選ばれるためのブランディング~ブランド価値を高める体験設計とデジタル活用~
2022年11月24日(木)〜28日(月)に東京ビッグサイトにて印刷業界最大の展示会『IGAS2022』が開催され、モリサワでは“MojiTube Studio”という特設配信スタジオを設置し、文字や印刷、ブランディングにまつわるさまざまなプログラムを実施しました。
今回のFont College Open Campus 4限目は、11月26日(土)にこの特設スタジオからお届けしました。
講師は、独自のサービスを展開しながらブランド支援を手掛ける株式会社フラクタより、取締役 狩野 雄(かりの たけし)氏とアートディレクターの間部 盛貴(まべ しげたか)氏が登壇。ブランドと顧客をつなぐ体験設計とデジタル活用について、事例を交えながらお話いただきました。
選ばれるためのブランディング~ブランド価値を高める体験設計とデジタル活用~
株式会社フラクタは、さまざまなブランドの立ち上げに携わっており、ブランドを組み立てる構想段階から、社会への発信に至るまで総合的な支援を強みとしています。新規ブランドの立ち上げ、既存ブランドのリブランディング、ECサイトの導入支援及びリニューアルなど、成長から大幅展開まで事業が抱える様々な悩みに寄り添ってきました。
前半パートでは、自身もプランナーとして多くの実績をもつ狩野氏より、ブランディングとは何を指す言葉なのか、そして現代においてどのようなことが求められているのかについて解説いただきました。
ブランディングの原点は「区別すること」 ―今、求められているものとは?
「そもそもブランディングって何なんでしょうね?」狩野氏は問いかけます。
企業の思想や目的を定義することなのか、デザインやコーポレートマークなどといったキークリエイティブを指すのか、販売促進のためのマーケティング戦略そのものなのか……視点によってブランディングの語られ方はさまざまで、その言葉には多くの意味が含まれています。ここで、ある二つの企業を例に挙げて考えてみましょう。一つ目は「りんごがトレードマークで、機能だけでなくUI/UXやデザイン性に優れたプロダクトを提供する企業」、二つ目は「三本ラインのシグネチャーが入っていて、スポーツだけでなくファッションとしてのシューズを提供する企業」です。この二つを聞いた時に、多くの人はそれらの企業のシンボルマークが頭の中に思い浮かぶのではないでしょうか。そしてその時、あの代表的なシンボルマークだけではなく、提供されるプロダクトの世界観や機能性などを総合的にイメージしているはずです。
一説によると、ブランドとは、「これは牧場Aの牛、これは牧場Bの牛」というように、放牧された牛がどこの牧場に属しているかを区別するために発生した概念だと言われています。狩野氏はその起源に着目。牛を食べるという食文化の中で、「Aという牧場の牛の味はまあまあだが、Bという牧場の牛は一味違う」というように、「区別するためのブランド」から「品質を証明し、顧客にとっての認知印象を差別化すること」へと発展していったのではないかと考えられています。つまり、ブランディングには、企業として持ってもらいたい「〇〇らしさ」という印象の定義と、そのための振る舞いが必要となってくることがわかります。しかしこれは、あくまで一般論として語られている“広義のブランディング”。現代において、ブランディングにはどのような意義があるのでしょうか。
現代において、ブランディングとは
「“経営・企業活動の積み重ねである”と考えています。その事業の品質を印象づけるという行為だけではなく、企業としてのあらゆる活動が、自分達が何者であるかを定義することにつながるのではないかと思っています。PR戦略や企業戦略だけでなく、企業がとる一挙手一投足すべてが、ある種のブランディングといえるのではないでしょうか」
まず、自分達はなぜその事業をするのかという大義名分。そして、この事業にとっての顧客の定義、購入までの体験や購入後の仕掛けづくりなどといった顧客との関わり方。さらに顧客だけでなく、さまざまな人や環境との関係の策定や、企業としてどのように社会と繋がるかを模索すること。このように、多岐にわたる活動全てがそのブランド“らしさ”の伝達へとつながっています。
では、企業がブランディングを行うメリットとは何なのでしょうか。狩野氏は「ブランドとしてその製品の品質が認知されていると、選択される可能性が上がる」といいます。現代は、似たような機能や価格が並び、選択肢が多い時代。消費者にとっては、同じ条件が揃った中で一つを選択するためにブランドの印象は大きな後押しとなります。また、BtoCの認知印象の良さはそのままBtoBの交渉印象にも繋がります。ブランディングは、必ずしも利益に直結するとは言い難い側面もありますが、さまざまな企業活動においてのブーストのような役割も担っており、長期的な利益を生み出す力となり得ると言えるでしょう。
ここで牛の話に戻り、ブランディングの流れを整理してみましょう。
まずはその牛の飼育環境や、育成方法の独自性が、牛肉の製品としての情緒的価値を生み出します。次に、その牛肉が提供されるレストランに相応しいかどうか、これは品質的な価値を醸成します。そこから、レストランに訪れた人にとってよりよい場づくりが成されていると、そこで牛肉を味わうという体験そのものが記憶的な価値に。またここでは同時に、適正な価格として認知してもらえることも重要で、割高に感じさせないということが正しいブランディングの証明になります。最後に、提供されたものが想像を上回っているという実感や、この体験に対してお金を払いたくなる気持ちにさせることが、価格のプレミアムに繋がります。このように、製品開発から発信まで、地続きの世界観を顧客が実感できているということがブランディングだと言えます。まさにブランディングとは利益の源泉たる存在なのです。
「ブランドUX」を高めると顧客の記憶に残る
次に、顧客がブランドを感じるための“体験”に着目してみましょう。
ブランドを認知してもらうためには、ブランドが顧客とどう接点をもつか、どんなコミュニケーションをとるかが大切です。企業として持ってもらいたい「〇〇らしい」という印象を定義し、それを伝えるための振る舞いをすること。これが正しく機能すると、顧客はその企業を「〇〇で素敵なブランド!」と認知することができます。このように、顧客の記憶に残り、顧客がブランドの語り手になり得る体験をフラクタでは「ブランドUX」と呼んでいます。
印象や評価は、少しずつ積み上がって形成されていくもの。広告、キャンペーン、PR、購入体験などブランドが発信するさまざまなコミュニケーションを受け取ることによって、顧客はそのブランドのイメージを作り上げていきます。そしてそれは一貫していることが重要であり、コミュニケーションごとにバラバラな印象を与えてはいけません。
「お気に入りのお店を想像してみてください。そこが提供してくれる商品やサービス、実店舗の雰囲気、SNSやWebサイトのデザインは、そのブランド“らしい”雰囲気で統一されているのではないでしょうか。人気があるブランドの多くは、あらゆるコミュニケーションにおいて“素敵なものだ”と思わせる一貫性があります」
一貫性のある顧客体験について、「WARBY PARKER」というブランドを例に挙げてみてみましょう。このブランドは2010年に設立された、ニューヨーク発祥のアイウェアブランドです。設立当初は実店舗を持っておらず、オンラインストアのみで販売をスタートさせました。一般的にメガネは試着してみないと購入しづらいもの。そこで、WARBY PARKERでは、試着用のフレームを自宅に届けるサービスを開始しました。ユーザーが指定のハッシュタグをつけてSNSに着用画像アップすることで、スタッフからどんなフレームが似合っているかをアドバイスしてもらえるというオリジナルフローを考案。自宅にいながら専門スタッフの評価を受け、自分に合うメガネを選んで購入できる環境が整備されたのです。制限がある中でオンラインとオフライン双方での地続きな体験を成し得た、というブランドUXの好例です。
このように、近年のブランドはこうした体験づくりが選ばれる理由になる傾向があります。広告やPRを通して事前に期待値をもたらす「予習」のような仕掛けづくり、そして実際にその期待値をクリアする(あるいは上回る)ような「答え合わせ」とも言える体験を経ることで、そのブランドが間違いなく自分に合うのだ、と納得してもらえるようになります。すると顧客は、その体験を「思い出・お土産」として持ち帰り、そのブランドが自然に広まっていく流れが出来上がっていくのです。いわば「ブランドが自走していく」ということ。この一連の流れまでを視野に入れてきちんと狙いを定めたブランディングが、ブランドをより強固なものにしていきます。
ブランドの自走
ブランドが自走することは、フラクタとしても事業テーマとして掲げていることであり、ブランドの最終的な理想といえます。ですがそのブランド“らしさ”を構築し、実際に運用していくとなると企業が抱えるタスクが多いのも事実。ブランディング事業があれもこれもと煩雑になってしまうと、生活者にとっても情報取得が難しくなり、ストレスを与えかねません。
「注目したいのは取捨選択とコントロール。ブランドとしてどこに注力するかを明確化し、必ずしも全て自分達でやろうとしないでください。各領域に特化したパートナーがいるのであれば託す、デジタルの力を活用して自動化・効率化を図るなど、時間に余白を作りましょう。じっくり考えてアイデアを生み出したり、クリエイティブを生み出すといった、人と人が力を合わせるようなことに十分な時間を割けるようにしていくことが大切です」
また、ブランディングと聞くと、数年に一度の大幅なリニューアルや大改訂をイメージする方もいるかもしれませんが、大切なのはむしろ日々の積み重ね。イベントごとではなく、もっと日常的に捉えられるように日々マイナーアップデートの意識を持って進めていきましょう。数年に一度のスパンで捉えてしまうと、顧客の悩みや細かな声を拾いきれずに、結果的に顧客にフィットしたものは生まれません。素早くメッセージを発信し、顧客の悩みを細かくチューニングしていく作業が必要となっていきます。
「ブランディングはリアクティブに。事業を始める時、ぜひ社内でしっかり話し合ってみてください。フラクタでは、ブランディングに使えるさまざまなフレームを無償で提供しています。自分達のブランドとは何なのか明確にするために、ぜひご活用ください」
ブランディングにおけるブランドサイトの役割とは
後半パートは間部氏にバトンタッチ。ブランドごとに抱えるそれぞれの課題をどのように解決していくのか、サイト構築に際しての考え方を具体的にお話しいただきました。
間部氏は、ブランドサイトを「プロダクトをきっかけにブランドを認知し、興味を持った人が〇〇とは何者かを確かめにくる場所」と定義づけます。
「カスタマージャーニー(ユーザーの行動を時系列にマッピングしたもの)でみたときに、ブランドサイトは「興味」を担う役割として機能しています。どんなブランドなのか、そのブランドが自分の好みと合うのか、といったブランド理解や共感を得る手がかりとなり、その後の「比較検討」「購入」といったプロセスに繋がるかどうかに大きく作用します」
ブランドサイトのタイプは大きく分けて3つあります。
一つ目は「ECサイトのみ」のタイプ。これは購入に特化したパターンで、SNSなどからの流入が主軸となります。商品の入れ替えなど改修改善がベースとなっており、トレンドに素早く対応できるというメリットがありますが、一方、購入が最優先となり、どうしてもデザインもテンプレート感の強いものが多く、競合と差別化しづらいところがあります。そのため、サイト単体ではファン形成しづらく、ブランドの思想やコンセプトを発信しづらいというデメリットがあります。
二つ目は「ブランドサイトと自社ECを併用する」タイプ。ブランドサイトと購入経路を分けて、自社ECや他社プラットフォーム(Amazonや楽天など)を併用するのが一般的です。ブランドイメージを強く訴求したい場合や、デザインにこだわりつつも運用までやる余力がないという状況でも成立しやすく、またブランドがクローズしたとしてもサイトのみ切り離せばいいというメリットがあります。一方で、他社を利用した購入経路の場合は、各モールへの手数料などの負担が発生したり、配送周りの体験に関しては、発送時のパッケージが定められてしまうように各プラットフォームに依存してしまうことがデメリットと言えます。
三つ目は「ブランドサイトで購入ができる」タイプです。ストーリーテリングの手法を用いて、ブランドの成り立ちや思いを伝え、そこからファン形成から購入までの流れを促すことができます。ブランドの思想やコンセプトを最も伝えやすく、一貫したブランド体験の提供が可能になることに加え、発送から在庫管理といったカスタマーサポートも自社で運用することができます。こうしたサイトは商品が多くなってくるとデザイントーンの統一感が損なわれてしまう場合があるため、どちらかといえば小〜中規模のブランドに適していると言えます。
近年は「Shopify」のようなEコマースプラットフォームが台頭している傾向にあります。かつてのテンプレート感の強いブランドサイトと異なり、自由度の高いデザインや豊富な機能実装により、自社のブランドの世界観を伝えやすく、運用もしやすいサイトを構築することが可能になりました。Shopifyはカナダ発ですが2019年頃から日本でも普及し始め、D2Cブームやコロナ禍によるEC環境構築需要ともマッチしています。
また、「SP(スマートフォン)特化型サイト」は近年の主流とも言えるトレンドの一つ。ブランドのターゲット年代によってはPCとモバイルのアクセス率が2:8〜1:9になることもあり、ブランドサイトをSPビューに振り切ったデザインにする企業も増えてきました。
ただし、SP世代がターゲットだからといって、安易にSPビューに振り切るのは避けたいところ。商談やプレゼンテーションなどといったビジネスシーンでの閲覧も視野に入れる必要があり、バイヤーやリサーチャー、決済者の多くはPCで閲覧することが想定されます。また、ブランドストーリーの訴求効果としてはまだまだPCの方が効果が大きく、サイト構築前にアナリティクスを十分に分析する必要があります。
このように、ブランドサイトは、運営方法やターゲット、トレンドなどを総合的に考慮した上で、構築内容を慎重に検討する必要があります。
制作事例から見る、課題解決に繋がる2つの軸
ブランドコンセプトやサイトの方向性が固まってくると、次にデザインとしての言語に変換していく作業に取り掛かっていきます。ここで考え方の軸となるのは「デザインキーワード」と「ポジショニング」。「デザインキーワード」とは、定めたブランドコンセプトや与えたい印象などから出てきた3つから5つ程度のキーワードのこと。それぞれのキーワードに対して、現状(Before)と目標(After)で比率を決め、その後のアウトプットの判断基準を作ります。
次に「ポジショニング」ですが、例えば「ユニーク/伝統的」「新しさ/スタンダート」などといった比較事象の4象限を定め、現在地からどこにいくべきかを視覚的に検討することを指します。この時、競合他社の位置なども客観的に判断することで、どのポジションであれば差異化できるかを可視化することができます。
こうした二つの軸を用いながら現状把握と目標設定を行うと、ブランドとしてぶれないサイト構築が可能となります。それではこれまでにフラクタが手がけてきたブランドサイトの制作事例を見ていきましょう。
事例1「蝶矢」
蝶矢は、チョーヤ梅酒の社内ベンチャーとして2018年に体験型ショップとしてスタートした事業です。鎌倉と京都に実店舗を構えており、2021年4月にはCHOYA shopsとして分社化しています。依頼当初はコロナ禍でオンライン化をスタートしたばかりで、満足度の向上、世界観を伝えるブランドデザイン、そして運営の簡略化が課題として挙げられていました。そこで、運営に最適化されたUXの実現、店舗と一貫した世界観を伝えるデザインでブランディング強化を図ることを目的にプロジェクトをスタートさせることになりました。
まず初めに取り掛かったのはブランドUXの確認です。チームみんなで店舗に出向き、実際に梅酒や梅シロップを作ってみたり、オンラインでの取り寄せなども体験しながらリサーチを深め、キーワードを絞っていきました。そして最終的に「Traditional-伝統的・和風」「Sophisticated-洗練」「Innovative-革新的」3つのデザインキーワードが挙がりました。鎌倉や京都といった歴史を感じさせるロケーションやそこから感じさせる日本の伝統的な側面と、社内ベンチャーという業態や梅の可能性を提示するというビジョンから提示される新しさを掛け合わせています。そしてポジショニングは、伝統よりはどちらかというと革新を、そして普遍的なものよりはスタイリッシュさをより強めていくことで方針が決まりました。出来上がったサイトはこちらです。
サイト全体のデザインとして、梅文化の可能性を感じさせる写真やビジュアル、和モダンを踏襲する縦書きのタイポグラフィを採用。スクロールするごとに製品の情報やショップ案内がわかりやすくカテゴライズされており、SNSへのリンクも掲載しています。また、サイトメニューやオンラインショップへのリンクはサイドに固定し、どこからでも予約フォームにつながるようになっています。SPファーストも意識されており、ミニマルなレイアウトが徹底されています。
また、運用面ではShopifyのさまざまな機能を活用しています。好みの梅を100通り以上の組み合わせから診断できる「梅診断」というオリジナルコンテンツや、「Klaviyo」というツールを使った顧客に応じたメールマーケティング、ギフトニーズの高さに応えるために配送日時指定専用のアプリを使うなど、運用管理の自動化や効率化を実現しました。
そのほかにも、ブランドサイト構築に伴い、店舗のメニューやパッケージデザインのトンマナも統一。一貫したブランド体験が行えるように、随所に工夫を盛り込んで課題解決に臨みました。その結果、運用開始から一年でオンラインショップ満足度は星5つの評価を獲得。
ブランドの世界観を強く伝えつつ、生活者のニーズにもマッチするブランディング結果を生み出しました。
事例2「米島酒造」
続いては、沖縄県久米島にある泡盛酒造所の事例です。米島酒造は70年以上に渡り久米島で泡盛を作り続け、その品質の高さからこれまでも多くの賞を受賞してきました。大量生産を行わない昔ながらの製法で、沖縄本島にすら出回らないことがほとんどでしたが、コロナ禍による環境の変化によりオンラインショップを立ち上げることに。既存プラットフォームのテンプレートではブランドの世界観が伝えきれないということ、製造の合間でのサイト運営における効率化という二点が課題でした。そこで、ブランドサイトを「ブランディング」「売り上げ貢献」の二点を兼ね揃えたプラットフォームへアップデートすることを目的とし、プロジェクトに取り掛かりました。
まずはリサーチ。こちらも実際に購入と試飲を経て、オンラインでの購入体験を通じて感じたことを言語化していきました。さらにマーケティングのフレームワークである「3C分析[1]」を用いながら、米島酒造ならではの強みをあぶり出していきました。
その結果、デザインキーワードは「Natural-久米島固有の自然」「Speciality-品質へのこだわり、丁寧な製法」「Emotional Romantic-ロマン・エモーショナル」の3つを設定。上質で飲みやすい酒質、こだわりの製法と豊かな自然環境がもたらすオリジナリティ、そして4代続く家族経営という点から、質実だけれども温かみを感じさせるようなキーワードに分解していきました。ポジショニングとしては、無機質よりは情緒的に、そして親しみやすさよりはスタイリッシュさを優先することとして、サイト構築を進めていきました。そして出来上がったサイトはこちら。
サイトを開くとまず目に飛び込んでくるのは久米島のシルエット。久米島の風景を掛け合わせたタイポグラフィも印象的です。スクロールしていくと中央の島のシルエットが広がり、満点の星空や青い海など美しい島の風景がシームレスに背景となり、その上にブランドコンセプトが出現します。マウスポインターは黄色い円に変更されていますが、これは酒造所の近くで実際に見られる「久米島ホタル」をイメージしたもの。久米島全体の魅力とお酒を飲んだ時の心地よさがサイト全体から伝わるデザインとなっています。コンテンツとしては、泡盛に合うオリジナルレシピを掲載するなど泡盛を使ったライフシーンが連想されるような仕掛けも。また運営面では、これまで手書きで行っていたボトルの名入れサービスを自動化し、「子どもが生まれたお祝いに名前入りの泡盛を贈る」という久米島ならではの文化的ニーズにも対応しています。
フォントの選定も、ブランドイメージを体現するのに重要なエレメントの一つ。和文には情緒的かつ可読性もある書体をベースに、欧文の見出しなどにはサーフブランドのアイテムなどによく使われるデザイン書体を採用させ(残念ながらいずれもモリサワのフォントではありません)、和の雰囲気とも親和性を持たせつつ海を想起させるような独特のテイストに。サイト内のテーマカラーは、エイサーの衣装や泡盛を保存する甕を覆う布に用いられるという紫を主軸としました。
このサイトは公開後、売り上げ、アクセス数ともに約7倍増を記録。ブランドサイトによってブランドがもつ価値をより強固なものにしたと言えるでしょう。
まとめ:ブランドUXを高めるブランドサイトとは
改めてブランドUXを高めるブランドサイトとは何が必要かを振り返っていきましょう。まずは、ブランドのアイデンティティを見極め言語に変換した上でデザインに落とし込むこと。2つめは書体・色・ビジュアルなどの視覚要素にキーワードを反映させ、ブランドの世界観に一貫性を持たせること。そしてテクノロジーで解決できる課題はアプリ等を活用して機能を充実させていくこと。この3つを心がけることで、ファン形成や認知拡大に大きく効果のあるブランドサイトを作り上げることができると言えます。
ブランディングとは何かという根底からの気づきと、認知向上へつながる地続きの活動。フラクタのお二人には、ブランド発信における根本的な捉え方をお話いただきました。顧客と事業の地道で一貫したコミュニケーションとそれを支えるデザインの力が、ブランドをより成長させていくのですね。
Font College Open Campus はこれからも不定期に開催し、noteでレポートを掲載していきます。今後の掲載も、どうぞお楽しみに!
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