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ついにAIの時代が来た!Adobe製品の生成AI関連機能まとめ

ビビディバビディブー、ピリカピリララ、エクスペクト・パトローナム……
いつの時代も人間は「魔法」に憧れを抱いてきました。

そして現在、さながら魔法のごとく「唱えた言葉が形になって目の前に現れる」時代がついにやってきました!
ただし使うのは魔法の杖ではなく、Adobe Creative Cloudです。

今回の「制作まわりのお役立ち情報」では、今話題のAdobe Fireflyをはじめとした、Adobe製品における生成AI関連機能まとめ情報をお送りします。


Adobe Fireflyとは

Adobe Fireflyとは「生成AI」の一種です。
生成AIとは入力された言葉(プロンプト)からコンテンツを生成する人工知能で、ジェネレーティブAIとも呼ばれます。

ジェネレーティブAIは、クリエイターとコンピューターの自然な会話を可能にします。つまりプロのための最先端のクリエイティブアプリケーションワークフローと、自分の言葉やジェスチャーといったシンプルな操作方法が組み合わさることで、これまでにないクリエイティブ表現が可能になる新しい時代が訪れたことを意味します。

https://blog.adobe.com/jp/publish/2023/04/18/cc-video-reimagining-video-audio-adobe-firefly

Adobe Fireflyは、Adobe IDを持っている人なら誰でもサイトにアクセスして画像を生成することができます。(2023年11月現在)

Adobe Fireflyの公式Webページ(2023年11月現在)

生成モデルも進化しており、さらにディテールが精細に、よりリアルに近い画像を生成できるようになってきています。

左:生成モデル「Image model 1」、右:現在最新の生成モデル「Image model 2 (Beta)」

どちらも「泥だらけになって遊んでいるゴールデンレトリバー」と指定して出た画像ですが、色味や毛並み、水しぶき(泥しぶき?)の表現に注目すると、最新の生成モデルのほうがよりリアルですよね!

その他にも、カメラのf値指定や、複数の画像を組み合わせて新たな画像を生成するマッチング機能も備わっています。

Adobe Senseiっていうのもあったよね……?

Adobe SenseiもAIではありますが、正確には「AI+機械学習」であり、自動反復などで作業の効率化を行うことを得意としています。Adobe Photoshopの「ニューラルフィルター」、Adobe After Effectsの「コンテンツに応じた塗りつぶし」などで活躍しています。

一方Adobe Fireflyの生成AIは、テキスト、画像、ビデオ、デジタルエクスペリエンスなどを新しく独自に創り出すAIの一種です。

Adobe Senseiの次の段階が「生成AI」という位置づけのようです。

AI学習元の権利も安心

「AI生成は学習元の権利が不安……!」と思う方もいるかもしれませんが、ご安心ください。
Adobe Fireflyが生成するコンテンツは、Adobe Stock画像、オープンライセンス画像、著作権が失効したパブリックドメインコンテンツが学習元になっていて、安全に商業利用できるものを生成するよう設計されています。

また生成結果についても配慮がされていて、特定の商品名やキャラクター名などをプロンプトに入れても実物が出てこないよう調整されています。
老若男女など多様性を反映した生成がされるようになっているようです。

プロンプト「音楽フェス会場に集まる大勢の人々」

商用利用

Adobe Fireflyで生成されたコンテンツは商用利用可能です。
お仕事の内容にあわせて、想定するシチュエーションや人物像が載っている画像を生成することができます。

ただし、ロシア、ベラルーシ、中国では、Adobe Firefly は利用できません。さらに、アドビのサービスおよび製品は、キューバ、イラン、北朝鮮、シリア、クリミア、いわゆるドネツクおよびルガンスク人民共和国では使用できません。

https://helpx.adobe.com/jp/firefly/faq.html#about-firefly

生成クレジット

Adobe Fireflyを使用した画像生成を行うごとに「生成クレジット」が消費されます。当初は今月(2023年11月)より生成クレジットの制限が開始されるはずでしたが、2024年1月以降に延期と発表されました。
2023年11月現在、Creative Cloud製品およびAcrobat Proの有償プランを契約しているユーザーは無制限で生成が可能です。

詳細や続報については、アドビ社公式情報をお待ちください。

この生成AIは、各Adobe製品の新バージョンにおいて機能に組み込まれているんです……!
それぞれご紹介します。

Photoshop2024(v25.1)

Photoshop2024での新機能「生成拡張」「生成塗りつぶし」がまさに生成AIの活躍の場です!

生成拡張

例えば、制作素材として写真をもらっても「バナーにするには横幅が足りない!」なんてことがありますよね。

もう少し右側に余白が欲しいな……という場合

生成拡張を使用することで、足りない背景などを自動で作り出すことができます。

切り抜きツールで、伸ばしたい方向にフレームを伸ばすと生成プロンプトの入力ウインドウが出てきます。

生成プロンプトの入力ウインドウが下に現れます

空欄のまま「生成」を押すと、画像の内容を元に生成が行われます。

山や樹木が生成されました!

1回につき3パターンの生成案を出してくれるので、より自分の意図にあったものを選んで適用することができます。

山と砂浜の状態を見て、今回は一番右を選びました。

今までも「コンテンツに応じた塗りつぶし」で足りない背景をある程度埋めることはできたものの、よりリアルに、コピペではない背景を作りだすことが可能です!

Photoshop2023「コンテンツに応じた塗りつぶし」を使用した例

生成塗りつぶし

「ここを少し変えたい」「この要素を足したい」といった細かい要望をかなえてくれるのがこの「生成塗りつぶし」。
例えば、人の服部分を選択ツールでぐるっと囲って「生成塗りつぶし」を選択することで、簡単に着ているものを変化させることができます。
空にもいい感じの飛行機を出現させることだってできちゃいます。生成結果も自然ですよね……!

プロンプト「黒い長袖、花柄のスカート」「ジェット機」

画像を生成するテキスト(プロンプト)は多言語対応で、もちろん日本語での指定が可能です。
プロンプトごとにレイヤーが残るので、あとからの調整も簡単に行えます。

筆者も逐一感動しながらプロンプトをいろいろ変えて試していたのですが、1つぶつかった壁として「日本にある姿を想像しながら画像生成しても、油断するとほんのり異国情緒が漂ってしまう」ことがありました。

プロンプト「大きい仏像」で、ピンク色の細身な仏像が出現

例えば上のサンプル画像では、本当は牛久大仏のように巨大な仏像を建立したかったのですが……プロンプトがざっくりしすぎていて、なんとも異国情緒を感じる佇まいの仏像が出現してしまいました。
「日本風の」など、より細かい指定をすることで生成結果が変わるので、生成結果が想像と違ったら、出力しなおしてくださいね。
今の時代はグローバルな視点が大事……とAdobe Fireflyに気づかされました。

ちなみに、Web版のPhotoshopでも生成塗りつぶしが使用できます
デスクトップ版のPhotoshopが使えない環境でも、制作や修正をすることが可能です。

他にもPhotoshop2024では、削除ツールがより便利になるなどアップデートがなされました。
詳しくはアドビ社公式サイトをご覧ください。

余談ですが、このnoteのトップ画像もAdobe Fireflyで画像を作成し、Photoshopの生成拡張で背景を広げて文字を入れました。

Adobe Fireflyで生成した右上の候補を採用し……
Photoshopの生成拡張で背景を左側に伸ばし、文字などを追加しました!


Illustrator 2024(v28.0)

IllustratorでもAdobe Fireflyによる生成AIを活用した新機能が追加されています。

テキストからベクター生成

簡単なプロンプト(AI に与える説明用のテキスト)をいくつか入力するだけで、ベクターグラフィックを生成できます。
この機能を使用すれば「自分ではイラストが描けない…」という方でも、簡単にイラストを作成することができます。ベクターデータなので、あとからパスをいじったり、一部だけカラーを変えるなどの編集も思いのままです!

作成手順もとても簡単です。
新しく追加された「テキストからベクター生成」パネルの「プロンプト」に作成したいグラフィックの説明を入力し、「生成」ボタンを押すだけ!

プロパティパネルなどからも操作が可能です

3つのバリエーションが生成されるので、イメージに近いものを選択することができます。気に入らない場合は再度生成ボタンを押し、別のバリエーションを試してみましょう!
プロンプトは3~8語で、説明、人物、カラー、シーンなどを含め、シンプルで直接的な言葉を使うとよいそうです。期待した生成結果が得られない場合、プロンプトを工夫してみるとよいかもしれません。
詳しくは「効果的なプロンプトの作成方法」をご参照ください。

また、自分で用意した画像などを参照してそのテイストを取り入れた生成を行うこともできます。
統一感のあるグラフィックを作りたい場合や、企業のマーケティングなどブランドガイドラインを保持した生成を行いたい場合にとても便利ですね。

今回は「種類」「被写体」として生成しましたが、他にも種類が用意されています。生成したいデータに合わせて選択してください。

なお「テキストからベクター生成」の機能は現在Beta版です。
正式版ではさらに機能強化されるのではないでしょうか……期待が高まりますね!
機能の詳細はこちらをご確認ください。

テキストからアートワークを再配色

テキストで簡単なテーマの説明を入力するだけで、イメージに近いカラーパターンを自動で生成し、アートワークの色合いを変換してくれます。

オブジェクトを選択し、編集メニュー>カラーを編集>生成再配色をクリックすることで、操作画面を出すことができます。(オブジェクトを選択した状態で表示されるコンテキストタスクバーからも操作が可能です)
「プロンプト」に生成したい配色の説明を入力し、「生成」ボタンをクリックするといくつかのバリエーションを作成してくれますので、気に入ったものを選択しましょう。

なお、「効果的なプロンプトの書き方が分からない」「インスピレーションが欲しい」などとお悩みの方は、Adobe Firefly ギャラリーを見てみてはいかがでしょうか。さまざまなプロンプトの書き方や、スタイルに関する新しいアイデアを得ることができるかもしれません。
ぜひいろいろ試してみてくださいね!

「生成再配色」の詳細はこちらをご確認ください。


便利な時代がやってきましたね。今回ご紹介した生成AI関連の機能はBeta版も多く、今後さらなる開発が進んでいくことが期待されます。

各製品の対象スペックなどについては、以下もあわせてご確認ください。Photoshop必要システム構成 / Illustrator必要システム構成


モリサワでは、企業のAdobe製品導入に関するご相談を承っています。
(実は、Adobe製品販売店の中でも最上位の「プラチナリセラー」なんです……!)
ぜひお気軽にご相談ください。

モリサワnoteでは、今後も「制作まわり」の一環としてAdobe製品に関する情報も引き続きお届けします。

それではまた次回!