見出し画像

Occupant Fontsのすゝめ 〜欧文書体ラインナップをご紹介〜

2024年度から、Morisawa Fontsに欧文書体ライブラリの Occupant Fontsオキュパント フォンツ が仲間入りします!
今回は、Occupant Fontsのライブラリから一部をご紹介します。


Occupant Fontsについて

Occupant Fonts は、タイプデザイナーとして四半世紀にわたるキャリアを持ち、2017 年からはモリサワ USA のクリエイティブディレクターとして活躍するサイラス・ハイスミスさんがリードする書体ライブラリです。

サイラス・ハイスミスさん

多くの書体はエディトリアルデザインでの使用を想定して開発されており、本文用の書体も充実しています。2024年度はその中から、これらの書体をMorisawa Fontsで提供開始します!

シンプルながら遊び心を感じさせる書体から、目を引く華やかな書体まで、
非常にバラエティ豊かなラインナップ
となっています。豊富な幅展開のシリーズも用意しており、利用シーンに応じた柔軟な使い分けが可能です。

新書体特設サイトでは、特別ムービーも公開しているのでぜひご覧ください!


ラインナップから注目書体をご紹介

ここからは、注目書体をいくつかピックアップしてご紹介!

Magmaticマグマティック

Magmatic」シリーズは、見出し利用に適した骨太で重厚感のあるサンセリフ体です。昭和時代の日本におけるサンセリフのローマ字レタリングや看板、ポスター、マッチ箱に見られるタイポグラフィにインスパイアされてデザインされました。
スクエアなフォルムと極端に閉じた開口部に手書きのニュアンスを感じる字形を採用しており、パワフルな中にも素朴な温かみを感じさせます。

幅の広いWide / Extendedから、幅の狭いCondensed / Compressedまで字幅の展開が豊富なため、使用シーンに合わせて適した字幅をお選びいただけます。 

豊富な字幅展開

また、コーポレート・ベンチャー・キャピタル「JAPAN AIRLINES VENTURES」のロゴタイプにも採用されています!コーポレートサイトのフォント選定では、「Magmatic」に近い印象で相性の良い「Scout」を提供しました。
デザインといい使用事例といい、なんだか日本との関わりの多い書体でもありますね!


Dispatch 2ディスパッチ ツー

Dispatch 2」シリーズは、機械的で無骨なスラブセリフ体です。鋭角なカーブが生むスクエアな字形と、ブラケットのないシンプルなセリフからなる均質なプロポーションが特徴 で、幾何学的で力強い雰囲気を演出します。

こちらも、幅の広い Wide / Extended から、幅の狭い Condensed / Compressed まで字幅の展開が豊富な書体なので、使用シーンに合わせて適した字幅をお選びいただけます。


Daleys Gothicデイリーズ ゴシック

Daleys Gothic」は、黒い⻑方形をタイトに並べたような、サンセリフ体風のディスプレイ書体です。幾何学的な字形が、見出し利用で近未来的な雰囲気を演出します。

⻑体のプロポーションと極端に短いアセンダー・ディセンダー、狭いカウンターとスペーシングが特徴で、組んだ際にラインが綺麗に揃います。画像のような、ロゴチックなインパクトを与えたい時にもぴったりの書体です!


Gasketガスケット

Gasket」シリーズは、絵本の挿絵に添えるためにデザインされたサンセリフ体です。ストロークの先端の丸みや⼿書きのニュアンスを感じさせるゆるやかなカーブ、正体でもかすかに斜体のかかった字形が特徴で、親しみやすくリズミカルな印象を演出します。

⼤⽂字と同じサイズでデザインされた⼩⽂字のみを搭載したUnicaseユニケース、古⾵な筆記体⾵のデザインを取り⼊れたUncialアンシャルも⽤意しています。


Eggwhiteエッグホワイト

Eggwhite」は、平筆を⽤いてリバースコントラスト(太く描かれる部分と細く描かれる部分の関係性が逆転するデザイン)で書いたようなディスプレイ書体です。

低重⼼な⾻格と柔らかなストローク、短いアセンダーとディセンダーがカジュアルで活発な印象を与えます。短⽂でリズミカルな印象を与えたい際に活躍します!


Quioscoキオスコ

Quiosco」シリーズは、1900 年代前半の本⽂⽤書体に着想を得たセリフ体です。

ややタイトなプロポーションの中に、平筆のストロークをデフォルメしたようなエレメントやカウンターの形状を取り⼊れているのが特徴で、情報量の多い⽂字組の中にもエネルギッシュさを感じさせます。

字幅やスペーシングはタイトながらエックスハイトが⾼くカウンターが広いデザインのため、少ないスペースに⼩級数で組んだ際も可読性をキープします。⾒出し⽤として、よりエレガントな印象のDisplayも⽤意しています。


Biscottiビスコッティ

Biscotti」は、イングリッシュラウンドハンドと呼ばれるカリグラフィーのスタイルを現代⾵にアレンジしたスクリプト体です。

⼤⽂字の伸びやかなスワッシュが印象的で、華やかで上品な雰囲気を演出します。⽂脈に応じて呼び出されるオルタネイトを複数備えており、流れるようなペンの運びを感じさせます。


サイラスさんから皆さんに

サイラスさんはモリサワ タイプデザインコンペティションの審査員を長年務めるほか、書体デザインを分かりやすく解説した著書「Inside Paragraph」が日本を含む世界各国で翻訳されるなど、精力的に取り組まれています。

そんなサイラスさんが書体制作で大切にしていることについて、メッセージをもらいましたのでぜひ最後までご覧ください!

タイプデザインコンペティション 2019審査会の様子
(写真中央がサイラスさん)

タイポグラフィの文字、すなわち書体の文字は、手書きの文字から進化してきました。ラテンアルファベットの起源や、長い年月をかけて人々が積み重ねてきた進化の歴史を無視することは、書体デザイナーにとって愚かなことです。読み書きを学ぶだけで、ラテンアルファベットの古くからの手書きの慣習や伝統に少しずつ染まっていくものです。最も実験的な書体でさえ、その核心にはこれら古代の黒いストロークが含まれていることが多いです。

しかし、タイポグラフィの文字は手書きの文字とは根本的に異なります。私たちは、ペンや筆で書かれる文字とは全く異なる道具や技術を使ってこれらを作ります。そして、タイポグラフィの文字が持つ独自の特徴を認識しないことも、書体デザイナーにとってまた愚かなことです。

書体デザイナーが文字を描くとき、ペンや筆で線を引く代わりに、輪郭を描きます。輪郭とは線ではなく、境界線です。その境界線の一方には黒があり、もう一方には白があります。この意味で、タイポグラフィの文字は黒と白のエリア、または形で構成されています。特に字形の間のスペースを考慮すると、白い形がより多くの面積を占めることがよくあります。

Inside Paragraph」より抜粋

Occupant Fontsでの私たちのタイプデザインへのアプローチは、これら二つの要素、すなわち黒いストロークと白い形のバランスによって形成されています。黒いストロークはタイポグラフィの文字の手書きのルーツを指し、白い形は書体の字形を形成する輪郭を描くときに実際にデザイナーが描くものです。この戦略が、Occupant Fontsの主な目標である、独自性がありながらも実用的な書体を描くことへの助けになると私たちは信じています。




2024年度は、Occupant Fontsの欧文ラインナップ以外にも豊富な多言語書体をリリース予定です。また、Occupant Fonts では、欧文書体と和文書体のよりユニークな組み合わせを模索する取り組みも行っています。そのお話はまたの機会に。

それでは、リリース日まであと少しお待ちくださいませ〜!

サイラスさんを取材した過去の記事も合わせてご覧ください。