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文字組版の連載、スタートします!

このたびモリサワのnote3周年を機に、文字組版に関する記事をアップしていくことになりました。
この連載を担当するのは、モリサワの中で文字や組版、印刷、制作などに関して、普段からお客様のお困りごとの解決を行っている技術サポートのエキスパートです!

以下のような内容の連載を予定していますので、ぜひご期待ください。

  • 文字サイズに関する単位の種類

  • 禁則文字にはどんなものがあるの?

  • 文字間の調整と詰め組

  • 日本語の中のアルファベットの扱い方

  • ルビの種類と組み方 など

モリサワは「写真植字」を発明して以来、一貫して「文字の未来」をみつめて研究・開発を続けてきました。
モリサワと聞いて「フォント」のメーカーだとイメージする方は多いと思います。「フォント」ひいては「文字」は、なにかしらのことばや情報を表すために用いる材料のひとつでしかなく、相手に伝えるためには「文字」を並べて組む「組版」が必須です。


文字は「組む」もの?「流す」もの?

活版印刷の時代

デザインや制作に関わる方であれば、文字を並べていくことを「文字を組む」「組版する」と表現するのを聞いたことがあるのではないでしょうか?
これは活版印刷の工程に由来していると言われています。

文字を組むためには、まず原稿に合わせて「活字棚」から活字を拾う必要がありました。この作業を文選ぶんせんと呼びます。

活字棚に並べられた活字たち。
書体や文字サイズごとに活字が必要だったため、保管のためには広いスペースを要しました。
鉛の活字は重く、床が抜けないように補強工事が行われることもありました。

拾い集められた活字は「文選箱」に収められ、そこから原稿通りに並べていく植字しょくじが行われます。
そうして並べられた活字は、結束糸で縛られ「組み版」となります。

このように、文字を並べて版を組むことを「組版」と呼び、活字からフォントに変わった現在でも同じ言葉が使われています。

写真植字(写植)の時代

その後、「写真植字(写植)」という印刷技術が登場します。
原稿通りに文字を並べる「植字」を写真技術で行う方法で、活字のように広いスペースを必要としない写植は非常に画期的な技術でした。
モリサワの創業者である森澤信夫は、共同開発者の石井茂吉氏とともに、「邦文写真植字機」を世界で初めて発明しました。

万能型手動写真植字機「MC-6型」(1967年)

「写植」の機械はほとんど残っていませんが、その言葉だけは今でも現場で使用されることがあります。
特に漫画の原稿に文字を入れる作業を「写植」と呼ぶことが多いようです。

フォントとアプリケーションの時代

現在はパソコンとアプリケーションがあれば、誰でも文字を組むことができます。

活版印刷の時代のように、一つひとつ文字を手作業で並べていく必要はありません。アプリケーションで文字を入れるためのフレームを作成し、そこに原稿をコピー・ペーストすれば、文字を並べてくれます。
そのため、過去の職人が培ってきた組版の知識は意識されることが少なくなってきました。

しかし、アプリケーションにコピー・ペーストする、いわゆる「流す」だけでは思ったように文字が並んでくれないこともあります。また、どのように並べるのが最適なのか迷うこともあるでしょう。

読みやすく相手に伝わりやすいように文字を並べるためにも、ぜひ文字を「組む」こと、「組版」を意識してみてください。

「正しい組版」や「間違った組版」って存在するの?

さっそくですが、①の組版の例を見て、どのように感じますか?

おそらく、多くの人が違和感を覚えると思います。いわゆる「組版ルール」を知っている・知らないに関わらず、NGとされる例です。

この例では行の先頭に句点がきています。
句点や読点などは行頭禁則文字と呼ばれ、「禁則処理」によって行の先頭には配置されないように処理します。学校で作文を書く際にも習うため、一般的にもよく知られているルールです。

それでは②はどうでしょう?

②は一見すると問題ありませんが、Aの箇所とBの箇所とで文字の並べ方が異なっています。

段落先頭で一字下げる際のルールが統一されていません。

このように、組版には「守らなければいけないルール」と、媒体などの中で「統一したほうが良いルール」とが存在します。
また、「守らなければいけないルール」も、下記の③の場合のようにデザインを重視する(この場合は勢いを重視する、でしょうか)こともあります。

文字を組む際には、その文字が表す内容や、媒体(メディア)、見られる場所、見る人など、さまざまな状況や対象を考慮する必要があります。
今回の連載では、「日本語における書籍などの本文組み」を例にご紹介していきます。

基準となる組版ルール

組版には基準となるルールがあることをご存知でしょうか?
日本語の場合、「JIS X 4051」および、その実質的な後継ともいえる日本語組版処理の要件(日本語版)/JLReqがそれに当たります。
これらには、日本語組版に関する要件がまとめられています。

文字が多くて読むのが大変そうだな…という場合、以下の3冊がおすすめです。

モリサワ・日本エディタースクール編
文字組版入門 第2版・文字の組方ルールブック(タテ組編・ヨコ組編)

ちなみに英文組版の場合、
アメリカの「シカゴルールThe Chicago Manual of Style)」
イギリスの「オックスフォードルールNew Oxford Style Manual)」
があります。

英文組版をする場合は、手元にスタイルガイドの書籍を揃えておくと参考になります。
ただ内容は全て英語で書かれている上、とても分厚いため、すべて読むのは現実的ではありません。
モリサワのnoteでは多言語組版の記事がすでに公開されていますので、ぜひそちらもご覧ください!

※ 欧文編 全6回、簡体字編 全3回、繁体字編 全2回

前述のとおり、これらの組版ルールはすべての場合に適用されるとは限りません。時と場合によって柔軟にカスタマイズすることが必要です。
読んでいる相手に違和感を覚えさせず、書かれた内容をスムーズに伝えるためにも、ぜひ一緒に組版の基礎を学んでいきましょう! 

次回の更新お楽しみに!


モリサワでは文字組版の基礎を学びたい方向けに、年2回(春・秋)オンライン講座「文字組版の教室」を開講しています。
詳しい内容や開催日程については上記リンクよりご確認ください。