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事例から学ぶ、真に愛される「ブランドの創り方」 〜ブランディングプロジェクトを成功に導く3大要素とは?〜

フォントやデザイン、ブランディングをテーマに開催しているモリサワのオンラインイベント「Font College Open Campus」、2023年1月24日(火)に行われた5限目は、リブランディング支援を主体に、長く愛されるブランド戦略を手がける株式会社YRK and(ワイアールケーアンド)より、ブランドクリエイティブディレクター 山下 亮氏を講師にお迎えし、真に愛されるブランドになるために必要な「社員たちのキモチの意識合わせ」についてお話しいただきました。

株式会社YRK and ブランドクリエイティブディレクター 山下 亮 氏

YRK andの歴史は長く、明治29年に「株式会社ヤラカス舘」として創業し、2023年で127年目を迎えます。反物を売り込むための引札(現代のチラシ・ビラ)や漆塗りの商標登録看板、レッテル(ロゴマーク)の制作といった、商いを差別化するための仕事からスタートしました。その後、印刷業、セールスプロモーションマーケティング、デジタルプロモーションなどを経て、現在は事業コンサルティングに力を入れています。
創業当時から大切にしてきた「自分たちのアイデンティティを考えていく」ことをベースに、「伝えていくこと、価値を考えていくこと」に丁寧に取り組んできました。現在の社名になったのは2018年で、社名ロゴは山下氏が手掛けたものです。山下氏は2013年に入社し、アートディレクターを経てブランドクリエイティブディレクターに就任。「クリエイティブが、目に見える領域に止まらず、ブランドのさまざまな側面で力になれるのでは」と日々チャレンジを続けています。

「自分自身がモットーにしているのは、触れてみる、味わってみるということです。生活者視点でどう感じるか、という感覚はいつも大切にしています。その実感がプロジェクトへのヒントとなり、立ち上げ時の重要なポイントになると思っています。日々新しい発見をしながら色々なクライアントと関わっています」と語る山下氏。ブランディングの根本を読み解き、過去の事例を交えながら、愛されるブランドづくりのヒントを教えてくれました。

1  ”ブランディング”の大切さ

ブランド(brand)とは、牛の脇腹につけた焼印(burned)が語源とされ、広大な牧羊地で他の牛と混ざった時の識別記号だったと言われています。今でも、ブランドとはマークや名称そのものを差すものだと誤解されがちですが、厳密に言えばそれは誤り。現代では、企業全体のイメージや世界観、企業活動や顧客が得た体験、感覚全てを含むものとして位置付けられています。

例えば、ある企業がブランド価値の磨き直しをすることになった時、あえて二つに括るとすれば「経営戦略」と「マーケティング戦略」に分けることができます。経営戦略とは、リクルーティングや働き方改革、IRなどといった社内の環境を整備することを指し、反対にマーケティング戦略は、商品価値や流通、プロモーションといった、顧客に向けてのコンテンツを考えることを指しています。山下氏は、これら二つを分断せず繋いでいくために、真ん中に「ブランド戦略」があると考えます。

「プロモーションに力を入れ、瞬発力を持って収益を上げていくことも重要ですが、一方で、社内に寄与するものでないとどうしてもその効果は一過性のものになってしまいます。まずはインナーのブランディングから始まり、そこからアウターのブランディングを強化していくこと。社内のプロジェクトメンバーたちがどれほど魅力を感じていて、可能性を見出せているかが伴っていけばいくほど、社内全体の意識が高まり、営業力、採用力、組織力が底上げされていきます。この大きな連鎖は、ブランディングにしかなし得ない役割だと思います」

ブランディングとは、自分達らしさやアイデンティティを作り上げていく行為です。これが明確に整ってはじめて、自分達の強みや競合との分析が進められ、いわゆるSTP分析[1]、4P[2]などといった戦略的思考へと発展させることができます。つまり、ブランディングとは、企業がずっと継続的に施工していくものであり、さまざまな戦略や思考の手前にあるべきものなのです。

[1] セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(狙う市場の決定)、ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)の英単語の頭文字をとった分析法。市場や顧客を分析し戦略を決定するために用いられる。
[2] 商品戦略(Product)、価格戦略(Price)、流通戦略(Place)、Promotion(販促戦略)の頭文字をとったフレームワーク。企業が商品やサービスを効果的に販売する際に、4つを総合的に捉えることで具体的なマーケティング戦略を打ち出すことができる。

以下の図は、「ブランディング」が企業経営にもたらす影響範囲や貢献度の変遷(歴史)を可視化したものです。十数年前、ブランディングは広告宣伝やPRの延長上として扱われ、競合との相対比較として差別化させるためのシンボル化程度に活用されていました。
バブル崩壊前に起こった「CIブーム」がそれに当たります。コーポレートアイデンティティの具現化として社名や企業ロゴを一新させる企業が、当時一気に増えました。しかし、見た目の統一性ばかりこだわり、インナーブランディングを怠った結果、企業価値を高めるという本質的な体質改善を果たせなかった企業も少なくありません。
そこから時代は大きく変わり、「ブランディング」自体も、時代と共に進化を続けています。事業そのものを変革させて企業を成長軌道に乗せることを前提とし、組織の内側から体質改善させることまでを領域と捉えるのが、「新時代のブランディング(ブランディング5.0)」であると、山下氏は語ります。

ブランディングは、商品の枠組みや形だけでなく、収益性アップへ寄与するという点で「経営戦略の一丁目一番地である」といえるでしょう。


2  愛されるブランドに必要なこと

では、どうすればブランディングが成功するのでしょう。
山下氏は、ブランディングに最も必要なものは「熱量」でしかないと断言します。明確な分析やフレームワークの多用はもちろん重要ですが、どれだけロジカルに考えていったとしても、最終的にポイントとなるのは、「どこまで人の心に刺さり生き続けるか」ということ。熱量がないブランディングは最終的には成立しなくなることが多いと言います。

例えばApple社を例に挙げてみましょう。Appleといえばあのシンプルでデザイン性の高いプロダクトを思い浮かべる人も多いと思いますが、その中心にスティーブ・ジョブズという存在があることは明白です。「もっとシンプルにできるはず」という思考や、「ボタンを無くしていく」というような、一見突拍子もないけれど決して揺るがない発想の数々が多くのプロダクトの開発を実現へと導き、彼らの精神に共感したたくさんの人がAppleのファンになっていきました。そしてその精神は、今では製品のみならず、お店の外観やディスプレイ、パッケージなどにも根付いており、世界中の人がさまざまなシーンで「Appleらしさ」というものを体感することができます。Appleのブランド力の根底にあるものは、ジョブズ自身が元から持っていた「ワクワクする世界」を体現しようとする精神であり、あのリンゴのシンボルマークには彼の熱量が宿っているのです。

そのブランド独自のアイデンティティ、つまりブランドがどういった存在であるか、という点は一人の人間に置き換えればその人の人格のようなもの。そのブランドの信念や、何をしたいかというコアの部分が明確であれば、そこからどうしていくべきか、何を作るか、といった発想の転換にも一貫性が生まれていきます。また、信念や熱量をブランドの「心」とすると、ブランドロゴ、セールスコピー、コーポレートフォント、テーマカラーはブランドの「声」であり、「佇まい」であり、「風格」とも言え、こうした要素もぶれないブランド作りには不可欠です。まさにブランディングとは、一人の人間を形作っていくようなものと言えます。

Appleは、ジョブズの精神を製品、商品、サービス、販促物、広告といったあらゆるクリエイティブに展開させ、やがて、ユニフォームや社員教育のスタンスなどにも独自のブランディングマニュアルを定めました。そして社員全体がジョブズに共感することでモチベーションを上げ、会社が一つの大きな船として、同じ方向に向かったことで、業績をどんどん上げています。ブランドの信念を共に体現する、社員の意識をそろえるということが強靭に確立されているのです。

「人間が“嬉しい”、“楽しい”といった感情を持っているように、ブランド自体にも”この人にいいと思ってもらいたい”思いの強さを込めることが、愛されるブランドを作り上げていきます。そして、より長く愛されるブランドへ成長していくには、社員の“キモチの意識合わせ”が重要です。ジョブズのような一人の強い思いは、ブランドの起点にはなりますが、ジョブズに共感する多くの船員たちがいなければ長く愛されるブランドにはなりません」


3  現場で見えてきた、3大要素を紐解く -YRK and事例より-

山下氏は、まず初めに自分自身がどれだけブランド(あるいは今から始めようとすること)に対して誇りを持っているか、つまり当事者意識を持てているかということが何よりも重要だと考えます。今回は山下氏が取り組んできた3社の事例を振り返りながら、「キモチ芽生える3メソッド」として、みんなで意識を共有する方法についてご紹介いただきました。

メソッド1:SESSION(セッション)  -1wayより2way

セッションとは、相互コミュニケーションを指しますが、このメソッドの最大の目的は「思わず乗っかりたくなる空間を作る」ということ。思ってもいなかったインスピレーションが浮かび、感情が揺れ動くような経験をすることで、その場にいる人たちの参加意欲が次第に高まっていくことがあります。

うなぎパイで有名な「春華堂」のケースを見ていきましょう。ある時、新社屋に併設されることになった新店舗のオープンに向けて、リブランディングをすることになりました。うなぎパイに続く新しい柱を立ち上げたいという思いの元、結成されたプロジェクトチームは社長も含めて全部で20名。山下氏は、2週間に1度のペースでディスカッションを重ねていくことを提案し、チーム全員で「春華堂らしさとは何か」を炙り出すためのワークショップを繰り返し行いました。

ディスカッションの内容は実にさまざま。うなぎパイ開発当時から受け継がれている「家族の団欒やコミュニケーションを生み出すお菓子であってほしい」という創業者の思いに着目し、コミュニケーションツールとしてのお菓子のあり方を探ったり、実際にパッケージサンプルを机に並べながら競合との比較検証をしたり、全員が楽しんで参加することを念頭に置きながら、一つひとつあらゆる側面から言葉出しが行われていきました。
「毎回議論が終わった時はみんなが少し前のめりになる感覚するがあった」と山下氏。ブランドらしさを突き詰めていくうちに、急遽ある商品の名称が変わったり、パイの形状を職人と一緒に考えるというような一幕があったりと、当初の予定にはなかった方向へと展開していったと言います。

こうしたディスカッションを経て、結果的に多くのプロジェクトが出来上がりました。ブランドの世界観を伝えるブランドブックや、リニューアルされたパッケージ、新しい商品の並べ方といった店づくりに至るまで、チームが一丸となって取り組んだ多くのアイデアは、新店舗だけでなく既存の他店舗へも展開されました。そして、このリブランディングを受けて、新たに定義された「春華堂らしさ」をより広く深く浸透させていくために、社内での「タスクフォース会議」は現在も行われているそうです。

また、このリブランディングは、後に“聖域”とも言えるうなぎパイシリーズのパッケージ缶のリニューアルにまで発展しました。これまで、うなぎパイはなかなかリニューアルに着手されてこなかった商品でしたが、リブランディングへの共感を得られたことで発展したプロジェクトです。
新パッケージは、缶の中でパイの破損を防ぐためのトレーの仕切りを外すと、浜松の魅力が詰まったオリジナルのかるたになっています。お土産としてうなぎパイを食べた後、さらに会話に華を咲かすことを願って「浜松華かるた」と名付けられたかるたは、創業当時の思いを現代へと受け継ぎ、商品がもたらすコミュニケーションを新たな形へと昇華させています。

「こうした流れは、初めにクライアントからいただいたオーダーをそのまま返すだけでは成立していません。オーダー通りでなかったとしても、みんなが熱量を持って意見を寄せ合うことで、結果的にポジティブに変化や相乗効果を生み出します。このプロジェクトでは、本当に音楽のセッションのように、みんなで楽器を奏でて音を重ねていくような感覚で、僕自身も気がつかなかった発見がありました」

このケースから分かるように、セッションにおいて大切なポイントは、相手の想像を超えるストーリーメイクや、そしてあらゆる立場の人の会話を引き出すためのファシリテーションが重要になってきます。これは、たとえばデザインラフやスケッチといった制作中に発生するアウトプットを共有することで引き出しやすくなります。そして何よりも、やっている自身が一番ワクワク取り組むこと。その気持ちは伝染し、チーム全体のモチベーションを高めます。

メソッド2:VISIBLE(ビジブル) -フラットな環境づくり

2つ目のポイントは、「ビジブルブランディング」という手法です。例えば会議中に出てきた意見を、そのまま即席でホワイトボードに図式化、イラスト化していくことを指しており、思考の変遷や個々人の思いを可視化するために用いられます。いろいろな人が同じイメージを共有しやすいという点が最大のメリットで、あらゆる立場の人が混在していても、誰でもシンプルに意見を言いやすくなる効果があります。このメソッドの一番の目的は、「思わず本音でしゃべってしまう」という点です。


次の事例では、一人の熱意が部署というセクションを横断して浸透していったという例を見ていきましょう。

スポーツメーカーのミズノが展開するキッズブランド「MIZUNO KIDS」は、子どもたちが“遊ぶ”という行為から体づくりへコミットすることをテーマに、シューズやアパレル製品、参加型の様々なイベントを通じてチャレンジを重ねています。ここでは日々取り組んでいるブランドの課題や、新商品へのアイデア、イベントの企画などを話し合う時にビジブルブランディングの手法を取り入れてられています。
会議中は参加者全員が立ってホワイトボードに向かいながらミーティングを重ね、アイデアを書き連ねています。ビジュアルに残すことによって、一人ずつの意見を言いやすい空間となり、ブランドとしてのやるべきことを、精度を上げてかつタイムラグなく成立させていくことができています。さらにここで記したビジュアルはそのまま企画のラフデザインになることもあり、発想が成果になるまでの瞬発力の高さが窺えます。

商業施設内で行われたあるスポーツイベントのアイデアも、こうしたビジブルな会議を経て実現しました。これは、一人の担当者さんが「子どもたちに”運動あそび”というものへの関心を持ってもらうにはどうしたらいいのか」という葛藤を抱えながら、その熱い思いをチーム内に伝えていくことでスタートした企画です。担当者さんから伝わる情熱は周りの人を巻き込むエネルギーとなり、準備段階から本番中の運営まで、あらゆる動きがとてもスムーズに進められました。

この頃、同ブランド内での別サービスの立ち上げ時期が重なっていたことも影響し、根幹にあるブランドとしての熱量やブランドとして目指していきたい未来のビジョンをみんなで共有することができ、次第に部署間にも連帯感が芽生えてきたそうです。
結果的にこのイベントはMIZUNO KIDSがこれまで企画したイベントの中で最多の動員数を記録し大成功を収めましたが、それだけにとどまりません。このイベント後、同じように熱い思いを持った社員が次々に声を上げ、そのほかの新しいプロジェクトも進められていくことになったのです。
社内のセクションごとの垣根を越えて、関係者全員が当事者意識を持って、ブランド全体の力を押し上げていくことへと繋がっていきました。

「ブランドが多重人格だと、生活者はブランドが何をしたいのかピンときません。ですが、全員が同じ思考で発信していくことによって、一貫性のあるブランド作りにつながっていくはずです。みんなが本音を言いやすくするフラットな環境こそが、絆の強いチームを生み出します」

このように、ビジブルに必要なポイントは、瞬時に意見がしやすくなるためのドローイング、インスピレーションを促す巻き込み力、そして先ほどと同様に、自分が一番ワクワクしていることの3つであると言えます。

メソッド3:VISIONING(ビジョニング) -未来への妄想づくり

最後のメソッドであるビジョニングとはつまり「みんなで妄想していく」ということ。「ダイキン工業」の事例を挙げてみていきましょう。

ダイキン工業 滋賀製作所はダイキン工業の中で最も大きいマザー工場です。50周年の節目を迎えるにあたり、周年記念誌を作りたいという依頼から始まりました。製作所内のモチベーションアップと、未来へのリクルートの強化を目的とし、これからを担う若手社員が「この工場でよかった」と思ってもらえるような、製作所のさらなる成長へと繋がるプロジェクトにする必要がありました。
このプロジェクトでポイントとなるのは、コアメンバー20人に対し、1000人以上の従業員がいるということ。ディスカッションの場に参加できなかったメンバーともプロセスを共有し、コアメンバーだけでなく製作所で働く全員で、未来を思い描く(=ビジョニング)ことへ意識を向けながら、丁寧に制作が進められていきました。

ディスカッションを重ねた結果、生み出されたのは「空そう家(くうそうか)」というコンセプト。これは、「自分達がこれからも新しい空気を生み出し、新しい価値を作っていくのだ」という強い決意が込められています。このコンセプトは単に記録誌制作のためだけでなく、製作所内全体としてのプライドを再認識するキーワードとして共有され、シンボルマークは様々な記念グッズや従業員のネームプレートにも展開されました。

その後、コロナが流行し、製作所は部品の到達に関して大きな課題を抱えることになります。しかし、「我々はいかに工夫するかを考えるプロであり、流通を止めない方法を考える」と奮起し、強固となったチームワークによりなんとか苦境を乗り切ったのだとか。またその後も、先方社内でも周年プロジェクトメンバーが発足され、さらなる価値を広めることを目的とした積極的な取り組みが進められています。

「ある従業員の方から、『自分達はこういうチームだった、と再確認することができました。辞めようと思っていたけど辞めなくてよかったです、ありがとう』という手紙をいただきました。それを読んだとき、改めて、ブランドが掲げる強い思いというのは一人ひとりのハートにもつながっていくのだなと感じました」

以上、3つのそれぞれの事例に共通して言えることは、ブランディングを通して関わった一人ひとりに「熱量」が生まれたということです。熱量をもつことによって温度感が生まれ、ブランドを育てたいという親心が芽生え、育てる過程も自ずと気になってくるようになります。この一連の流れが当事者意識を持つ意義であり、本当のブランディングといえるのです。

最後に、山下氏は次のように語り、本講演を締めくくりました。
「最終的に動かすのは人と人。資金、人材、ノウハウではなく、熱量さえあればブランドは育つといっても過言ではありません。そのためにまずご自身が熱量を抱いてください。たとえあなたがリーダーでなくても、その灯火が少しでもあれば、そこから思考を広げるチャンスは必ずあります。今日の話が、あなたの熱量を見出すヒントとなれば幸いです」


Q&A

講演の最後には、視聴者から寄せられた質問にお答えいただきました。

Q&Aでは同じくYRK andの越野さんが質問をピックアップし、山下さんに回答いただきました

Q1:自分たちのブランド「らしさ」を自分たちだけで見つけることは難しいですか?

― 今回お伝えした事例の中には、すでに担当者さんの中で強い想いを持っていたという企業様ももちろんいらっしゃいましたが、ご自身が抱えるふつふつとした情熱をうまく伝えられていないというケースは少なくありません。
我々は、そのように内に秘めた想いを引き出し、その言葉を翻訳するような場づくりを行なっていくという立場かと思います。第三者というフラットな立場だからこそ、生活者目線を提示したり、社内の皆さんが元々持っている言葉を吸い上げたりといった、さまざまなヒントを提示できるのではないかと考えています。

Q2:当社は非常に保守的であり、忖度文化が強く根付いています。そのため新しいことをやろうとしても杭を打たれてしまうことが多いのですが、熱量を持って仕事をするためのアドバイスは何かありますか?

― 最初にお話したように、ブランディングは「経営戦略の一丁一番地」です。まず社内全員が共感を持つような場づくりを行い、そして経営者層も含めて会社全体で、思いを形にしていく行為そのものが企業成長に繋がるのだという認識を持ってもらう必要があると思います。そうしたマインドセットの時こそ、フラットな視点で環境を提示できる第三者の目が必要かもしれませんね。
熱量をもつメリットが自分の中に感じられるかどうか、その手応えを持てると徐々に参加意欲を高めてくれるもの。共感を得られると徐々に周囲も変化していくと思います。

Q3:ブランディングの納期、コスト、規模について教えてください。

― 今回お話しした例でいうと、春華堂は1~2年くらいをかけて一緒に作り上げていったケースになります。もちろん数ヶ月という短スパンで爪痕を残していくことを求められる場合もあり、条件はケースバイケースです。グラフィックファシリテーションのように「一緒に思いを作り上げていく」というスタイルのワークも手法は様々で、頻度も1〜2ヶ月で3〜4回行ったりそれより少なかったりと、全てクライアントによって異なります。ホワイトペーパーの時点で、お品書きのようにプランメニューを提示し、方向性を定めてから取り掛かっていくケースが多いです。

徹底した生活者目線と、クライアント一人ひとりの思いを引き出すブランディング構築。山下氏からは、プロジェクトを「自分ゴト化」して取り組む熱い姿勢を学ばせていただきました。

Font College Open Campus はこれからも不定期に開催し、noteでレポートを掲載していきます。今後の掲載もどうぞお楽しみに!



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