マガジンのカバー画像

フォント沼なハナシ

20
フォントの特徴から開発秘話までご紹介する記事をまとめています
運営しているクリエイター

記事一覧

〈モリサワnote文字旅〉ウイリアム・モリスに逢いに行く。理想の書物と理想の書体

秋めいてきた10月某日、モリサワnote編集部一行は、とある特別な「文字」の存在を追いかけて旅に出ました。 辿り着いたのは、群馬県高崎市の緑豊かな森に位置する群馬県立近代美術館。 実は私たちモリサワは、19世紀イギリスで活躍したデザイナー、ウイリアム・モリス(1834-1896)が「ケルムスコット・プレス」と呼ばれる印刷工房で製作した書物の全完本コレクションを所蔵しています。そしてその一部が今、この群馬県立近代美術館の企画展で公開されているのです。 その名も「理想の書物」

写研書体の開発プロジェクト “至誠通天” 受け継がれる石井書体

邦⽂写真植字機の発明100周年の節⽬となる2024年に、写研書体がOpenTypeフォントとしてリリースされます。 2021年1月のプロジェクト発表を受けて、古くから写研、モリサワの書体に触れてきた方々から多くの反響をいただきました。 そして2022年11月24日、写研書体3ファミリーを改刻し、リリースすることを発表しました。 発表の舞台となったのは、2022年11月に行われた展示会「IGAS2022 国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展(以下IGAS2022)」。

フォントを魅せるための “書体見本” をつくる話  「月下香」に似合うワードを考える

モリサワの “書体見本” はご覧になったことはありますか? 書体はそれぞれ「こんなところで使ってもらえる書体にしたい」といった開発側の意図を込めて作られています。それをユーザーのみなさまにできるだけわかりやすくお伝えするのが “書体見本” です。デザインの特徴を伝えるだけでなく、使ってみたいと思っていただくためにどんな言葉と合わせるか、新書体が出る度に担当者が毎年熟考しているのです……。 今回のフォント沼記事では、2023年にリリースされた新書体の中で、一際目を惹く「月下

「ボルクロイド」ってなにが由来…?いろんな書体の名前の決め方お話しします!

フォントメーカーである私たちモリサワは、毎年新書体をリリースしています。新しい書体を世に送り出すときに重要な要素の1つが、書体名です。 今回は新書体の「ボルクロイド」をはじめとして、書体名をどうやって決めているのか、なかなか知られることのない裏側についてお届けします! 新書体「ボルクロイド」 書体名のワケ2023年秋にリリースされたボルクロイドについて、皆さんもうご存知でしょうか? ボルクロイドは直線のみで構成された、インパクトの強い超極太デザイン書体です。 迫力のある大

台湾の風薫るデザイン書体「美風」

突然ですが、次の文章を見て何か気づくことはありませんか? どちらも日本語で書かれていますが、上のフォントには繁体字書体、下のフォントには和文書体が使われています。 中国語の文章を見たときに一見知っている漢字でも書き方が違うように感じたことがあるかもしれませんが、このように比べてみると「風」「色彩」など、和文書体と同じ形の文字があるのがわかりますよね。 今回は、そんな和文とも共通点のある繁体字から制作された和文書体「美風」を紹介します。 美風の紹介デザインの特徴 美風はそ

人気書体「A1明朝」の新ウエイト開発に迫る

みなさまにようやくお伝えできる日が来ました! モリサワのフォントライブラリで一二を争うほどの人気書体「A1明朝」が、この度3ウエイト構成の “A1明朝ファミリー” として新たにリリースされます! 「A1明朝」といえば、某有名アニメーション映画のタイトルに使われている “あの書体” として認識されている方は多いのではないでしょうか。長年のファンも多く、そのノスタルジックなたたずまいからデジタルフォントとして今もたくさんご愛用いただいている書体です。 今回はそんなA1明朝を

明朝体 “らしさ” と楷書を再解釈したら、新しいデザインが生まれた話〜「霞青藍」「霞白藤」制作秘話〜

ぱっと何の書体か見分けるのが難しい「明朝体」。しかし一度魅力を知れば、そこは底無しのフォント沼……!今回は、2022年10月にリリースした明朝体 「霞青藍」「霞白藤」のデザインが生まれるまで、を掘り下げます。 デザインの特徴「霞青藍」「霞白藤」の属する “明朝体” は和文書体のデザインカテゴリの1つで、“うろこ” と呼ばれるアクセントや縦画が太く横画が細いというコントラストが特徴のデザインです。 現在の明朝体は、明治の初めに日本にもたらされた金属活字を基礎に改良が続けられて

つくりたい表現・書体の特徴から選べる、ユーザー目線の新しい書体見本帳を作ったハナシ

今回はMorisawa Fonts搭載の全書体が収録された、『モリサワ総合書体見本帳2022-2023』をご紹介します。従来の見本帳とは全く異なるコンセプトで作成された見本帳について、制作裏話を交えてお届け。とにかく使い手目線にこだわっているので、今回の記事をきっかけにこの見本帳をより身近に感じていただけたら嬉しいです。 モリサワ総合書体見本帳一挙紹介!今回の見本帳のコンセプトはズバリ「ユーザー目線」。見本ページは「つくりたい表現で探す」「特徴で探す」「全書体見本」の3部構

デザイン書体「タイポス」誕生。写植時代からUD化まで、今もなお斬新に映る書体の60年間

今回のフォント沼なハナシは、「タイポス」という書体について深掘りします。 ふところが広く図形的に整理された骨格と、縦画と横画のコントラストが特徴的なこのスタイルは今ではさまざまなところで目にするデザインですが、はじまりは60年ほど前、学生たちによって考えられた書体でした。 この「タイポス」という名前がつくファミリーは4種類あり、時代とともに形を変え愛されつづけるロングセラー書体となっています。 独自の設計思想とコンセプトで日本の書体デザインに大きな影響を与えてきたタイポスが、

【note開設2周年特別企画】欧文フォントは簡単につくれるの? 7時間でフォントを作ってみてわかったこと。

2020年8⽉から数々のフォントにまつわる記事を投稿してきたモリサワnote編集部は、おかげさまで開設2周年を迎えました! 今回は特別記念企画として、欧文フォント制作の舞台裏やこだわりをワークショップレポートとインタビューの両面から、わかりやすくご紹介したいと思います。モリサワが大切にしている「使う人の目線で、書体をつくる。」というものづくりの姿勢は、和文フォントだけでなく欧文フォント開発にも受け継がれています。ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。 1. 7時間耐久

モリサワフォントでリアクションします! 書体で変わる「ありがとう」の声色

この度モリサワnote編集部、リアクション画像をリニューアルしました! みなさんからの「スキ」や「フォロー」に、モリサワオリジナルのリアクションを画像付きでお返ししていること、知ってましたか? 書体は使い分けることによって様々な印象や雰囲気を作り出せることから、文字の “声色” と喩えられることがあります。そこで、私達のメッセージをいろんな「声色」で受け取ってもらうために、「スキ」「フォロー」「マガジン追加」「シェア」に対して、バリエーション豊富な「モリサワフォント」でリア

デザイナーとエンジニアの綿密な連携で実現。流れるように文字がつながる筆書体「澄月」【2021年新書体】

食欲の秋、芸術の秋、読書の秋…新書体の秋! というのも、モリサワでは例年秋頃に新書体をリリースすることが多く、今年も10月21日にリリースとなりました。ユーザーさんの反応が気になって仕方ない今日この頃です。 今回は、2021年度の新書体の中から「澄月」についてご紹介します。開発メンバーへのインタビューでは、担当デザイナーに加えて、フォントの制作には欠かせない存在であるエンジニアも登場しますので、最後までぜひご覧ください。 1. 繊細かつスピード感のある行書風のデザイン書体

シンプルで温かみのある表情のヒューマニストサンセリフ「Sharoa Pro」【2021年新書体】

今回は、2021年10月21日にリリースが迫る新書体から欧文書体「Sharoa Pro」をピックアップします。 欧文はどれも同じに見える、どの書体を選んだらいいのかわからない…という方も多いかもしれませんが、欧文書体の基礎知識をはさみつつご紹介していきますのでご安心を…! これまで欧文の設計をじっくり見る機会がなかったという方も、きっと見え方が変わるはずです(フォント沼のもう一層深い部分の存在に気づきます)。 デザイナーインタビューでは、Sharoa Pro開発秘話や欧文

自然な文字の形を追求した「あおとゴシック」【2021年新書体】

今回の「フォント沼なハナシ」は、リリース目前の2021年新書体から一足お先に「あおとゴシック」のご紹介と開発秘話をお届けします。 リリースまでに少しでも新書体を身近に感じていただけたらうれしいです。 1.オンスクリーン向けの本文書体 あおとゴシックはスマートフォンやタブレットといったデジタルデバイス上での本文利用を目的に制作された書体です。 長文も自然に読める素直でクリーンな印象のゴシック体を目指して開発されました。 ウエイトは、ELからEBの7ウエイト展開です。 E