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書体のプロフィール大公開!「プフ」シリーズのデザインの秘密

2022年のリリースから好評いただいている「プフ」シリーズ。2023年も新たに2書体がシリーズに仲間入りします!
今回は担当デザイナーを交えて「プフ」シリーズについて語っていきたいと思います。


ラインナップ紹介

「プフ」シリーズは、統一しすぎない自由な字形と小さめの字面が特徴のデザイン書体ラインナップです。

「プフ ホリデー」「プフ ポッケ」「プフ マーチ」「プフ ピクニック」(2022)

2022年にこちらの4書体をリリースしました!
ゆるくてかわいいポップ体として、リリース当初から色々な場面でお使いいただいています。

「プフ」シリーズとご紹介したとおり、書体名に「プフ」がついているこれらの書体を、ひとつの大きなファミリーとして捉えています。

同一ファミリーのウエイト展開では、同じデザインで太さが変わっていくというのが一般的ですが、プフでは共通するコンセプトを軸に、ウエイトとデザインが変わっていくのが大きな特徴のひとつです。

ウエイト展開の例 / プフの例

それぞれの書体の特徴については、こちらの記事もご覧ください!


「プフ ソワレ」「プフ サワー」(2023)

そして新たにシリーズに仲間入りしたのが、プフ ソワレ」「プフ サワーです。2022年の4書体がゴシック系のデザインであったのに対し、今年はさらにデザインの幅が広がりました。

プフ ソワレ

「プフ ソワレ」はかわいらしさとエレガントさを兼ね備えた明朝体風のデザインで、ゆるくカーブしたうろこや有機的なたわみが特徴的な書体です。

パッケージや書籍の装丁、動画のテロップなど幅広い場面でお使いいただけます。

プフ サワー

「プフ サワー」はすっきりとしたハライを持つハイコントラストなデザインで、横画の始筆のカーブや内角に丸みがあるのが特徴です。

パッケージや書籍の装丁など、レトロな雰囲気を醸し出したいときにぴったりな書体です。


さて、概要はここまでにして……。
豊富なラインナップ展開を見せる「プフ」シリーズがいかにして生まれたのか。その秘密を探るべく、担当デザイナーと企画担当に話を聞いてきました!


プフ誕生の秘密

   写真左:富岡さん(デザイナー)
写真右:梅山さん(企画担当)

■お話しを聞いた人
富岡 清美とみおか きよみ
株式会社モリサワ フォントデザイン部大阪フォントデザイン課に所属。
デジタルフォント開発のオペレーターとして経験を積んだのち、アシスタントとしてタイプデザインに携わる。2018年に書体デザイン部署に配属されタイプデザイナーとしてのキャリアをスタート。

梅山 嘉乃うめやま かの
株式会社モリサワ ブランドコミュニケーション部デザイン企画課に所属。
タイプデザインのディレクターとして、和文・中文書体のデザイン監修やプロジェクトマネージメント、新書体の企画立案、顧客への書体提案のほか、書体のPRなどを担当。

社内コンペから生まれた「垢抜けたポップ体」

ー はじめに、お2人のプフでの役割を教えてください。

富岡 私はプフの担当デザイナーです。モリサワでの社歴は長いのですが、デジタルフォント開発のオペレーターとして経験を積んだのち、長らくアシスタントとしてタイプデザインに携わっていました。タイプデザイナーとしては、プフがデビュー作です!

梅山 私は書体の企画進行として携わっていまして、スケジュール管理やデザイン検討などを富岡さんと一緒に行っていました。企画の最初から担当するのはプフが初めてでした。

ー つまり、お2人ともプフがデビュー作なんですね……!それでは、プフの開発の経緯を教えてください。

梅山 2022年にリリースした「プフ」シリーズ4書体の元となったデザインは、2018年頃に社内で行われた書体コンペから生まれました。
当時、お客さまのニーズに合わせた書体の開発を模索する中で、採用された書体のうちの1つが富岡さんの「プフ」だったんです。

私は社内コンペを運営する部署にいたので、いろんな作品を見ましたが、「この書体めちゃかわいいやん……」というのがプフのファーストインプレッションでした!

当時の提案資料の抜粋

梅山 共通するコンセプトを軸に、ウエイトとデザインが変わってく構想も面白いなと思ったんですよね。新しいファミリーの形というか。

富岡 本格的に書体デザインの開発に関わるのはこれが初めてだったのですが、ファミリー内でデザインを変えたらいけない、というルールがあるわけではないよね、と思って。こんな風に展開していったら面白いかも?!と楽しんで制作していた記憶があります。

ー たしかに、書体からも楽しさが伝わってきます!!制作にあたって、コンセプトはありましたか?

梅山 制作が始まってからは、富岡さんがデザイナー、私が企画のディレクションとして入ることになりました。
当時設定した企画コンセプトは「垢抜けたポップ体」です。ポップ体というと字面が大きくて元気いっぱいなデザインが多い中で、字面の小さい可愛らしいスタイルもあっていいのではないかと考えていました。

デザインをブラッシュアップしていく時にも「みがく」という言葉を使っていて、手書きをベースにしつつもより使いやすい形バランスになるように、ツルツルにしていました(笑)

富岡 磨いてましたね〜。梅山さんも私も、プフで初めて本格的に書体開発に携わるというタイミングだったのもあって、専門用語というよりもお互いの認識が合う言葉でコミュニケーションすることを心がけました!


ウエイト展開とデザインの一貫性

ー チームで制作する上で「認識を合わせる」のは大切ですね……!社内提案当時は3ウエイト構想だったようですが、4ウエイトになったのはなぜですか?

梅山 ウエイト展開が肝になる書体だと思っていたので、制作が始まって最初に検討した項目ですね。

ウエイト展開の変遷

梅山 書体におけるウエイトの設定って、ほんの少しの差で使いやすさが変わってきてしまうんです。なので、よく使われているポップ体はどれくらいのウエイトなのか、プフの書体間でもどれくらい差をつけるのかなどを総合的に検討しました。

結果、もう少し太いのも欲しいよねということになって「プフ マーチ」にあたるウエイトが追加され、今の展開に落ち着きました。

富岡 この資料をみて思い出したんですが、最初はウエイトの頭文字を取って「Happousai」とか「Udon」とか呼んでいましたね(笑)。

梅山 ですね(笑)。あんまり覚えてないですが、太さから連想したワードだったのかな……ここもプフならではの開発のテンションというか。悩む時も楽しんでいました!

ー プフの中でデザインに差をつける際に、意識したことはありますか?

富岡 かなのデザインで差を出すことは意識しました。よく「漢字3割かな7割」などと言ったりしますが、日本語を組むとき、漢字よりもかなの登場割合が多いんですよね。なので、まずはかなのデザインを掴んで、その要素を漢字にも取り入れていく、という感じで進めました。

梅山 たしかに、かなのデザインはいろんなメンバーからアイデアをもらって作り上げていきました。その他にも、隙間のある・なし、角ばっているのか・丸いのかなどのたくさんの要素の組み合わせによって、書体の個性が決まっていきました。

富岡 あとは、デザイン差と同じくらい、シリーズとしての一貫性も大事にしています。統一しすぎない字形はシリーズの特徴の1つで、例えば「はね」のある・なしは厳密にルール化していません。

富岡 はねのある・なしは、もともと私の手書きがベースであることに由来しています。私は左利きでして、左手で書くとはねづらいんです。
その癖が最初にあって、実際デザインに落とし込んでみたらほどよい抜け感といいますか、文字の中に明るさが出たのでデザインとして活かしました。

梅山 手書きベースの自由さを大事にしたいというのがあったので、全体としてルールに縛られないルール、というのを意識していましたね。

2人ともほぼ初めて最初から最後まで関わった書体開発だったので、全てが新鮮で、ウエイト展開も含め型にはまらないデザインになったのではと思います!


受け継がれていく「プフ」シリーズ

ー 2023年リリースの2書体についても、詳しく教えてください!

梅山 2022年の4書体の開発と並行して、「プフ」シリーズとしてデザインを拡張していくにはどうしたらよいかと検討を進めた結果「プフ ソワレ」「プフ サワー」のデザインが生まれました。

梅山 これまでのプフは、手書き要素がやや多めでかわいらしい印象があったので、次は少し大人びた要素もいれたデザインにしたい、というコンセプトがありました。

富岡 そうですね、結果としてうろこなどの明朝体の要素を取り入れたり、すっきりとしたハイコントラストの要素を取り入れたりして、どちらもメリハリのあるデザインになりました。

富岡 プフ “らしさ” を受け継ぐという点はちゃんと意識していて、統一しすぎない字形をはじめ、例えばカーブのたわみ具合で手書き感を意識したり、かっちり見えてしまうところも重心をさげることでプフらしい、可愛らしさを残すようにしています。

梅山 シリーズ通じて従属欧文もこだわって作っていますよね。かなや漢字とマッチするように、ソワレでは重心を低くしたり、サワーは先のすぼまるシュッとした要素を取り入れているので、ぜひ欧文も使ってみて欲しいです!


書体のプロフィール大公開

ー「プフ」シリーズには、各書体に人格があるらしい……。そんな噂をききつけましたが、真相はいかに?!

梅山 ついにお披露目する時が来ましたね……! お互いに伝わるコミュニケーションというのを心がけた結果、プフの関係者の間ではこのようなプロフィールが出来上がりました。

妄想が広がるプロフィール帳

富岡 どの書体もかわいい我が子なので、どこから語るか迷いますね……。ウエイト順に、「プフ ホリデー」からご紹介できればと思います!


プフ ホリデー

ー かわいいヤギさんがトレードマーク!チャームポイントの「右脚」というのはどういうことでしょうか?

富岡 ホリデーは「口」や「目」などの右下の縦画が、横画よりも出ているんです。それを右脚と表現してみました!
自分の手書き文字をベースにしていたので、私の手書きの癖でもあるかもしれません。

梅山 生息地が「図書館の児童書コーナー」というのもいいですよね。

富岡 フィンランド語の「puhua/話す」がシリーズ名の由来なんですが、小さな子どもが無邪気に話しかけてくるような、というイメージがあったんです。だから、こんなところにいそうだな、という場所を生息地に設定しています!


プフ ポッケ

ー「なで肩」というのも気になるワードです。

富岡 これは、ぱっと見は角ゴシック系だけど、口・かまえの右肩は丸みのあるカーブになっていることを指しています。実は「プフ サワー」でも横画の角を丸めるという、なで肩要素を取り入れているのでよく見てみてくださいね。

梅山 その他にも、始筆から終筆に向かってゆるやかにすぼまっていたり、はらいや点の少し寸足らずなところが特徴です!

富岡 なで肩要素によって、角が取れた、力の入りすぎない可愛らしさを表現したいときなどに、ぴったりな書体になったなと思います。


プフ マーチ

ー「もち肌」はなんとなくわかるような……!具体的にはどういうことでしょうか?

梅山 エレメントの要素がジェリービーンズのもっちりした感じに見えてきて……。図形的になりすぎてしまわないように、手書き感を意識してデザインしてもらっていました。

富岡 そうですね、丸くて太い書体は角の丸さをみせつつアキを確保して作るのが難しくて、例えば口や日などの左上部分は、いろいろなバリエーションを駆使しています。いかにもっちり美味しそうに見せるか、試行錯誤していましたね。

梅山 ちなみに、四国あたりの道の駅というのも、うどんなどのもちもちしたお土産的な物を想像できるので気に入ってます(笑)


プフ ピクニック

ー 続いてこちら。ピクニックとオニギリ、最高の組み合わせですね。

富岡 やはりピクニックといえば、ですからね!チャームポイントの「澄んだ瞳」は、書体の黒みのコントラストを指しています。

梅山 濃度検査というチェック項目があるくらい、書体を作る上で黒みの調整は大切な部分なのですが、太い書体は特にこの調整が難しいんです。
ピクニックを作成していて、黒みを考えると必然的に白い部分のバランスを考えることになるんだな、と気づきがありました。

画数が少ない字も多い字も、同じ濃度に見えるように調整しています

富岡 そんなことを考えながら改めて見ていると「麗」の字が、瞳に見えてきました……。いかに太くてかわいい書体にできるかこだわったので、いろいろなところで使われているところを見ると嬉しいです!


プフ ソワレ

ー「語りすぎないしっぽ」は、猫のキャラクターと関係あるのでしょうか??

富岡 連想はしましたね(笑)。ソワレのはらいや点はカールしすぎず、シャープに短くスッとした表現になるように心がけていました。そういう意味で、「語りすぎないしっぽ」としています。

梅山 あと、生息地の「青春」という文字には、しっぽ含めてソワレの魅力が詰まっているんです!

富岡 口などの縦画は微かに樽形にしていることや、「春」の右はらいのように細→太の関係で終わるものは終筆をアーチ状にしているというのもソワレの特徴のひとつで、それらがうまく現れている2文字ですね。

梅山 例えば少女漫画のようなキラキラした場面で使っていただけると嬉しいです!


プフ サワー

ーいよいよ今回最後の書体です!「姿勢のよさ」というのは、サワーの整った印象とマッチしていますね。

富岡 プフは字面を統一しすぎないというコンセプトですが、サワーはよりすっきりとした印象を与えるために、横のラインを揃えています。ラインが揃うと姿勢よく見えませんか?

梅山 あとは、はらいをシュッとすぼめているのも特徴ですね。ここも姿勢のよさに通じている気がします!

富岡 ゴシックでも明朝でもない、いろんな場面で使っていただけるデザインになっていると思うので、ぜひダウンロードしてみてくださいね!


オリジナルキャラクターたち

ー プロフィールにしれっと載せていましたが、キャラクターたち可愛いですね……!

富岡 ありがとうございます!ここまでフォーカスすることはなかったので嬉しいです(笑)実はコンペ応募時にはもう構想があって。中黒がキャラクターだったらかわいいやん?というのが全てのはじまりでした。

梅山 かわいいですよね〜〜。書体としての個性の一環で採用していて、このキャラクターが絵文字として使えるんです!!
まだ街なかでは出会ったことがないですが、ぜひ使ってみて欲しいです。
呼び出し方については、こちらのサポートページもご覧ください。


梅山 改めて振り返ってみて思うのは、生息地などの設定はあくまでチーム内での認識合わせのためにあったということですね。

富岡 そうですね、そこが一番大事なところだと思います。タイプデザインの経験が浅いメンバーが多いチームだったので、デザインの難しい言葉で語りきれないところを、イメージしやすいワードで理解していきました。
こういう性格のこの文字だったらこういう形だよねって楽しみつつ、みんなの中でプフを育てていった感覚です。

ー ありがとうございます。このメンバーだからこそ、今のプフが生まれたのですね。最後にユーザーの皆さまに一言お願いします!

富岡 リリースしてから1年経ちましたが、いろいろな所で見かけるようになりました!今年リリースの2書体も、ぜひ使ってもらえたらと思います!

梅山 そうですね。プフは我が子なので、こんなところで活躍してる…!って見かけると嬉しいです。これからもいろんな性格のプフを育てていけたらいいなと思っているので、引き続きお楽しみに!



最後までお読みいただきありがとうございました!
「プフ」シリーズの魅力が伝わっていれば嬉しいです♡

2023年新書体は10月18日(水)にリリースしていますので、ぜひアクティベートして使ってみてくださいね。今後も、新書体記事をアップしていくのでお楽しみに!

よかったら「スキ」もお願いします!(担当:M)