総合書体です。小ぶりでやわらかな線質を持つかなは、鎌倉初期のスタイルを模範として制作されました。縦組みでの本文組版はもちろん見出しとしても利用することで、上品でつややかな雰囲気を演出します。
見本帳では、文游明朝体シリーズの比較もしています!
それぞれ各分野の文藝作品に関連したコンセプトを持つ文游明朝体別かなシリーズ。本文組の表現の幅が広がるファミリーです。
おわりに
いかがでしたか?
表現や組版の幅が広がるバリエーション豊かなラインナップとなっています。
ぜひ、ダウンロードまで楽しみにお待ちください!
今回ご紹介した新書体は、2021年秋のリリースを予定しています。
リリースに合わせて、MORISAWA PASSPORTご契約者の皆様には、今回記事でお見せした見本組や使用サンプルを多数収録した「新書体見本帳」をお届けしますので、どうぞご期待ください(ダイレクトメールを受信されている方のみのお届けとなります)。
今後もnoteでは、新書体のピックアップ記事の更新を予定しています!あなたが気になるあの新書体の裏話が読めるかも...? ぜひこちらもお楽しみに!
特設サイトも随時アップデートしておりますので要チェックです。
それではまた次の記事でお会いしましょう!(担当:Y)