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A-OTF?Pr6? メニュー名からわかる! フォントの仕様と選び方

このたび、モリサワのnoteで「制作まわりのお役立ち情報」というマガジンを開始しました!
印刷・DTP・Web・UDなどを題材に、制作に関するさまざまな「お役立ち情報」を発信していきます。

かつてはモリサワサイト内で「Morisawa DTP Lab.」という情報発信ブログを別途運営していました。今回からはこのnoteに場所を変えつつ、引き続き不定期で更新していく予定です。

さて、マガジンの記念すべき第1回目である本記事は「フォントメニューの表示名」に着目し、フォントの仕様や選び方について解説していきます。


フォントってたくさん種類があって嬉しい反⾯、「何を使えばいいの……︕︖」と悩むことってありますよね。たくさんある中から、⽤途や内容にあわせて適切なフォントを選ぶ必要があります。

しかも、使いたいフォントを見つけていざ選択!となった時に、「同じようなフォントがたくさん並んでいる!?」と戸惑った経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

リュウミンを使いたいだけなのに……

普段は「ゴシックMB101」や「リュウミン」など、フォントのデザインごとについている書体名をなんとなく認識している方が多いかと思います。
しかし、書体名以外の部分に着目するとどうでしょうか。

各部分の意味は、パッと見ではわからないですよね。

書体名の前後についている「A P-OTF」や「Pr6」などの英数字は、実はとても大事な「フォントの仕様」を伝えています。
フォントメニュー名の見方を知っていると、より用途にあったフォント選択の一助になるかもしれません。

今回は、モリサワが提供しているOpenTypeフォントにおける「フォントメニュー名」を読み解いていきましょう!


先頭のアルファベット

フォントメニュー名の先頭につくアルファベットは、メーカーの区別やフォントのファイル形式を表しています。
頭に「A-OTF」「A P-OTF」がついていたら、「モリサワのフォントなんだな~」と思ってください!

以下、特に注意が必要な2つをご紹介します。

A P-OTF

ペアカーニング情報と最新のIVSを搭載しているOpenTypeフォントを示します。
2015年以降、モリサワから提供するすべてのOpenTypeフォントがこの「A P-OTF」仕様になっており、「AP版」とも呼ばれています。
ちなみに、ペアカーニングとは特定の文字の組み合わせで詰めの設定がされるフォントの機能のことです。

InDesignやIllustratorでは、文字パネルのカーニング設定で「メトリクス」を選ぶと、ペアカーニングが有効になります。

これまでにリリースされた「A-OTF」のフォントについてもAP版が続々登場していますが、利用する際に気をつけるべき点があります。
それは「AP版とA-OTF版は互換性がない」ことです。

前述の通り、AP版はペアカーニング情報を追加しているほか、字形の追加や一部デザインの変更を行っています。
たとえば「UD新ゴ Pr6N」のAP版では、従属欧文部分のデザインが変更になっているうえ、元号「令和」の合字が追加されています。
 
よって「A-OTF版のフォントをAP版に置き換える」場合、文字組みや体裁が変わってしまうことがあります

あくまでも「A-OTF」と「A P-OTF」は異なる別のフォントとして注意しつつ、置き換えが必要な場合は体裁を確認しましょう。

G-OTF

「G-OTF」は、常用漢字・かなが文部科学省の「学習指導要領」で定められた形になっているフォントについています。

「はね」「押さえ」「とめ」などが共通のデザインになっていて、教科書や学習参考書などに適しています
普段書く文字とできるだけ同じ形になるように、そして視覚的に筆画がわかりやすいデザインにすることで、文字を学ぶ教育現場に適した設計になっています。

ただし注意点として、常用漢字・かな以外は通常のフォントと同じ形をしています

学参用途以外で使用すると、文章の中で漢字の形にばらつきが出てしまう可能性があります。
学参向けの制作をしない場合は、そもそも「G-OTFのフォントをインストールしない」ことがおすすめです。

書体名

ここはご存じのとおり、フォントにはデザインごとに名前がついています。

ちなみに……
書体名やウエイトの後などに「NT」「KL」「KS」「KO」などと付いている場合があります。
これは「かな」の種類を示しています。

・KL……大がな(Kana・Large)
 かなが大きめの設計になっている
KS……小がな(Kana・Small)
 かなが小さめの設計になっている
KO……オールドがな(Kana・Old)
 活字書体のデザインを生かし、縦長のプロポーショナルの文字が多い
NT
 ネオツデイをベースにしたかなを使用

モリサワ公式サイト内「書体見聞 第四回 リュウミンのかな」でも、「かな」についてご紹介していますのでこちらも要チェックです。

文字セット(グリフセット)

続きまして、書体名の後ろについている謎の文字列。
これは「フォントがどの規格(文字セット/グリフセット)に沿って作られているか」を示します。文字セットでは、フォントの中に何文字入れるか、どの文字までを入れるか、などが定められています。

Adobe-Japan1

日本語OpenTypeフォントでは「Adobe-Japan1」という文字セットが多く使われており、枝番が大きくなるほど収録文字数が増えていきます。

フォントメニュー名に反映されているのは、各規格の略称です。
フォントベンダーによって多少略称の定義が異なります。たとえば、ヒラギノ書体はAdobe-Japan1-5基準のフォントに「Pro/ProN」と付いています。

Nフォント(N付きフォント)

「StdN」「Pr6N」のように、文字セットの後ろに「N」が付いているものがあります。
このNが付いているかどうかで、「文字入力で最初に表示される漢字の形」が一部違います。

同じ意味でも形のバリエーションを持っている漢字がたくさんありますが、その中で基本となる字形がJIS規格で定められています。

JIS規格の改訂により、基本となる字形が変更された影響で
・最初に出る字が「JIS90字形」→Nなし
最初に出る字が「JIS2004字形」→Nあり
と区別できるようになっています。

特に漢字の形が重要な用途(人名や地名を扱う内容など)では、選択に注意が必要です。

もっと詳しく知りたい方は「JIS2004」や「JIS90」、「JIS X 0208」などで検索してみてくださいね!

モリサワ独自の文字セット

Adobe-Japan1とは別に、各メーカー独自で定めた文字セットも存在します。

モリサワの独自規格もいくつかありますが、最近和文書体ではミニ2セット(Min2)でのリリースがあります。
収録文字数は4,833文字で、JIS第一水準漢字や常用漢字などの他、使用頻度の高い文字を追加で選定・収録しています。

フォントを選ぶときの注意点

フォントに入っていない文字は「〓」などに文字化けしています。

フォントが準拠している文字セットによって、収録されている文字の範囲が異なります。特に難しい漢字や記号類が必要な時は、利用したい文字がフォントに含まれているかを事前に確認しましょう。

書籍の本文など、さまざまな漢字が必要になる文章には「なるべく収録文字数が多い文字セットのフォントを使う」ことをオススメします!

準拠している文字セットによって、収録している「辺」のバリエーションが異なります。

モリサワでは他にも、ミニ2セットと下位互換性のある「ミニセット(Min)」欧文の文字セット「Pro」「PE」なども定めています。

ウエイト、デザインバリエーション

文字セットの後ろには、主に太さ(ウエイト)を含めたデザインのバリエーションを示す文字が付いていることもあります。
IllustratorやInDesignなどのAdobe製品では、フォント名とは別の項目で表示されています。

表記の仕方が決まっているわけではなく、どう表記されるかはフォントごとに異なります。

他にも、縦画・横画の太さをそれぞれ数値で表し、名前に反映しているフォントも存在します。

まとめ

書体名の前後にも、たくさんの情報が入っていましたね。
みなさんの、制作物にあった適切なフォントを選ぶ一助になれば幸いです。

Adobe製品の場合文字パネルで「A P-OTF」や「Pr6」と入力するとフォントを絞りこむことができます。

Illustratorの文字パネルに「Pr6」と入力した画面例

文字パネルでは任意のフォントをお気に入りとして登録しておくこともできるので、フォントを探すときの手間を少しでも削減していきましょう!


第1回目のお役立ち情報はいかがでしたでしょうか?
今後も不定期に更新していく予定ですので、ぜひマガジンのフォローをお願いします!

それではまた次回!