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フォント沼なハナシ

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フォントの特徴から開発秘話までご紹介する記事をまとめています
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#フォント沼なハナシ

フォントを魅せるための “書体見本” をつくる話  「月下香」に似合うワードを考える

モリサワの “書体見本” はご覧になったことはありますか? 書体はそれぞれ「こんなところで使ってもらえる書体にしたい」といった開発側の意図を込めて作られています。それをユーザーのみなさまにできるだけわかりやすくお伝えするのが “書体見本” です。デザインの特徴を伝えるだけでなく、使ってみたいと思っていただくためにどんな言葉と合わせるか、新書体が出る度に担当者が毎年熟考しているのです……。 今回のフォント沼記事では、2023年にリリースされた新書体の中で、一際目を惹く「月下

「ボルクロイド」ってなにが由来…?いろんな書体の名前の決め方お話しします!

フォントメーカーである私たちモリサワは、毎年新書体をリリースしています。新しい書体を世に送り出すときに重要な要素の1つが、書体名です。 今回は新書体の「ボルクロイド」をはじめとして、書体名をどうやって決めているのか、なかなか知られることのない裏側についてお届けします! 新書体「ボルクロイド」 書体名のワケ2023年秋にリリースされたボルクロイドについて、皆さんもうご存知でしょうか? ボルクロイドは直線のみで構成された、インパクトの強い超極太デザイン書体です。 迫力のある大

台湾の風薫るデザイン書体「美風」

突然ですが、次の文章を見て何か気づくことはありませんか? どちらも日本語で書かれていますが、上のフォントには繁体字書体、下のフォントには和文書体が使われています。 中国語の文章を見たときに一見知っている漢字でも書き方が違うように感じたことがあるかもしれませんが、このように比べてみると「風」「色彩」など、和文書体と同じ形の文字があるのがわかりますよね。 今回は、そんな和文とも共通点のある繁体字から制作された和文書体「美風」を紹介します。 美風の紹介デザインの特徴 美風はそ

人気書体「A1明朝」の新ウエイト開発に迫る

みなさまにようやくお伝えできる日が来ました! モリサワのフォントライブラリで一二を争うほどの人気書体「A1明朝」が、この度3ウエイト構成の “A1明朝ファミリー” として新たにリリースされます! 「A1明朝」といえば、某有名アニメーション映画のタイトルに使われている “あの書体” として認識されている方は多いのではないでしょうか。長年のファンも多く、そのノスタルジックなたたずまいからデジタルフォントとして今もたくさんご愛用いただいている書体です。 今回はそんなA1明朝を

シンプルで温かみのある表情のヒューマニストサンセリフ「Sharoa Pro」【2021年新書体】

今回は、2021年10月21日にリリースが迫る新書体から欧文書体「Sharoa Pro」をピックアップします。 欧文はどれも同じに見える、どの書体を選んだらいいのかわからない…という方も多いかもしれませんが、欧文書体の基礎知識をはさみつつご紹介していきますのでご安心を…! これまで欧文の設計をじっくり見る機会がなかったという方も、きっと見え方が変わるはずです(フォント沼のもう一層深い部分の存在に気づきます)。 デザイナーインタビューでは、Sharoa Pro開発秘話や欧文

自然な文字の形を追求した「あおとゴシック」【2021年新書体】

今回の「フォント沼なハナシ」は、リリース目前の2021年新書体から一足お先に「あおとゴシック」のご紹介と開発秘話をお届けします。 リリースまでに少しでも新書体を身近に感じていただけたらうれしいです。 1.オンスクリーン向けの本文書体 あおとゴシックはスマートフォンやタブレットといったデジタルデバイス上での本文利用を目的に制作された書体です。 長文も自然に読める素直でクリーンな印象のゴシック体を目指して開発されました。 ウエイトは、ELからEBの7ウエイト展開です。 E

社会現象になった “丸文字” をルーツに持つ書体「ららぽっぷ」

モリサワフォントの魅力や開発秘話に迫る「フォント沼なハナシ」シリーズ。
今回の主役はかな書体「ららぽっぷ」。1970〜1980年代に若い女性を中心に流行した書き文字、 “丸文字” を元にした書体です。時代背景からデザイナーインタビューまで、ごゆっくりお楽しみください! 1. 遊び心に溢れたデザインららぽっぷはこんなデザインの書体です。 ららぽっぷは「新丸ゴ」の漢字と組むことを想定して作られた丸ゴシック系かな書体で、新丸ゴに合わせてL・R・M・DB・B・H・Uの7ウエイト展

温もり感じるゴシック体「A1ゴシック」

モリサワフォントの魅力や開発秘話に迫る「フォント沼なハナシ」シリーズ。 今回は、2017年にリリースされ、パッケージやポスターなど多くのシーンで利用されている「A1ゴシック」についてのお話です。 1. 「にじみ」が味のオールドスタイルゴシックまずは、「A1ゴシック」の特徴を見ていきましょう。 「A1ゴシック」ファミリーは、L・R・M・Bの4ウエイト展開で、本文から大見出しまで組むことができます。 この書体はゴシック体に分類されます。スタンダードな書体ではありますが、ややデ

似ているけどよく見ると...? 洗練された長体な書体「エコー」と「オーブ」

今回ご紹介するのは「エコー」と「オーブ」という似て異なる特徴を持つデザイン書体です。後半で書体の特徴を活かしたおすすめの使い方も解説しますので、最後までお付き合いください! 1. フォントの特徴を言葉にしてみるまずは「エコー」と「オーブ」の組見本をご覧ください。 品があって素敵な書体ですよね。ただこの2書体、どことなく似ているような...でも少し違うよな...そんな風に感じませんか? 一見、わずかに思えるデザインの工夫であっても、50音や漢字全体に、その工夫を反映させる

筆のまにまに。言葉によって形が変わるフォント「みちくさ」

今回は「みちくさ」という書体についてご紹介したいと思います。 「みちくさ」は、フォントに内包されている “ある機能” を活用することで、言葉や文章に合わせて自動的に形が変化するユニークな書体です。 1. 「みちくさ」とはまずはデザインのお話から。 「みちくさ」は2017年にリリースした明朝体風のデザイン書体です。 高い重心に、ふところを絞った骨格と、やわらかく現代的なエレメントが特徴的です。 ふところ、重心 「ふところ」は、縦画と横画が構成している内側の空間のことを指し

2つの表情を持つ書体「解ミン」「小琴」 〜かなが生み出すニュアンスの魔法〜

今回は「解ミン 宙・解ミン 月」と「小琴 京かな・小琴 遊かな」という、同じ漢字やアルファベットを持ちながら、ひらがなとカタカナだけが違う書体について、デザインの特徴から制作秘話まで紹介します。 1. 書体の分類とかな書体を分類するには色々な方法があります。 例えば、赤のアリスの記事で紹介したような、 “デザイン” によってジャンル分けすることもあれば、フォントの情報(例えば “文字セット” など)で分けることもあります。 そんな書体の分類方法のひとつに、和文書体(総合書

レトロ可愛い「赤のアリス」が生まれ変わった話。

今回は2020年に2月にリリースされた新書体「赤のアリス」という書体について紹介していきます。 1.書体の分類、いくつ知っていますか?書体は、骨格とエレメントをはじめとする様々な要素で構成されていますが、エレメントの特徴からおおまかに書体の分類を判別することができます。モリサワでは、これらの書体の特徴に合わせて、大きくわけて次の5つに分類しています。 骨格:文字の画線の「芯」にあたるもの。文字のバランスはこれで決まる。 エレメント:一書体に共通した各部のデザイン。骨格に対